展示に対する政治家の批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 14:14 UTC 版)
「あいちトリエンナーレ」の記事における「展示に対する政治家の批判」の解説
津田大介芸術監督は「(展示中止は)政治家の圧力が中止の原因ではない」と繰り返し強調しているが、CIMAM(国際美術館会議)は「The cancellation is an infringement of the artists’ freedom of expression, at the behest of politicians and the Mayer of Nagoya City, Takashi Kawamura, who made a direct request for the exhibition to be closed.」と展示中止は芸術祭実行委員会で会長代行を務める河村たかし名古屋市長の要望であるとしている。河村が慰安婦に対する日本政府の謝罪を求めるアメリカ合衆国下院121号決議の全面撤回を主張していた経緯から、津田は慰安婦像の展示中止を求める声明を発表することを予想していたが、行動を起こされることは想定外だったとしている。 8月1日、あいちトリエンナーレ実行委員会会長代理を務める河村たかし名古屋市長は、大阪市の松井一郎市長から、あいちトリエンナーレで慰安婦像の展示が行われていると質されたため、翌日に会場視察を行った。河村は『平和の少女像』だけではなく皇室関連の展示についても問題視し、実行委員長の大村に対して『表現の不自由展』の中止を含めた適切な対応を求める公文を8月2日付で発していた。吉村洋文大阪府知事は「表現の自由は保障されるべきだが、反日プロパガンダと国民が思うものを、愛知県が主催者として展示するのは大反対。」と批判、松井も「税投入してやるべき展示会ではなかったのではないか。個人が自費で様々な会合をするのは否定しない。」 とした上で、大村に対して展示したことについての説明責任を求めた。神奈川県の黒岩祐治知事も『平和の少女像』を「極めて明確な政治的メッセージがある。それを税金を使って後押しするのは、表現の自由より、政治的メッセージを後押しすることになる。」など政治家からは展示反対の表明が相次いで行われた。 自由民主党は日本の尊厳と国益を護る会が『平和の少女像』の展示について「『芸術』や『表現の自由』を掲げた事実上の政治プロパガンダだ。公金を投じるべきでなく、国や関係自治体に適切な対応を求める」と声明を発表し、日本維新の会も杉本和巳衆院議員(比例東海ブロック)が「公的な施設が公的支援に支えられて行う催事として極めて不適切」として、展示中止を求める要望書を提出した。 10月12日、河村は、あいちトリエンナーレ実行委員会会長代行として、名古屋市民に対して『平和の少女像』に関して以下の声明を公開した。 韓国民の政治的主張を目的として、世界各地に置かれている「従軍慰安婦像」と全く同じポーズ・衣装を纏った人形です。「従軍慰安婦」の問題自体が、その存否・評価を含め、高度にセンシティブな政治的な問題を含むと同時に、このような作品自体が、先鋭な対立関係を背景とした政治的主張を伴い、その対立関係をより先鋭化させる契機となる可能性を否定できず、現実には、多くの日本国民の国民感情を甚だ害するおそれが強くあり、この意味で「公衆に険悪の情を催させる」ものとして、公共の場所に相応しくない作品であると思いました。したがって、愛知県が主宰者として、愛知芸術文化センターという公共の場所を提供し、かつ、公衆の嫌悪感を覚えさせる作品の展示に住民の税金を拠出するといった、「便益供与」を行うことは、行政(愛知県・名古屋市)に求められる政治的中立性と、それに対する社会の信頼を著しく損なうものと考えられます。 これらの指摘に対して、芸術監督の津田大介は「政治家は、表現の自由に対して権力を行使できる立場であり、もう少し発言は抑制的であるべきだと思います」と批判し、また、津田を論説委員として擁する朝日新聞も「行政には、選任した芸術監督の裁量に判断を委ね、多様性を保障することに最大限の配慮をすることが求められる。」と批判を行った。また、日本共産党も、政治家による展示中止を求める動向を検閲行為として批判し、日本による「性奴隷制」の加害の事実を認め、被害者への謝罪と賠償の責任を日本は果たすべきという立場から『平和の少女像』の展示を支持する表明した。
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