日本における「スモールボール」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 23:13 UTC 版)
「スモールボール」の記事における「日本における「スモールボール」」の解説
日本では、読売ジャイアンツの川上哲治監督(1961年 - 1974年)が「本場・アメリカ仕込みの野球」としてドジャースの戦術を導入しようとしたことで知られ、また後述するように学生野球にもスモールボールが用いられることは多く、スモールボールは日本人の野球観に多大な影響をもたらしてきた。[要出典] この影響で、“小技(犠打など)、機動力を駆使した野球こそ至上(あるいは美徳)であり、長打力に頼る野球は大味であり邪道である”という「ホームラン性悪説」的な固定観念が形成されており[要出典]、スモールボールといえばバント(犠打)が必須という考えが一般的である。この観念は、スモールボールを駆使した1980年代後半から1990年代前半の西武ライオンズの黄金時代到来によって決定的なものとなった。 ただし、V9時代のジャイアンツは、セリーグの打点王をV9時代を挟む17シーズンにわたって独占したON(王貞治・長嶋茂雄)という稀代の長距離打者が打点を稼いでいたし森祇晶監督時代(1986年 - 1994年)の西武は秋山、清原+外国人の長距離打者(ブコビッチ、バークレオ、デストラーデ)でクリーンアップを固め、多くのシーズンでチーム本塁打数リーグ1位を記録しており(1986年、1987年、1988年、1990年、1992年)、共々厳密な意味ではスモールボールとはいえない、あるいは対照的な野球であるといった意見もある。 また日本でスモール主義が尊ばれている理由の一つに、アマチュア野球が盛んなことが挙げられる。学生野球など一般に、レベルが低くなるほど打線には巧打者・強打者が少なくなると言われ、そうなると連打・長打には期待できず、必然的にスピードと小技に頼らざるを得なくなる。また、それ以上に日本でスモール主義が普及しているのは、高校野球においてスモールボール戦略が必須であることがあげられる。[要出典]これは日本の高校野球はリーグ制でなく、勝ち抜き制であるからである。リーグ制であれば勝ち越すことが重視されるため、統計的に最も獲得平均点が高い戦略が優先される。これに対して、勝ち抜き戦の場合は一度でも負けることが許されないので、必然的に勝つことより負けないことを第一に考え、安全に(統計的に偏差が少ないように)点を取りにいき守備のエラーを最小限に抑える戦略が支配的となる。[要出典]また、このような環境では多くのチームがスモール主義に近い戦略をとるので、スモール主義の欠点が露呈しにくい。ほとんどのプロ選手が日本の甲子園(勝抜き戦)を頂点とする高校野球を通過するので、自然にスモール主義が日本の選手に固定観念として染み付く結果となっている。[要出典]また、前述したアマチュアで支配的なスモール主義の影響から、日本人のファンやスポーツ記者の間では、スモール主義が一戦略に過ぎないということが意識されないほど浸透しており、これに反する采配が失敗すると大いにそれを叩き、逆に過度に安全パイを狙う戦略には寛容であるという土壌も影響している。[要出典] 例えば2006年のWBC日本代表監督である王貞治は、投手を中心とした守備を重点においた機動力重視のスモールベースボールを標榜した(ただし、WBC開幕直前にスローガンを「ストロング&スピーディー」に変えている)が、実際にはバントの要素ばかりを意識しすぎてしまい、バントの苦手な長距離打者にもバントを指示して自滅するなど、ちぐはぐな采配が目立った。[要出典]結局、準決勝・韓国戦の決勝点に象徴されるようにバントミスを長打で取り返すという展開となった。[要出典]しかし、前述の日本人の野球観やホワイトソックス優勝の影響もあってスモールボール至上論が支配的だった日本のマスコミでは、これを批判的に取り上げるメディアはごくわずかで「スモールベースボールの勝利」と伝えるのが大半だった。[要出典]
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