日本の国内事情に関する議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 01:07 UTC 版)
「地球温暖化に関する論争」の記事における「日本の国内事情に関する議論」の解説
本来、温暖化ガスの6%の削減のためには「エネルギー利用の効率化」と「1人当たり資源消費量の削減」を行う必要があるものの、日本はエネルギー利用の効率化を既に進めており(1人当たり資源消費量はアメリカの5分の1~4分の1、ドイツの約2分の1(World Resources Institute,The Weight of Nations 2000))、他方で1人当たり資源消費量は民生分野での自動車普及やエアコンの影響などにより増加傾向にあり、二酸化炭素排出量2010年見通しは1990年対比14%増とされている。したがって、日本が京都議定書を守るためには削減目標分6%分と合わせた20%相当分の削減のために排出権を購入する必要があり(なお、その対価は約2兆円とも言われる(2007年3月時点))、結果として日本は「効果の薄い京都議定書」と心中して「環境を金銭で買う」と非難されることになる懸念が高いこと(ロシアが最終的に京都議定書を批准した理由として、自国で使わない1990年比の排出権枠を発効時点の2005年2月時点で確実に2010年目標達成が見込まれない日本という優良債権国が出てきたため、売りたいとの政治的意図があると言われる)。 →京都議定書の目標は温室効果ガスの排出量削減であり、エネルギー使用量そのものの削減ではない。仮に「日本はエネルギー利用の効率化を既に高度に進めて」いたとしても、化石燃料由来エネルギーを減らす努力はいっこうに進んでいない。北欧諸国ではこの努力が評価されて削減目標が低く抑えられている。 →日本の排出量は総排出量でも一人当たり排出量でも世界で5指に入るほどであり、これまでの累積排出量の多さも考慮すると大きな削減努力が必須であるとの指摘もある。 GDP 当たりのエネルギー消費量で比較した際、2001年度時点ではドイツは日本の1.4倍、人口当たりエネルギー消費量ではドイツは日本の3倍を使用しており、日本の方が遥かにエネルギー効率が高かったものの、近年になるとドイツやイギリスなどで炭素税や排出量取引を採用するといった対策を積み重ねてきたことによって効率を高めている反面、日本の改善は緩やかであることから、2005年の CO2 排出量あたり GDP 値を見るとイギリスには既に抜かれ、ドイツとの差も僅かになっている。 1990年代以降に急増した自家用乗用車はその多くが公共交通からの転換であり、エネルギー使用が効率的である公共交通から非効率な内燃機関を持つ自家用乗用車への逆転換を黙認するという環境政策の失敗であった。そのため、たとえば OECD から「比較的小さな都市及び地方都市において統合的な公共交通システムをさらに拡充するとともに、大都市部及び高速道路での交通渋滞に取り組むため、交通需要の管理を改善すること」や「技術特定型の目標を避けつつ、再生可能エネルギー源の開発及び化石燃料への依存を減らすための、一貫性をもった長期的なフレームワークを構築する」ことが勧告されているが、財界における自動車・石油産業の影響力の下では効果的な対策が打ち出されにくい。 国土交通省の2005年度調査によると、1人を1km運ぶ場合に排出される二酸化炭素の量は、鉄道19g、バス51g、航空111gに対して、内燃機関を持つマイカーはバスの3倍以上の173gとなっている。これに従前からの大気汚染・騒音などの自動車公害や交通事故の抑止といった社会的要請も加わり、「マイカー」に依存せず公共交通機関を使いやすいまちづくりをすることが求められている(前述)ことから、たとえば公共交通の活性化・利用促進策や、交通需要管理(TDM)・モビリティ・マネジメント(MM)、都市計画の活用(スプロール化の抑止、コンパクトシティへの誘導策など)が検討され、取り組まれはじめている一方、コンパクトシティ化には失敗例も多い。 (京都議定書、途上国と先進国の対立、中国、米国などに関して追記が必要)
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