使い捨てカイロ
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使い捨てカイロ
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1975年、アメリカ陸軍が使用していたフットウォーマーを元に、旭化成工業(現・旭化成)が鍼灸師ルート等を通じて全国で「アッタカサン」を販売。それを原型にして、日本純水素(現:日本パイオニクス)が1978年に開発、ロッテ電子工業(後のロッテ健康産業→現在はロッテ本体に吸収合併)が「ホカロン」の商品名で使い捨てカイロを全国発売し、これがヒット商品となって一般に普及した。それぞれの発明者は、「アッタカサン」が旭化成工業の山下巌と飛高幹生、「ホカロン」が日本純水素の田浦照親と戸室美智男とされている。なお、ロッテがホカロンを最初に開発したという情報がメディアには流れているが、ロッテはあくまで販売元であり、開発元は脱酸素剤の委託先だった日本純水素である。同社はカイロの外袋を開封することで発熱が開始するタイプとし、かつ量産化のための技術開発を行った。空気に触れさせず不織布に鉄粉を詰めて密封、量産化する過程こそ、脱酸素剤の外袋開発にヒントを得たものである。ロッテ側は、脱酸素剤を開発中に化学反応による薬剤の発熱がみられたことを応用して開発したものと喧伝しているものの、鉄粉が酸化される際の発熱自体は前述の「フットウォーマー」や「アッタカサン」でも既に利用されている技術である。後になって、ホカロンの日本国内市販に向けてロッテ電子工業によって発売開始。なお、日本純水素は三菱ガス化学のグループ企業であり、資本関係は一切持っていない。しかしながら、ロッテは当時から菓子用の脱酸素剤を製造委託していたため、日本パイオニクスも2010年までOEMとしてホカロンを受託製造していた。なお、桐灰化学は旭化成の1年後に1976年に携帯カイロ「ハンドウォーマー」を販売しているが、後に他社と同様に不織布を用いた「ニューハンドウォーマー」に切り替えた。 前述したように、今日見るような不織布に入った使い捨てカイロが登場したのは1978年にロッテ電子工業(現・ロッテ健康産業)から「ホカロン」が発売されて以降である。このタイプの使い捨てカイロは記録的寒波到来と相まって、急速に販売を伸ばしていった。後にカイロ灰専業のマイコールが1978年に参入、それを皮切りに桐灰化学、白元、大日本除虫菊、フマキラーなどの家庭日用品メーカーが追随した。1979年に白元が当時比較的高価だった使い捨てカイロをコストダウン化させ、1枚100円の「ホッカイロ」を発売し北日本を中心に大ヒット、使い捨てカイロの代名詞とまでなった。翌年の1980年には大日本除虫菊が従来品を改良した「金鳥どんと」を発売、1981年にはフマキラーがミスター・ホットでカイロ業界参入。また、1981年には業界に先駆け、マイコールが衣類のポケットに収まるミニサイズの使い捨てカイロを開発した。 シール付きの使い捨てカイロ、いわば貼るタイプのカイロが発売されたのは1988年であり、マイコールが業界に先駆けて販売し、成功を収めた。その貼るカイロに目を付けたのが、それまで市場進出に乗り遅れていた桐灰化学であり、翌年の1989年に「桐灰はる」を発売。東日本地盤だったマイコールに対し西日本での地盤固めに成功し、インパクトのあるCMと相まって貼るカイロの知名度を高め、1997年には群馬県にも製造工場を設けて東日本に本格進出、長年使い捨てカイロ業界の首位に立つ契機となった。現在ではミニサイズ、靴下用、肩用、座布団サイズな様々なバリエーションが発売されており、冬場商品の定番となっているだけでなく、市場も貼るタイプが主力となっている。 一方で、貼らないタイプの利用目的が主に手元を温めるためというマーケティング結果に目を付け、2017年には桐灰化学が「めっちゃ熱いカイロ桐灰マグマ」を販売、専ら外での作業、レジャー向けに作られた高温(最高温度73℃)カイロであり、大きく注目を浴びた。その後はエステーが「オンパックス極熱」、興和が「ホッカイロHEAT CHARGER」、オカモトが「快温くんプラス鬼熱」、ロッテが「快速ホカロン」、アイリスオーヤマが「ぽかぽか家族屋外専用」を販売するなどして市場に追随している。一方で、従来品より最高温度を下げる代わりに長時間持続する商品も開発されているなど多様化している。 使い捨てカイロは主に以下のブランドが発売しており、販売ルートの関係から、ロッテ以外のメーカーでは、殺虫剤・芳香剤などの家庭用衛生薬品メーカーに関与しているところが多い。また、秋から春に掛けては生活雑貨を取り扱う小売店やコンビニエンスストアのほとんどで販売されている。2020年の国内シェアによるとトップは小林製薬(桐灰カイロ)で、以下エステー(オンパックス)、興和(ホッカイロ)、アイリスオーヤマ、ロッテの順である。このタイプはハクキンカイロに代わって現在主流の方式となっており、また、海外輸出も盛んに行われている。一方で市場競争による価格破壊が著しく、2000年代後半にフマキラーがカイロ事業から撤退、白元が企業再生の一環でホッカイロを手放したりしているほか、廉価品を多売するアイリスオーヤマがそれまで業界4位だったロッテからシェアを奪ったりしている。また、使い捨てカイロ最大手だった桐灰化学も前述の競争激化や冬期の販売不振などが影響し、結果的に小林製薬へ吸収合併されている。また、業界2位だったマイコールもエステーに一度吸収された後、2018年に分社化される変遷を辿っている。 桐灰カイロ(小林製薬、元は桐灰化学で販売業務提携のち、2008年に子会社化。2018年に桐灰小林製薬と改組した後2020年に吸収合併) オンパックス・ダンダン(エステー、後者はウェルシアとの共同開発による廉価版。元はマイコールで販売業務提携ののち吸収合併、2018年にエステーマイコールとして子会社分社化) ホッカイロ・ホッカイロぬくぬく当番(白元→2014年より興和。製造:興和白元古河ファクトリー→興和古河ファクトリー) ぬくっ子→ぽかぽか家族・あったカイロ(アイリスオーヤマ→アイリスファインプロダクツ。前身は新日鉄子会社のニッテツファインプロダクツ) ホカロン(ロッテ健康産業、製造:日本パイオニクスにて2010年まで実施→ロッテ) 快温くん・温楽→あったかくん・ダンボー(オカモト。パッケージに除湿剤『水とりぞうさん』のキャラクターを採用) どんと(大日本除虫菊、井脇製缶のOEM) 冬っ子・はるっ子(タカビシ化学) ホットドリーム(井脇製缶。商社を通した海外輸出が多い。その他、金鳥どんとなど多数のOEMを手掛ける) その他、日本カイロ工業会によると三宝化学、紀陽除虫菊、児玉兄弟商会、立石春洋堂などの販売企業があり、かつてホッカイロを製造販売していた白元(現:白元アース)も、後述の電子レンジカイロの商材を持っているため当会に加盟している。なお、大手ではかつてフマキラーがミスター・ホットという使い捨てカイロを生産していたが事業撤退した後、当会を脱会している。 使い捨てカイロは、鉄粉の酸化作用を利用したカイロであり、不織布や紙の袋に空気中で酸化発熱する鉄粉を入れたものが一般的である。その他、通常触媒として鉄の酸化を速める食塩とそれを保持する高分子吸水剤、酸素を取り込むための活性炭、鉄の錆びを促進する水、水を保水するためのバーミキュライトが入れられている。安価で簡便なことなどから現在カイロの主流となっている。 この種のカイロの長所としては、「構造が簡単」「各種原料が安価」「火を用いず通常環境での最高温度が約80度以下で安全性が高い」「使用方法が簡易」などがあげられる。使用前は真空パックや無酸素包装などで酸素に触れない様に密封されており、使用時にはこれを開封する事で酸化が始まり発熱する。一方で、低温やけどに注意しなければいけない点があるため、就寝時、圧迫部や長時間同じ部位への使用、また前述の高温カイロにおいては、ほとんどの商品が屋内での使用を禁止している。 大きさや用途などにもよるが、貼らないタイプで約18 - 20時間、貼るタイプで約12 - 14時間くらいの持続時間をもつ商品が主流である。これら各商品に表示される数値はすべて同一の試験方法によって測定されたもので、JIS規格(JIS S 4100)に項目や測定方法などについての定めがある。 なお日本産業規格JIS S 4100において表記上は「使いすてかいろ」と平仮名であるが、「使い捨てカイロと(片仮名で)表記しても良い」とされる。また、日本カイロ工業会では「使い切りタイプのかいろ」という表記をしている。 使い捨てカイロの由来については、米軍の携帯保温器が原型ともされるが、基本特許が明治時代に成立していた古いものということもあり、はっきりしない。1906年より、宇那原美喜三の宇那原支店が「火も湯もいらぬ」「不思議のあんか」「一名徳用こたつ」と銘打った製品広告を新聞各紙に出した。広告では「火を用ひざれば火災の患ひなく夜中に消え又は蒲團の損じると更に無し」「熱度は御好み次第百五十度位迄は御随意なり」「一度入れば四ヶ月熱す」などと謳っていた。定価は並一円、中一円二十銭、上一円四十銭、特製一円七十銭、送料いずれも三十銭。『滑稽新聞』155号(1908年1月20日号)によれば、本製品を取り寄せたという記事がある。製法は「鐵粉に何かを混ぜそれに水分を加へて温氣を發せしめるもの」で、使い捨てカイロそのものだが、記者によれば「幾分の熱度は放散するがそれも直に冷却して再び用を作さない、しかも一種の悪臭を放つなど、衛生上にもよからぬもので、經濟上一圓五十錢ばかり損をした」という。 その原理が酸化による発熱反応の典型であることから、中学校の理科の実験で学生が製作することがある。また、保温状態のカイロを放置することによる発火への懸念が、消費者より度々寄せられるが、一定量の酸化発熱作用である限りは発火点に到達することはまずないため、カイロ使用による失火は起こり得ない。また、日本ではカイロ工業会の規格により、規定温度以上に到達する恐れのあるカイロは生産されていない。 使い捨てカイロのパッケージ 使い捨てカイロの本体 日本の市販使い捨てカイロ(貼らないタイプ) 靴下に貼って使うタイプの使い捨てカイロ
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