捜索活動とその終了
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 05:25 UTC 版)
「マリアナ海域漁船集団遭難事件」の記事における「捜索活動とその終了」の解説
アメリカ海軍では、10日からは特に潜水艦救難艦を現場に派遣し、第15潜水戦隊司令を現場指揮官に任命するとともに、ハワイからC-130輸送機1機を召致し、現場での空中調整及び通信中継を行なっていた。途中から、この空中現場調整機に航空捜索救難任務隊の幹部1名が配乗し、日本語による通信連絡に当たることになった。またアメリカ軍は、沈没を免れた日本漁船から情報を聴取していたが、言葉が通じないなどの問題が生じていたことから、12日夕刻より、水上捜索任務群から首席幕僚(菊地義一2佐)ほか2名が潜水艦救難艦に派遣された。 航空捜索救難任務隊のP2V-7は500フィート程度の低空を飛行して海上を捜索していたため、無線による通信可能範囲が狭く、漂流物などを発見した場合には米軍の空中現場調整機を介して近くの艦船を誘導し、回収するという手順になっていた。P2V-7には冷房装置がなく、低空を長時間飛行していると機内の温度が上昇してしまうため、近くにスコールがあるときにはあえてその中を飛ぶことで機体の温度を下げるなどの工夫をしていた。また地上駐機中も、炎天下飛行機が手も触れられない程に熱くなるので、やむを得ず気温の下がる夜間に懐中電燈を頼りに整備するという状況で、そのうえ、作業中は蚊に悩まされることが多かった。一方、水上捜索任務群は、米海軍、巡視船等から得た情報、台風29号の通過経路、水路図誌、漂流物及び生存者の救出位置等から判断して、当初はアグリハン島の東側に捜索区域を設定して活動していたが、海流、風向、漂流物の発見位置等を踏まえて、13日夕刻からはアグリハン島の西方海域に捜索区域を移し、捜索を続行することとした。 航空輸送任務隊の4機は、もともとは整備要員・器材の輸送任務ということで、乗員は未充足のままで派遣されており、当初は輸送任務が終わったら帰投する予定であったが、11日には予定を変更し、現地で航空捜索救難任務隊に編入されることになったため、元の所属に拘らずに乗員をやりくりして混成チームで飛ぶことになった。また14日には、第1航空群(群司令:阿部平次郎海将補)のP2V 1機が増強され、航空捜索救難任務隊に加わった。同機は、航空機用部品、増加食及び日用品等を搭載してきており、また隊長機は15日に一度帰国して16日に再度グアムに飛来するにあたって即席ラーメンなどを大量に搭載してきていた。これにより、航空部隊もようやく自給態勢がとれるようになった。航空部隊はアガナ基地で補給を受けていたが、初の部隊規模での海外派遣ということもあり、特に食事面での苦労が多かった。飛行中のランチボックスは、フライドチキンとクラッカーにピクルスなどが付属するもので、毎日ほぼ同じ内容であり、特に米飯に愛着が強い自衛官はなかなか馴染むことができず、整備員のうち1名は連絡機で帰国し、また便秘のために現地の病院に入院する者まで出た。 14日夕刻には給油艦「はまな」が現地に到着し、水上捜索任務群に合同した。同艦合同後、第1護衛隊群の各艦に対し、便乗してきた同群の隊員及び生糧品の移載を行った。更に、「はまな」では、捜索漁船の代表を招き、漁船に対する補給物資の引き渡しについて打合せを行い、各漁船に物資補給を行った。 15日、「はまな」は漁船に対する補給終了次第、横須賀に帰投するよう命令を受け、16日午前1時、水上捜索任務群指揮官の指揮を解かれ、横須賀に向かった。このとき、他の護衛艦に分乗していた報道関係者12名は、同艦に移乗、横須賀へ帰ることになった。 19日夕刻、海上保安庁長官から災害派遣撤収の要請があり、派遣部隊の撤収に関する海上自衛隊行災命が発令された。これにより、第1護衛隊群(第9護衛隊)は、同日午後10時捜索海面発、22日午後1時半横須賀に帰投した。また、第5護衛隊は佐世保に向かい、21日午後10時35分に帰着した。各隊は、それぞれ入港時をもって任務編成を解かれた。一方、航空部隊は20日、日米合同研究会に参加するとともに帰国準備を行い、翌21日午前7時、4個編隊に分かれてアガナ基地を離陸、同日午後2時、全機下総基地へ帰投した。 最終的に、本捜索救難活動には、延べ207隻の艦船、延べ91機の航空機が投入され、捜索海面は延べ27万平方海里に及んだが、遂に行方不明の遭難漁船を発見する事はできず、10月23日、捜索活動を終了した。
※この「捜索活動とその終了」の解説は、「マリアナ海域漁船集団遭難事件」の解説の一部です。
「捜索活動とその終了」を含む「マリアナ海域漁船集団遭難事件」の記事については、「マリアナ海域漁船集団遭難事件」の概要を参照ください。
- 捜索活動とその終了のページへのリンク