栽培過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 09:18 UTC 版)
「混合撹拌」「充填」「滅菌」「放冷」「種菌接種」「育成」「子実体発生」「収穫」の過程を経る。ほとんど全ての生産過程は規模の差はあっても機械化がされている。 「混合撹拌」では、オガクズを篩にかけて異物を取り除き、「基材原料」を所定の比率で混ぜる。地域や生産者により独自の配合があり季節によっても変更する。 「充填」では、混合した菌床材料を「瓶」「袋」「平箱」に詰める。床の形状は菌種や育成後の形により選択される。同じ菌床材を用いた場合でも、床の形状で発生までの期間と収穫量および発生回数が異なる。瓶の場合、接種孔を開ける。 主な容器形状と適用例は、 瓶(円柱で中心に穴) エノキ、マイタケ、ヒラタケ、エリンギ、ブナシメジ 袋(直方体、立方体) シイタケ、マイタケ 平箱(菌床を5〜10cm程度の厚みで広げる) ナメコ、ヒラタケ、マンネンタケ 「滅菌」では、充填後の菌床を「高圧」または「常圧」で中心温度 98℃を4時間以上維持し有害菌を滅菌する。2008年現在、コロナ放電を利用した非加熱滅菌も実用化に向けた研究がされている。 「放冷」では、滅菌により高温となっている菌床を、滅菌管理された専用の冷却室で適温(20℃程度)まで下げる。但し、過度の冷却は生育不良の原因になることもある。一方、冷却にかかる時間が長いと、有害菌の増殖を促進してしまう場合も有る。 「種菌接種」では、無菌室で培地表面または接種孔に対して行う方法が一般的であるが、種菌を培地に混ぜ込み塗りつける方法が取られる場合もある。 「育成」では、菌床に菌糸体が蔓延する環境を整える。菌糸体の成長に光は不要であるが、呼吸により発生する二酸化炭素の濃度が高くなると生育不良を起こすので換気を行う。時間の経過と共に菌床中の水分量が減少するため注水(散水)することもある。菌種により30〜120日程度を必要とする。 「子実体発生」では、子実体の発生条件に適合するように温湿度と光量を変え子実体の発生を促す。必要に応じて、「菌かき」「袋カット」「側転」「上下反転」「注水」「覆土」等の作業を行う。シイタケなどでは電気刺激により子実体の発生促進をする方法がある。 「収穫」。瓶栽培の場合は、一度に全ての子実体を収穫するが、袋や平箱を用いる場合、出荷に適した大きさになった物から順次収穫をする。収穫期間は子実体の発生開始から15〜100日程度。 「掻き出し」、収穫後の廃菌床を容器から掻き出し、容器を再使用する場合は洗浄と乾燥を行う。 エノキタケの瓶栽培の条件例 混合比は、木質基材 65〜75%。栄養源 25〜35%。補助栄養 1〜5%。水分率 60〜75%。pH 5.5 菌糸体、最適温度は 22〜26℃、相対湿度 90%程度 子実体、最適温度は 12〜18℃、相対湿度 85%程度 容器充填、所定の容器(ポリエチレン、ポリプロピレン)等に充填し、中心に1〜5個の穴を開ける。現在では、樹脂製の瓶が用いられるが過去にはガラス製も使用されていた。 蒸気により滅菌、98℃10時間程度。 培養(育成)、20〜30日静かに、菌掻きと、紙巻きを行う。 発生初期に50〜100lx程度の光。 収穫は、1回のみ。 シイタケの培地栽培の条件例 混合比は、木質基材 85〜90%。栄養源 10〜15%。補助栄養 1〜5%。水分率 58〜62% pH 3.5 菌糸体、最適温度は 10〜25℃、相対湿度 85%程度 子実体、最適温度は 10〜20℃、相対湿度 90%程度 (ポリエチレン)袋に充填、平箱に充填。 培養(育成)、90〜120日適宜「袋カット」「側転」「上下反転」「注水」を実施。 発生初期に100〜300lx程度の光。 収穫は、複数回。30〜120日間程度継続。
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