検察ファッショとは? わかりやすく解説

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国策捜査

(検察ファッショ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/23 13:51 UTC 版)

国策捜査(こくさくそうさ)とは、捜査方針を決める際に政治的意図や世論の動向にそって検察(おもに特捜検察)が適切な根拠を欠いたまま「まず訴追ありき」という方針で捜査を進めることをいう[1]。そうした検察のあり様を批判するための用語であり、特に無罪判決が下った事件についての検察の捜査を批判するために使われる[2]。捜査を進める場合だけでなく「捜査を控える」場合をも含めていうこともあるが、これらを区別して特に「逆国策捜査」ともいう[注釈 1]


注釈

  1. ^ 経済学者の池田信夫は、日歯連闇献金事件について、検察が自民党に配慮して捜査・立件を手控えた「逆国策捜査」だとしている。池田信夫 (2009年3月8日). “迂回献金と『逆国策捜査』”. 池田信夫blog. 2009年6月2日閲覧。
  2. ^ 1989年4月の衆院予算委員会新井将敬衆院議員は、高辻正己法相に対して「検察が民主的な行政的な手続きを経ないで、直接的に、例えばマスコミに働きかけたりして、自分たちの目的を有効に持っていこう、そういう状態を『検察ファッショ』というふうに理解していいのか」と質問している。これに対して、高辻法相は「特定の政治目的のために検察権が乱用されたときというのは、ご指摘のような場合がまさにそれにあたると思います」と答弁。さらに、そういう場合は、大臣が検察に対する指示、つまり、指揮権を発動することもあり得ると言っている。 『保坂展人 どこどこ日記 2009年05月31日
  3. ^ 検察庁法第14条にもとづき、個別の事件について法務大臣が検事総長を指揮することを指揮権発動と呼び、造船疑獄事件では実際に検察の捜査を中止させた。これとは逆に、法務大臣が捜査を督励することを俗に逆指揮権発動と呼び、こちらはロッキード事件で話題になった。以上は『現代用語の基礎知識 1977年版』自由国民社、1976年。逆指揮権発動を含めて指揮権発動と呼ぶことも多いため、本文では併記した。なお、(逆)指揮権発動による捜査督励は「国策捜査」となる場合があり、指揮権発動による捜査中止は「逆国策捜査」となる場合がある。
  4. ^ 本文のような誤解について鈴木宗男は「国策捜査というと、官邸から特別な指示が出て検察が動くと考えがちだが、実はそうではない」とはっきり否定し、検察が世論や政治の動きに過敏になっているのだと主張している。以上は鈴木宗男『闇権力の執行人』講談社、2006年。
  5. ^ 2009年3月11日、森英介法務大臣は衆議院法務委員会で自民党稲田朋美議員による「“国策捜査”という定義があいまいな言葉が検察を批判するための言葉として使われることに危惧を感じる」という趣旨の質問に対し、「“国策捜査”は法令上の用語ではなく、どのように解釈すべきかは判断できず、あいまいな表現である」という趣旨の答弁をおこなっている第171回国会 法務委員会 第2号”. 衆議院 (2009年3月11日). 2009年5月22日閲覧。
  6. ^ 雑誌『AERA』記者の大鹿靖明は、『ヒルズ黙示録・最終章』168ページにおいて、あらかじめストーリーを想定し、それに合致した証拠と供述を無理やりこじつける見込み捜査こそが特捜検察の捜査手法だと指摘している。後出の田中森一など他にも同様の指摘が多い。
  7. ^ 前出の鈴木宗男は、東京地検特捜部の人員の少なさなどを挙げ、事件の大きさにくらべて検察の捜査能力が低いと主張する。そのため、狙い撃ちの見込み捜査をせざるをえず、世論への迎合や世論の誘導もせざるをえないのだという。以上は、鈴木宗男、前掲書。および、青木理、後掲書。
  8. ^ 本文でいう無罪には一部無罪を含む。また、本文で列挙した第一審の無罪判決については、すべて上訴審で覆されている。前出の魚住はそれでも特に特捜事件について無罪判決が相次ぐなどという事態は前代未聞であるとする。以上は、魚住昭、前掲書、2001年。
  9. ^ 詳細は公訴権濫用論などを参照のこと。
  10. ^ 大鹿靖明は、検察が現代の「関東軍」になっており、「ネタもらいに汲々とするジャーナリズムはめったに批判しない。それどころか、戦時の従軍記者のように、過剰に戦果を書き立てる」と『ヒルズ黙示録・最終章』217ページで指摘している。

出典

  1. ^ 池上彰『池上彰の政治の学校』
  2. ^ 同上
  3. ^ 初出は『産経新聞』1996年5月30日朝刊。同記事には「捜査は、『住専処理をめぐる責任追及の必要から発した政府主導の“国策捜査”』という側面(検察幹部の話)をもたざるをえなかった」との記述がある。
  4. ^ 公務員なのに給与がない「公証人」とは何者か――西村尚芳(霞ヶ関公証役場公証人)【佐藤優の頂上対決】デイリー新潮2023年10月10日
  5. ^ 田原総一朗『正義の罠 リクルート事件と自民党 20年目の真実』小学館、2007年。田原はリクルート事件が国策捜査であったとして事件を「平成版の帝人事件」と呼んでいる。
  6. ^ 四国新聞』2007年1月26日。ライブドア事件の第一審最終弁論において、弁護人は事件を「第二の帝人事件」と呼んだ。
  7. ^ 「検察批判についての基礎知識 『国策捜査』とはどんな捜査か?」『日本の論点 2007年度版』文藝春秋、2006年。後出の佐藤優は、より限定して「時代を転換するために検察が象徴的な事件を作り出して捜査すること」だけを国策捜査と呼ぶが、一般には広く本文のような意味で使われている。
  8. ^ 刑事訴訟法第1条参照。
  9. ^ a b 「子供の政治が国を滅ぼす」 118頁。
  10. ^ 西部邁「権力批判の表現としての検察ファッショが行き着く先は訴訟社会である」『日本の論点 1999年度版』文藝春秋、1998年。西部は、「立法権力も行政権力も、権利批判それ自体に無上の楽しみを覚えるというような(マスメディアにおけるものを先頭とする)民衆の野卑な欲望に屈従しはじめる」として批判する。
  11. ^ a b c 魚住昭「『秋霜烈日』の精神いずこ 権力意識ばかりが肥大化した検察を糺す」『日本の論点 2007年度版』文藝春秋、2006年。魚住は、マスコミや世論の動向に左右される捜査姿勢をポピュリズムであるとして「今の特捜部のやり方は、狙い定めた標的を逮捕するために事件を作り上げているようなもの」と批判する。
  12. ^ 魚住昭『特捜検察の闇』文藝春秋、2001年。特捜検察の創設に中心的な役割を果たした馬場義続自民党政権の崩壊を恐れ、「現在の安定日本の体制をひっくり返すようにならないよう、大所高所から判断する」と漏らしたという。
  13. ^ 田中森一「検察とは『国策捜査』が大前提の司法機関。正義は検事の胸の内にしかない」『日本の論点 2008年度版』文藝春秋、2007年。
  14. ^ 共同通信』2009年3月3日。同記事において佐藤優は「彼らは青年将校のように、民主党に権力が移って政治が混乱するのは国益を害すると信じて一生懸命捜査したのだろう」との見解を主張している。もっとも、佐藤は前述のような独自の定義から本件を国策捜査ではないと主張している
  15. ^ 理解に苦しむこの時期の小沢氏秘書の逮捕 元検事・郷原信郎氏インタビュー」ビデオニュース、2009年3月6日。
  16. ^ 郷原信郎「経済事犯への検察の積極姿勢は必然 新たな捜査手法の確立が課題」『日本の論点 2007年度版』文藝春秋、2006年。
  17. ^ a b c 魚住昭「真実の探求より、特定の人物を生け贄にする 検察『国策捜査』の横暴」『日本の論点 2003年度版』文藝春秋、2002年。
  18. ^ 佐藤優、前掲書。同書では、「ワイドショーと週刊誌の論調で事件が作り上げ」られ「事後法でさばかれている」のではないかとする佐藤に対し、特捜検事の西村が「それが今の日本の現実だ」と答える場面が描かれている。
  19. ^ 北健一「『結論ありきの国策捜査』節度と公正が求められる」『エコノミスト別冊』第85巻第8号、毎日新聞社、2007年。評論家の宮崎学のコメントとして紹介されている。
  20. ^ 堀田力「検察権の行使が正しいかどうかは国民の納得が得られるかどうかである」『日本の論点 2008年度版』文藝春秋、2007年。
  21. ^ 佐藤優「ライブドア事件 ファシズムへの露払い」『世界』2006年4月号、岩波書店、2006年。
  22. ^ 嶋津格「検察官は“東山の金さん”でいいのか」『This is 読売』1998年6月号、読売新聞社、1998年。
  23. ^ 青木理『国策捜査 暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』金曜日、2008年。青木は、マスメディアが、特捜検察への批判をタブー視したり、その捜査情報を裏付けなしに報道したりしているために、過剰な厳罰化を求める世論が醸成されていると指摘する。
  24. ^ 産経新聞特集部『検察の疲労』角川書店、2000年。同書では元特捜検事の言葉を紹介し、有罪率の高さで検察の威信が守られると考えたり、逆に無罪判決を捜査能力の否定ととらえたりする検察運営は病理的現象であると指摘する。
  25. ^ 「巨悪VS.検察 『検察ファッショ』論の背景を知るための基礎知識」『日本の論点 1999年度版』文藝春秋、1998年。同記事では予測記事や批判記事を書くだけで出入禁止などの強硬な取材規制をする検察の異常な対応が指摘されている。
  26. ^ 「子供の政治が国を滅ぼす」 116頁。
  27. ^ Marc Raboy(2016), Marconi: The Man Who Networked the World, Oxford University Press. ISBN 019931358X
  28. ^ a b 「子供の政治が国を滅ぼす」 117頁。
  29. ^ NPJ通信. “特別寄稿「小沢事件」 の真実権力の暴走とメディアの加担による民主主義の破壊>検察ファシズム”. 2013年9月5日閲覧。





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