急速な昇進
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/18 16:51 UTC 版)
「ジョージ・ヴィリアーズ (初代バッキンガム公)」の記事における「急速な昇進」の解説
1612年にイングランドへ帰国し、1614年夏に国王ジェームズ1世の引見を受けた。それをきっかけに王の寵愛を得るようになり、以降酌人(英語版)として宮仕えするようになった。1615年には寝室侍従長(英語版)に任じられるとともにナイトに叙される。1616年には北トレントの巡回裁判官(英語版)(在職:1616年 - 1619年)、主馬頭(英語版)(在職:1616年 - 1628年)やバッキンガムシャー知事(英語版)(在職:1616年 - 1628年)などの官職を得る。また同年、ガーター勲章を受勲し、ヴィリアーズ子爵とワッドン男爵に叙された。1617年には枢密顧問官(PC)に列し、バッキンガム伯爵に叙される。1618年にはバッキンガム侯爵に叙される。1619年には海軍卿や南トレントの巡回裁判官となる。以降、海軍卿を主任務としつつ、内政や外交などあらゆる分野に影響力を及ぼすようになった。 海軍卿にはアルマダの海戦で名を馳せた初代ノッティンガム伯爵チャールズ・ハワードがいたが、老齢の彼には進行していた海軍の腐敗を止められず、世論の不満とそれによる枢密院の海軍調査が行われていた。海軍卿の役得収入を狙っていたヴィリアーズはそれに乗じ、1618年に枢密院が設置した査問委員会の海軍改革を口実にしてジェームズ1世を説得させ、翌1619年にノッティンガム伯を排除して自ら海軍卿に就任した。ヴィリアーズ本人は海軍に無関心だったが、査問委員会は海軍の腐敗と再建策を提言し将来の発展に向けた指標を立て、彼の死後海軍は組織改編を経て発展していった。 このヴィリアーズの短期間での急速な昇進の背景には君寵だけでなく、カンタベリー大主教ジョージ・アボット(英語版)、国王秘書長官(英語版)ラルフ・ウィンウッド(英語版)、侍従長(英語版)第3代ペンブルック伯ウィリアム・ハーバートら宮中内の改革派(プロテスタント強硬派)による後押しがあった。大蔵卿(英語版)初代ソールズベリー伯ロバート・セシルが死去した後、宮廷は親カトリック・親スペインのハワード家が取り仕切っており、国王寵臣の初代サマセット伯ロバート・カーもハワード派だったため、プロテスタント派はこれを警戒してヴィリアーズをサマセット伯に代わる国王寵臣に仕立て上げたがっていた。また1610年にソールズベリー伯が提案した財政改革案「大契約」が議会から否決されて以降、王庫の財政は危機的状況に瀕していた。1614年に議会が再招集されたが、国王秘書長官ウィンウッドが議会対策に不慣れなうえ、政府内でも財政改革案について意見が分裂していたため、政府と議会の和解が難しい情勢になっていた。そうした中でジェームズ1世が、議会からの財政援助をあきらめて持参金だけを目当てにカトリックのスペイン王室との婚姻に動く恐れがあり、ヴィリアーズにはそれを阻止する役割も期待されていた。 ヴィリアーズはその期待に十分にこたえ、国王を大蔵卿初代サフォーク伯トマス・ハワードら親スペイン派から引き離したばかりか、1618年にはサフォーク伯を失脚にまで追い込んでいる(サマセット伯も君寵をヴィリアーズに奪われ、殺人容疑で逮捕され失脚)。またこの時期にジェームズ1世の勧めでフランシス・ベーコンから政治指南を仰ぎ、イングランドの政治・宗教・経済・外交など多岐にわたる分析・対策を教えてもらったが、バッキンガム侯爵にまで叙せられたヴィリアーズは王の寵愛を当てにして政治を行う方を選んだため、ベーコンのイングランド指南を十分に学べなかった。このため身内贔屓による派閥形成に走り、彼に推挙された人々が宮廷や政府の要職を独占したため有力貴族の反感を買い、国政に関与出来なくなった地方の有力者は議会でバッキンガム侯が牛耳る中央政府と対決することになる。バッキンガム侯が推挙した人物には大法官に出世したベーコンと大蔵卿ミドルセックス伯爵(英語版)ライオネル・クランフィールド(英語版)など優秀な人材もいたが、彼らは後にバッキンガム侯に見捨てられる羽目になる。 1621年1月に召集された議会で独占権に対する批判が上がると、身内に独占権を与え議会の批判対象になっていたバッキンガム侯はベーコンから独占権廃止で支持を獲得することを助言されたが聞き流し、逆にベーコンをスケープゴートにし収賄罪で罷免に追い込んだ。ジェームズ1世もバッキンガム侯を守るためベーコン失脚に一役買った。
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