幻想即興曲とは? わかりやすく解説

げんそうそっきょうきょく〔ゲンサウソクキヨウキヨク〕【幻想即興曲】

読み方:げんそうそっきょうきょく

原題、(フランス)Fantaisie-Impromptuショパンピアノ曲即興曲第4番の名称。嬰ハ短調1834年頃に作曲ショパン死後友人により名付けられ出版された。


モシュコフスキ:幻想即興曲


ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 (遺作)

英語表記/番号出版情報
ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 (遺作)[Fantasie-]Impromptu cis-Moll Op.66 CT46作曲年1835年  出版年1855年  初版出版地/出版社Schlesinger, Meissonnier  献呈先: le Baronne d'Este

作品解説

2008年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 「Impromptu」とはラテン語由来し、「準備のできていない」ことを意味する。この言葉1822年偶然に二人作曲家同時に自作品に用いたのが最初とされる音楽ジャンルとして即興曲は、演奏技術として即興とはあまり関係がない。それは単に、即興風の雰囲気反映した楽曲という意味であり、19世紀以降音楽ジャンルである(なお、即興風の音楽というアイデア自体はけっして19世紀固有のものではないが、それ以前には、トッカータカプリッチョなど様々な名称で呼ばれた)。
 19世紀前半において、即興曲伝統大きく2つ流れがあった。ひとつは、流行しているオペラ・アリアの旋律民謡旋律などを変奏しながら続けるもので、チェルニーカルクブレンナーなどの他、リストにも佳作がある。もうひとつが、特定の形式もたない抒情的な音楽内容のもので、この言葉最初に用いたというヴォジーシェクマルシュナーのほか、シューベルト即興曲がその代表である。ただし、形式定まらないといっても、多くはA-B-Aのアーチ型をしている。
 ショパンは、シューベルト連なる伝統継承し、その創作中期に《幻想即興曲》および3つの即興曲》を残したいずれも明確なアーチ型であり、中間部を「ソステヌートsostenuto」と称する

 本作最初に書かれた《即興曲》であり、1835年エステ夫人献呈その音楽帳に作曲家自ら浄書した。しかしこの時ショパン出版意図していなかった。初版死後友人フォンタナの手によって1855年ドイツ翌年フランスで出る。しかしこれはどうやらエステ公家音楽帳とは異な資料に基づくとみられるフォンタナによればショパンが《即興曲作曲したのは1834年とすれば初版譜は自筆浄書より古い稿として資料的価値があるということになる。これらの大きな違いは、中間部が「Largo/Moderato cantabile ♩=88」から「più lento/sostenuto」に改められ一切メトロノーム記号削除されたことである。初版では、冒頭Allegro agitatoにも「二分音符=84」の指定があった。初版がもし本当に消失したもうひとつ自筆譜に基づくのだとすれば1834年から35年わずかな期間に、ショパン即興曲対す根本的な考え変化ないし確立したということができる。初版ショパン友人フランショムの筆写譜にも一致する点が多くもうひとつ自筆譜存在した可能性きわめて高い。なお、《幻想即興曲》の名称もフォンタナ初版帰するもので、ショパン自筆譜にはただ《即興曲》とのみ書かれている
 この作品用いられる即興技法は、第1番第3番みられるものとほぼ等しいが、実際にそれほど効果上げていない。また、左手3分割であるのに対して右手2分割とし、平行しながら決し交わらない2つ流れ生み出している。しかしこれも、切迫する2拍子刻み振りきるには至っていない。この曲の魅力は、結局のところその旋律美しさなのだ。これだけ感傷満ちた旋律執拗に繰り返しながらも――全体短調であるのにほとんど深刻さ感じさせないのは、この見え透いた感傷お陰である――、まさに天才的な旋律美のなせる技といえよう


幻想即興曲

作者雪屋よう子

収載図書夏の海辺で
出版社文芸社
刊行年月2006.6


幻想即興曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/03 04:48 UTC 版)

即興曲第4番 嬰ハ短調
フレデリック・ショパン
別名 幻想即興曲
形式 即興曲複合三部形式
調拍子 嬰ハ短調、2/2
テンポ アレグロ・アジタート 速度指定なし
出版年 1855年
制作国 フランス パリ
作品番号 66
献呈 エステ公夫人
プロジェクト:クラシック音楽
Portal:クラシック音楽
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即興曲第4番 嬰ハ短調 遺作 作品66(そっきょうきょくだい4ばん えいハたんちょう いさく さくひん66)は、ポーランドの作曲家フレデリック・ショパンが作曲したピアノ曲である。ショパンの4曲の即興曲のうち最初に作曲され、ショパンの死後1855年、友人のユリアン・フォンタナの手により『幻想即興曲』(げんそうそっきょうきょく、ファンタジー・アンプロンプチュ、Fantaisie-Impromptu)と題して出版された。 ショパンの作品の中で最もよく知られる楽曲のひとつである。即興曲第4番はパデレフスキ旧全集による便宜上の番号である。

曲の構成

複合三部形式(A - B - A')による即興曲。

Allegro agitato (A)
嬰ハ短調、序奏 + 三部形式(a - b - a) + 経過句。左手は1拍が6等分、右手は1拍が8等分されたリズムとなっている(ポリリズム)。
トリオ Più lento - cantabile(フォンタナ版はLargo - Moderato cantabile)(B)
変ニ長調、序奏 + 三部形式(a - a' - b - a')。後半のb - a'は若干変化して繰り返される。
(フォンタナ版はPresto)(A')
嬰ハ短調、三部形式。Aの再現。
コーダ
Bの主題が左手部分で回想され、静かに終わる。

公表の経緯

上述の通り、ショパンの生前には出版されなかった。ショパンは公表を控えるように頼んだが、フォンタナが遺言にそむいて出版した。

複数の版

この作品の筆写譜はいくつか現存しているものの、自筆譜は長らく見つかっていなかった。ところが、ショパンの弟子であるエステ公爵夫人に献呈された1835年の決定稿の自筆譜が、1962年アルトゥール・ルービンシュタインによって発見された。これは筆写譜との相違が多く、よりあとに書かれたものとみられる。

この新しい自筆譜に基づく版は、ウニヴェルザール出版社のウィーン原典版エキエル[1])、ポーランド音楽出版社のナショナル・エディションエキエル[2])、ペータース社の原典版(今井顕、バドゥラ=スコダ[3])、ペータース社の原典版ショパン全集新批判版(グラボフスキ、アーヴィング編[4])、およびヘンレ社の原典版ショパン全集旧批判版(ツィンマーマン編[5])で見ることができる。

ペータースの新版とヘンレの旧批判版はフォンタナ版と自筆譜の両方が収録されている。フォンタナがいかなる経緯で音符の端々を変更したのか、詳細が明らかではない。

サンプル

世界初録音

どちらの音源も現在ではmusic.apple.comで容易に探すことができる。

備考

フランス語から直訳すると、これは後置修飾なので即興幻想曲であり、音楽評論家の遠山一行NHK-FMの「名演奏家を聴く アルフレッド・コルトー集」では即興幻想曲と発言して紹介していた。

1917年にハリー・キャロル作曲ジョセフ・マッカーシー作詞のI'm Always Chasing Rainbowは本作を引用している。

脚注

出典

  1. ^ Frédéric Chopin: Impromptus”. www.universaledition.com. www.universaledition.com. 2021年4月5日閲覧。
  2. ^ 34. Various Works B”. www.chopin-nationaledition.com. www.chopin-nationaledition.com. 2021年4月5日閲覧。
  3. ^ ep9901a”. www.editionpeters.com. www.editionpeters.com. 2021年4月5日閲覧。
  4. ^ ep71906”. www.editionpeters.com. www.editionpeters.com. 2021年4月5日閲覧。
  5. ^ Impromptus”. www.henle.de. www.henle.de. 2021年4月5日閲覧。

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