新笹子トンネルの建設
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「笹子トンネル (中央本線)」の記事における「新笹子トンネルの建設」の解説
笹子トンネルは開通以来60年以上にわたり単線で列車の往来に供されてきたが、輸送需要の増加に伴い線路容量は限界に達していた。このため、国鉄では第2次5か年計画に基づき高尾 - 甲府間の複線化を決定し、最大の難工事である笹子峠についても1961年(昭和36年)から調査を開始し、1963年(昭和38年)12月に新笹子トンネルが着工された。起工式は1964年(昭和39年)1月20日に行われている。 新笹子トンネルは、既設の笹子トンネルに対し北東へ約25 m離れた位置に建設された。当初は全長4,665 mと計画されていたが、東京方の坑口での国道20号との交差の都合で5 m東京方にトンネルを延長したため最終的に総延長4,670 mとなった。東京方を第1工区とし大林組が、名古屋方を第2工区として間組が請け負った。当初は第1工区2,110 m、第2工区2,255 mを契約して中間に300 mの未契約区間を残し進捗状況を見極めて契約する方針とし、結果的に進捗状況はほぼ同じであったためトンネルの頂点となる地点で工区を分けることになり、第1工区2,292 m、第2工区2,378 mとして施工された。坑口標高は東京方623.5 m、名古屋方623.1 mで、双方とも5パーミルの拝み勾配で頂点を635 mとしている。断面は単線1号形(側壁直)で、幅4.76 m、レール面上高さ5.1 mとなっている。なお、笹子トンネル建設の際に将来の複線化も考慮して、複数の箇所で工事に着手できるようにトンネル内から側方へマンホールを40 mおきに設置してあったが、列車本数の増大によりこうしたマンホールを生かした工事は実際には採られなかった。 第1工区では、当時本来は貨物扱いをしていなかった笹子駅を臨時にセメントのみの異例扱いとして搬入し、既設線、国道20号、笹子川に挟まれた新トンネル坑口付近の狭隘な場所にセメントプラント、充電場、修理工場等を設置した。坑口から100 mほどの範囲は地質上の理由から導坑を先に掘削してから後で全断面に切り広げる底設導坑先進上部半断面工法を採った。これに対して100 mほど先からは笹子峠の主な岩質である粘板岩につきあたり、全断面掘削を開始した。レッグジャンボーを用いて穿孔し、ダイナマイトで発破を行ってずりだしを行い、支保工を立てるというサイクルの繰り返しで工事が進められた。既設線との間隔の問題から装薬量は60 kg以下とする制約を受けた。既設トンネルがあるため湧水量は少ないと予想されていたが、実際には予想を上回り最大200リットル/分の湧水があり、穿孔・装薬の作業に悩まされた。最大日進は14.0 m、月間最高進行は299 mを記録した。その後覆工コンクリートの施工を行い、国道20号と交差する部分については一時的に道路の付け替えを行って対応した。 第2工区では初鹿野駅(現:甲斐大和駅)の貨物扱いを利用して搬入を行い、国道から坑口までの標高差があったことから約250 mの工事用道路を仮設して取り付いた。第1工区同様に当初の50 mほどの区間を底設導坑先進上部半断面工法で工事した後は全断面工法とした。工事は順調に進められ、1965年(昭和40年)1月11日には日進16.1 mの掘削記録を達成している。1965年(昭和40年)3月18日に貫通した。 最終的に、掘削土砂の量は135,330立方メートル、覆工コンクリートは21,990立方メートル、総工費は約7億6000万円であった。工事期間中に死者はなく、笹子トンネルが着工から覆工巻き立て完了まで6年かけたのに対し新笹子トンネルは1年5か月で完了と、この間のトンネル工事技術の進歩を示した。1966年(昭和41年)12月12日に供用開始となり、既設の笹子トンネルが下り線、新笹子トンネルが上り線となった。 複線化工事と並行してトンネル周辺部の線形改良などが行われ、笹子駅のスイッチバックも25パーミル勾配の本線上に島式ホームを設置することで廃止された。 笹子峠を貫く各トンネル位置関係を示した甲斐大和駅付近(西口)の空中写真。黒色のラインが中央本線。青色のラインが中央道。オレンジ色のラインが国道20号。トンネル部はすべて赤色のラインで示した。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。1975年撮影。 笹子峠を貫く各トンネル位置関係を示した笹子駅付近(東口)の空中写真。黒色のラインが中央本線。青色のラインが中央道。オレンジ色のラインが国道20号。トンネル部はすべて赤色のラインで示した。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。1975年撮影。
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