日本のヒラマキガイ科
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「ヒラマキガイ科」の記事における「日本のヒラマキガイ科」の解説
波部(1990)を基に、ブシェ&ロクロワ(2005)の分類を用いた日本産のヒラマキガイ科のリストは以下の通り。ここに示されたもの以外にも、これらに外見が似た外来種が移入されている可能性があるとも言われるが、推定の域を出ず実態は不明である。(Tribe=族、Genus=属) Family Planorbidae Rafinesque, 1815 ヒラマキガイ科 Subfamily Planorbinae Rafinesque, 1815 ヒラマキガイ亜科 Tribe Planorbini Rafinesque, 1815 ヒラマキガイ族Genus Gyraulus Charpentier, 1837 ヒラマキガイ属Gyraulus chinensis spirillus (Gould 1859) ヒラマキミズマイマイ担名亜種 Gyraulus chinensis chinensis (Dunker, 1858) と同種とされることもある。Gyraulus hiemantium Westerlund, 1883 は異名。小型のヒラマキガイ類は十分な検討なく本種に同定されることがあるが、類似種が多いため同定はそれほど簡単ではない。 Graulus gredleri (Gredler, 1859) クロヒラマキガイユーラシアに広く分布する本属としては大型の種。日本では釧路湿原に多いとされる。Gyraulus acronicus (Férussac, 1807) の異名とされることもある。 Gyraulus illibatus (Westerlund, 1883) ハブタエヒラマキガイ欧州の Gyraulus albus (O. F. Müller, 1774) と同種とされた時期も長いが、別種とされるようになった。欧州産の albus は名前のとおり殻が白っぽく、殻表の彫刻はより明瞭なものが多い。 Gyraulus iwaotakii (Mori, 1938) タキヒラマキガイ小型で螺管が太い。長野県沓掛温泉から記載された種。記載以後は長期間再採集されなかったとされるが、2018年にタイプ産地の温排水中で再確認された。なお琵琶湖疏水からも複数の標本記録があるが、これは後述のカドヒラマキガイ類の誤認の可能性もある。 Gyraulus sp. ヒメヒラマキミズマイマイ小型で螺管も細く、殻色は黄白色。永らく G. pulcher (Mori, 1938) の学名が用いられて来たが、 pulcher のホロタイプ(京都大学総合博物館所蔵)はヒラマキミズマイマイとみなされるもので、本種にはあたらないという。 Gyraulus soritai Habe, 1976 ミズコハクガイ螺塔(実際はヘソ側)が多少高まり、殻型が陸産のコハクガイに似るためにこの名がある。本州・四国に分布する。 Gyraulus tokyoensis (Mori, 1938) トウキョウヒラマキガイヒラマキミズマイマイやハブタエヒラマキガイに似て周縁に角があり、その部分の殻皮がつば状になるが、角の強弱などに変異があり識別が困難な場合も多い。 Gyraulus (Choanomphalodes) amplificatus (Mori, 1938) ヒロクチヒラマキガイ琵琶湖水系に固有。次種カドヒラマキガイによく似て稜角がなく、殻が厚い傾向があるが、中間的な個体も見られることから単なる個体変異の可能性もあるとされる:(p.31)。本種と次のカドヒラマキガイの2種は琵琶湖に固有のカドヒラマキガイ亜属 Choanomphalodes Lindholm, 1927として区別されることがあるが、動物データベース WoRMS(2015)ではこの亜属を認めていない。 Gyraulus (Choanomphalodes) perstriatulus (Preston, 1916) カドヒラマキガイ琵琶湖水系に固有。螺管が太く、肩と周囲および殻底に稜角をめぐらす。 Genus Planorbis O. F. Müller, 1774Planorbis carinatus O. F. Müller, 1774 カドバリミズヒラマキヨーロッパミズヒラマキに似て周縁の稜角が螺管の中央に位置する。ヨーロッパから西シベリアに分布し、日本では北海道斜里町以久科北からの記録がある。 Tribe Planorbulini Pilsbry, 1934Genus Menetus H. & A. Adams, 1855Menetus dilatatus (Gould, 1841) ヒロマキミズマイマイ北米原産の外来種で、21世紀初頭以降本州の複数の県で確認されるようになった。ヨーロッパにも移入されており、日本ではフロリダマミズヨコエビやアメリカナミウズムシなどとともに見られることもある。亜属 Micromenetus F. C. Baker, 1945 に属し、日本で見られるものはフロリダからパナマにかけて分布するとされる角の強い亜種 avus Pilsbry, 1905 に似たものもある。 Tribe Segmentinini F. C. Baker, 1945 ヒラマキガイモドキ族(クルマヒラマキガイ族)Genus Hippeutis Agassiz in Charpentier, 1837 クルマヒラマキガイ属Hippeutis cantori (Benson, 1850) クルマヒラマキガイ(別名:レンズヒラマキガイ)インド原産とされ、日本では本州中部以南に分布する。Hippeutis umbilicalis (Benson, 1836) の亜種とされることもある。殻上面は平坦で、底面はレンズ状に膨らみ、殻底を上にして生活する。 Genus Polypylis Pilsbry, 1906 ヒラマキガイモドキ属 (体層内の数ヶ所で3方向から歯状板が出る)Polypylis hemisphaerula (Benson, 1842) ヒラマキガイモドキ殻上面は平坦で、底面はドーム状に膨らみ、膨らんだ殻底を上にして生活する。種小名は「小さな半球状」の意で、殻形に因む。和名には「ガイ」を付けずにヒラマキモドキとすることもある。 Polypylis usta (Gould, 1859) リュウキュウヒラマキガイモドキヒラマキガイモドキに比し殻高がやや高いとされる。ヒラマキガイモドキの亜種やシノニムとされることもあるが、環境省(2007)のレッドリストその他では独立種として扱われている。和名には「ガイ」を付けずにリュウキュウヒラマキモドキとすることもある。 Subfamily Bulininae P. Fischer & Crosse, 1880 インドヒラマキガイ亜科 Tribe Bulinini P. Fischer & Crosse, 1880 インドヒラマキガイ族Genus Indoplanorbis Annandale & Prashad, 1920 インドヒラマキガイ属Indoplanorbis exustus (Deshayes, 1832) インドヒラマキガイ外来種で水槽や野外で見られる。レッドスネール、レッドラムズホーン、ピンクラムズホーンなどの通称でコケ取り用のタンクメイトとして販売されることもある。 Tribe Coretini Gray, 1847 (Camtoceratinae Dall, 1870 カワネジガイ亜科は異名)Genus Camptoceras Benson, 1843 カワネジガイ属Camptoceras terebra hirasei Walker, 1919 カワネジガイインドから記載された C. terebra Benson, 1843 の異名とされることがある。東京の赤羽から記載された Camptoceras ijimai S. Hirase は異名。 Camptoceras prashadi (Clench, 1931) ヒダリマキモノアラガイ本州に点々と記録があるが、個体群は安定的ではない。殻が太いことから亜属 Culmnella Clench, 1927 を区別し、これに分類されることもある。 Genus Helisoma Swainson, 1840Helisoma trivolvis (Say, 1816) アメリカヒラマキガイ北米原産の中型種で外来種としてリストアップされている。インドヒラマキガイに似た形で、若いうちは粗く規則的な成長脈がある。 Tribe Miratestini P. & F. Sarasin, 1897 (Ameriannini Zilch, 1959 オリイレサカマキガイ族・Ferrissinae Walker, 1917 カワコザラ亜科は異名)Genus Amerianna Strand, 1928 オリイレサカマキガイ属Amerianna carinata (H. Adams, 1861) オリイレサカマキガイサカマキガイに似た形で肩が明瞭に角張る。外来種で、熱帯魚の水槽で見られるほか、時に野外でも見られる。沖縄などでは野生化している。 Genus Laevapex Walker, 1903 カワコザラ属Laevapex nipponicus (Kuroda, 1947) カワコザラ全国に分布し、池などの止水環境に見られることが多いとされる。学名を Laevapex nipponica とすることがあるが、属名と種小名の性が合わない。和名は「ガイ」を付けててカワコザラガイとすることもある。 Laevapex japonicus (Burch & Habe, 1965) スジイリカワコザラ琵琶湖などに分布する。カワコザラに似て殻頂近くの殻表に微細な放射状彫刻があり、流れのある環境に見られることが多いとされるが、形態のみではカワコザラとの区別が難しい場合もある。Laevapex japonica とすることがあるが、属名と種小名の性が合わない。和名は「ガイ」を付けてスジイリカワコザラガイとすることもある。 Genus Ferrissia Walker, 1903Ferrissia fragilis (Tryon, 1863) コビトノボウシザラ北米原産の外来種で日本を含め世界中に広く移入されている。日本のものは最初は東京産の標本をタイプに Gundlachia (Kincaidilla) japonica Burch, 1964の学名で新種として記載され、後にタスマニアから記載された Pettancylus petterdi (Johnston, 1879)の異名とされるようになった(日本ではしばしば Pettancylus pettardi と綴られるが、種小名は William Frederick Petterd : 1849 - 1910 への献名で petterdi が正しい)。また他国でも P. australicus (Tate, 1880)、 Ferrissia wautieri (Mirolli, 1960)、F.clessiniana (Jickelli, 1882) などの名で知られるが、分子を用いた研究結果からは全て F. fragilis であるとされる。他にもシノニムとされるものが多数ある。和名には「ガイ」を付けてコビトノボウシザラガイとすることもある。
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