歴史と対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/03 01:25 UTC 版)
プラスチック製の磁気ストライプカードを活用して、様々なサービスが提供され始めた1960年代後半より、この種の犯罪の発生の可能性が指摘されてきた。当初は、大規模な施設がないと複製が困難である事から、これら犯罪は大規模な組織による物とされ、個人や数人の犯行グループの手では行えない物と言われた。 しかし1980年代に入ると、急速に電子技術が発達し、末端の機械マニア程度でも、容易に複製カードを製作できる状況になった。特に当初の磁気カードには、暗証番号も平文で書き込まれていたため、カード情報を読み取って解析する事で、銀行口座から預金が盗まれる被害が続発した。一説には、使い捨てカイロに入っていた鉄粉を、磁気ストライプ部分に振りかけて描かれる文様を肉眼で見て、暗証番号を読み出す事も可能だったと言われる。 しかし、こうしたカード窃盗被害が増えてくると、カード供給側も対抗対策として、暗証番号を磁気カードから取り除いたカードの切り替え(ゼロ暗証番号化)、暗証番号をその都度サーバ側に照会する「ゼロ暗証番号方式」に改めた。またカードが盗難に遭った際に、迅速に利用停止処置をとれる様にするため、届け出を365日24時間受け付ける専用電話窓口を設けるなどして対応し、磁気ストラップを排したICキャッシュカードを配布させ、カード窃盗は次第に減っていった。 技術的な進歩によって、スキマー等機器の小型・高性能化が進み、かつ、スキマーにデータを大量に保持する機能を搭載して、一挙に多数のカードの情報を不正入手する手段が確立する一方で、磁気カードへの書き込み装置に関しても、大量に闇で出回るようになり、近年のスキミング犯罪では、一度に多くの被害者を出すケースが増えている。特に大規模なスキミング窃盗団も度々捕まっており、世界的な問題にもなっている。 この対策として、金融機関によっては、1日の引き出し限度額を一律に引き下げたり、利用者各人が設定できるようにしたり、また偽造が比較的困難とされるICカードに切り替えるなどの対抗策をとる他、ATMでの本人確認手段として、比較的他人に知られてしまいやすい暗証番号に加えて、容易に詐称が出来無い静脈による生体認証を組み合わせて導入する所も出てきている。 また、ATMやキャッシュディスペンサー等の、直接的に金銭を扱う装置では、小型カメラなどの撮影装置をATMや、セーフティボックスのテンキーに設置し、機器利用者の写真や映像を常に撮影し続ける事で、カード窃盗やスキミングによる被害が報告された際には、問題のカード利用者の容姿を警察側に証拠提出できるようになっている。 これは、銀行外に設置されたこれら機器でも同様である。その一方で、キャッシュカードをデビットカードとして用いる小売店においては、POSレジスタにスキマーを仕掛けられる不安があり、また、監視カメラ等の保安設備が整って居らず、ここで不正使用された場合には、容疑者の特定が困難になる。 これらの対策として、クレジットカードを顧客の目の前にて使用している事を監視する、顧客の目に届かない場所へカードを持って行かせない、ATMのカード挿入部やテンキーに、不審な機器が取り付けられていないかを確認する、明細書をこまめに確認する等がある。 「カードの磁気情報の読み取りを遠隔で行いスキミング出来る」といった話があるが、現状の技術では、読み取り用の磁気ヘッドとカード上の磁性体は、密着している必要があり、遠隔での読み取りは不可能である。
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