歴史と実用化に向けた研究
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「人工光合成」の記事における「歴史と実用化に向けた研究」の解説
太陽電池の研究は19世紀から始まり、1839年にフランスの物理学者アレクサンドル・エドモン・ベクレルが光起電力効果を発見。1884年にはアメリカの科学者チャールズ・フリッツが世界初の太陽電池を製作した。一方、光合成の研究は1910年頃から行われ、1956年にルドルフ・マーカスにより電子移動反応理論が発表された。1972年には東京大学の本多健一と藤嶋昭により、酸化チタン電極を用いて、紫外線を照射することにより水を水素と酸素に分解する本多-藤嶋効果が発表された。1974年から2000年にかけては、日本の新エネルギー研究プロジェクトであるサンシャイン計画、ニューサンシャイン計画が実行された。2011年には、根岸英一らと文部科学省とが人工光合成などの技術革新の具体化を進めることで合意した。 人工光合成に関連する研究の主体と内容を以下に記す。 2011年4月、大阪市立大学の神谷信夫らの研究チームは植物での光合成の基となるタンパク質複合体の構造を解明。同じ構造を持つ触媒により、2020年までに二酸化炭素と水からメタノール燃料の製造を行う構想を打ち出している。 2011年9月は豊田中央研究所が世界で初めて、水と二酸化炭素と太陽光のみを用いた人工光合成に成功した。特殊な光触媒を用いることで、犠牲薬を添加することなく擬似太陽光での有機物の生成を可能にした。変換効率0.04%。 2012年7月30日、パナソニックは窒化物半導体を利用した人工光合成システムを発表した。光電極側に窒化物半導体を使い、もう一方の金属触媒電極からギ酸を得るものであり、触媒の種類を変えることにより有機物の種類を選択できる。2014年9月現在、エネルギー変換効率は0.3%と植物を越えており、今後の研究により実用化の目処である1.0%を達成できる可能性がある。 2014年11月20日、東芝が変換効率1.5%という世界最高の変換効率を達成する材料を開発した。 2015年7月20日、大阪市立大などの研究チームが、「人工光合成」の技術を使い、酢酸から自動車の燃料になるエタノールを作り出すことに成功したと発表。 2016年12月5日、昭和シェル石油は燃料電池に使われるガス拡散電極を応用して、常温常圧下で水と二酸化炭素から太陽光のエネルギーだけでメタンとエチレンを合成することに成功したと発表した。同社は常温常圧下で太陽光エネルギーのみで炭化水素などの有用な物質を生成できたのは世界初としている。 2018年8月27日、産業技術総合開発機構(NEDO)、人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)、東京大学の共同チームが植物のエネルギー変換効率0.3%の約10倍となる太陽光エネルギー変換効率3.7%の非単結晶光触媒を開発したと発表。同研究結果は、2018年7月31日に欧州科学誌「Energy & Environmental Science」のオンライン速報版で公開された。 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2014-2021年度計画で技術開発を進めている。光触媒で水を分解して得た水素を、工場や火力発電所から排出される二酸化炭素と合成触媒で反応させてオレフィンを生成し、プラスチック等の原料とする。 2019年1月25日、産業技術総合開発機構(NEDO)、人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)、東京大学の共同チームが窒化タンタル(Ta3N5)光触媒を用いて太陽光エネルギー変換効率5.5%を達成したと発表。 2020年5月29日 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が世界初の100%に近い量子収率で水を分解する光触媒を開発。 2021年4月21日、トヨタグループの研究所、豊田中央研究所が36cm角のセルで実現し、太陽光変換効率7.2%を達成したと発表した。 2021年12月8日、豊田中央研究所は、人工光合成でエネルギー変換効率10.5%を達成したと発表した。
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