日本のマスコミ報道への批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 15:11 UTC 版)
「ヒトパピローマウイルスワクチン」の記事における「日本のマスコミ報道への批判」の解説
村中璃子は、いずれも雑誌『Wedge』で、センセーショナルな発言でメディアに露出したがる専門家や圧力団体の主張に大きく紙面を割く一方で、日本だけが名指しで非難されたWHOの接種勧告を一切取り上げないという日本のメディアは嘆かわしいと主張した。また『Wedge』で名古屋市が実施した調査に論理的根拠も明示せず、調査方法が疑問であるとする、専門家や団体の主張を大きく取り上げる朝日新聞などは世界的に特異であると主張した。村中が2017年にネイチャー等が主催するジョン・マドックス賞を、日本人として初めて受賞した際、ネイチャーに掲載されたプレスリリースでは「HPVワクチンの信頼性を貶める誤った情報キャンペーンが、日本で繰り広げられた」と日本の状況を表現している。ただ村中の『Wedge』での主張に関しては、信州大学の池田修一医学部長らが2016年に発表した副反応に関する研究に意図的な捏造行為があったと主張した件で、池田から名誉毀損だとして損害賠償を求める訴訟を起こされ、村中側が敗訴している。ウェッジは控訴せず、村中は4月8日付で控訴した。HPVワクチンをめぐる記事の名誉毀損訴訟で、東京高裁は10月30日、ウェッジが賠償金を全額支払ったため同記事を書いた控訴人である村中璃子氏の一審判決の敗訴部分を取り消すという判決を言い渡した。村中は上告受理申立てする方針を表明していた。これに対しては信州大は「予備実験でありながら断定的な発表をした責任は重い」と池田氏に再現実験の実施を求めるとともに、厳重注意処分を行っている。 ロンドン大学熱帯医学研究所教授で元ユニセフワクチン接種グローバルコミュニケーション部門の責任者のハイジ・J・ラーソンは「海外から日本での騒ぎを2年ほど見守ってきたが日本で最も驚くのは、日本国政府も学会も薬害を否定する中で、主要なマスコミがこぞってHPVワクチンの危険性を吹聴することだ。このようなメディアは世界中には例外中の例外で特異である。」と日本のマスコミを非難した。また、日本のマスコミの騒ぎがデンマークに飛び火して、一部の研究者が薬害説を唱え始める事態ともなり、欧州医薬品庁(EMA)も独自に調査をすることになったと語った。後の展開は#重篤な副反応の原因を参照。 産婦人科医らでつくる団体「HPV JAPAN」は2015年3月31日、「HPVワクチンの不安のみをあおる報道は、日本の将来に大きな禍根を残す」とする声明を発表した。 帝京大学の津田健司は、2013年3月の朝日新聞の報道以降、HPVワクチンに関する日本のメディア報道が肯定から否定に転じ、科学的エビデンスを無視する一方で、感情を揺さぶるエピソードが重視される傾向にあると述べている。また、ワクチンに対する否定的な論調が、一部のワクチン接種者の間でノセボ効果を発生させているのは否定できないとも述べた。 ジャーナリストの石戸諭によると、HPVワクチンの導入当初、日本ではワクチンに好意的な報道が占めていたが、2013年3月に朝日新聞が疼痛を訴える東京都杉並区在住の女子中学生を報じた報道を境に、「ワクチンをネガティブでリスクのあるように取り上げる記事が圧倒的に占めるようになった」と指摘している。 2019年7月、HPVワクチンの政策決定に関わった元厚生労働省健康課長の正林督章は「科学的なことをよく把握せずに、ワクチンの危険性を煽った一部のマスコミによって、国民の中にワクチンに対する不安が大きくなり、HPVワクチンは危険である世論が形成されてしまった。積極的勧奨の再開のためには、世論が変わることが必要だ。今度はマスコミが接種推奨再開をせよというのなら、マスコミの側で責任を取って世論を元に戻すべきである。世論が変わらない以上、積極的推奨の再開は難しい」と答えている。 2020年以降、朝日新聞はHPVワクチン再評価の記事を出している。 上記のようにHPVワクチンの賛成の立場から、積極的勧奨の中止につながったマスコミ報道を批判する意見は多様だが、実際に副反応に関して虚偽など報道倫理に反する報道があったかについては議論は低調で、放送倫理・番組向上機構でHPVワクチン報道が審議されたり、虚偽だとして新聞記事の撤回に追い込まれたり、司法が判決で虚偽報道と認定したような事例もない。 2022年積極的接種再開に際し、朝日新聞が「9年ぶりHPVワクチン勧奨再開 接種後の症状、医療者側の理解進む」とのタイトルの記事と公式ツイッターを掲載したところ、千葉県の熊谷俊人知事及び産婦人科専門医などが「目を疑った」「朝日新聞には言われたくない」など反駁を行った。
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