専門業務型裁量労働制
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「みなし労働時間制」の記事における「専門業務型裁量労働制」の解説
1988年(昭和63年)の改正法施行により新設され、その後の改正で対象となる業務の範囲が拡大されている。高度の専門性・裁量性を持つ労働者への適用を想定している。 使用者が、労使協定により所定の事項を定めた場合において、労働者を対象業務に就かせたときは、当該労働者は、その協定で定める時間労働したものとみなされる(第38条の3第1項)。 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(対象業務)を対象とする。具体的には以下の業務である(施行規則第24条の2の2第2項)。なおチームで対象業務に従事していても、そのチーム内で雑用のみに従事する者や、管理者の管理のもとにおいて業務遂行や時間配分が行われている場合については、その者については専門型裁量労働制は適用できない(昭和63年3月14日基発150号)。 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。)の分析又は設計の業務 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法第2条第28号に規定する放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務(平成9年2月14日労働省告示第7号)コピーライター、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、ゲーム用ソフトウェアの創作、証券アナリスト、金融商品の開発、大学における教授研究(主として研究に従事するものに限る)、公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士税理士事務所において「税理士の補助」として、確定申告に関する業務、土地等の簡易評価の資料作成等の業務を行っていた労働者について、「税理士の業務とはいえない」とした高裁判決がある(レガシィ他1社事件、東京高裁平成26年2月27日判決)。 労使協定には、以下の事項を定めなければならない。事業場外労働とは異なり、4の時間数が法定労働時間以下である場合であっても、当該協定を行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届出なければならない(第3項、第4項)。 当該労使協定の有効期間の定め(当該協定が労働協約である場合を除く)有効期間は3年以内とするのが望ましいとされる。 下記6,7について講じた措置に関する労働者ごとの記録を、労使協定の有効期間中および有効期間満了後3年間保存すること 対象業務 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される1日当たりの労働時間数 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を使用者が講ずること(具体的には以下の通り。また、使用者は、把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、 対象労働者への専門業務型裁量労働制の適用について必要な見直しを行うことを協定に含めることが望ましいことに留意することが必要である)把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること 把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること 働き過ぎの防止の観点から、年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること 把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること 働き過ぎによる健康障害防止の観点から、必要に応じて、産業医等による助言、指導を受け、又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を使用者が講ずること苦情処理措置についてはその内容を具体的に明らかにすることが必要であり、 例えば、苦情の申出の窓口及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順・方法等を明らかにすることが望ましいことに留意することが必要である。この際、 使用者や人事担当者以外の者を申出の窓口とすること等の工夫により、対象労働者が苦情を申し出やすい仕組みとすることや、取り扱う苦情の範囲については対象労働者に適用される評価制度、賃金制度及びこれらに付随する事項に関する苦情も含むことが望ましいことに留意することが必要である。
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