学者・エコノミストの見解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 09:01 UTC 版)
「白川方明」の記事における「学者・エコノミストの見解」の解説
ノーベル経済学賞受賞のポール・クルーグマンはデフレ脱却政策に関して「中央銀行の独立性への介入に関しては、もはやあれこれ躊躇すべきではない。日本のGDPデフレーター(名目GDPを実質GDPで割った値。経済全体の物価動向を示す)は、ここ13年間、下がりっ放しである。それなのに今、日銀が重い腰をあげないというなら、(その責任者たる総裁は)銃殺に処すべきである」と述べている。 浜田宏一は「学生の頃の彼の聡明ぶり、分析力の鋭さには感銘を受けた。今は世界から首を傾げられる『日銀流理論』を言わなくてはいけない状況に追い込まれている」と指摘している。浜田は「日本銀行は、金融政策というこれらの課題に十分立ち向かうことのできる政策手段を持っている。日本銀行はそれを認めようとせず、使える薬を国民に与えないで、日本銀行が国民と産業界を苦しめていることを自覚していただきたい」「聡明な総裁のことだから、デフレと不況に苦しむ国民の立場から、その原因となっている緊縮金融政策を改めてくださることを願っている」と指摘した。また、浜田は「白川さんの頭の中は、金融業界さえ安定していれば、一般国民がどんなに失業してもかまわないと思っているかのように見える。教えていたころは、人の苦しみもわかる学生と思っていたが、失業、倒産の苦しみより日本銀行の組織防衛のほうが重要になってしまったのだろうか」と述べている。また、白川の実績について、デフレ脱却を実現できなかったとしてA-Cの評価で最低のCとした。浜田は、白川の人間性は評価しながらも日銀総裁としては「その信念は日銀や日本のジャーナリズムだけに通用する真理にすぎず、デフレと円高で国民を苦しめたという事実は、歴史として残る」と評価した。 経済学者の岩田規久男は「白川総裁の発言から、政府の成長戦略で生産性を高める必要性や、過度な流動性供給の副作用への言及など副作用を恐れてデフレを甘受するという日銀理論が垣間見える」と指摘している。 経済学者の若田部昌澄は「講演を聞くかぎり、デフレの原因には金融政策はまったく関係しないと考えている」と指摘している。 経済学者の高橋洋一は白川日銀は数か月後、早いと翌月には金融引き締めを行うのでほんの短期間でしか総量を増やさず、むしろインフレ率がプラスに転じるのを徹底拒否するデフレターゲットを設定してるとしか思えない政策を繰り返してきたと指摘している。 元日銀審議委員の中原伸之は「『失われた20年』生んだ」「白川総裁はデフレに有効な政策を打てなかったにもかかわらず、海外では『(日銀は)孤独な先駆者』と自画自賛した」「自らの理論に拘り異なる意見に耳を傾ける謙虚さに欠けていた」「円高やデフレで人々の暮らしは苦しくなったのに傍観者的立場に終始していた」と指摘している。 経済学者の小幡績は「長期的に日本経済にベストの案に一番近い中で、政治からの要求を最低限満たす政策を目指していた」と指摘している。 元日銀政策委員の水野温は「ショックに対し金融システムを確保する上で素晴らしい仕事をした」と評価する一方で「コミュニケーション面で緩和のインパクトを低減させてしまった。弱気な表情で副作用の説明をやり過ぎた」と指摘している。 エコノミストの村嶋帰一は「白川の任期は2008年4月に始まっており、世界金融危機以降ときれいに重なっている。誰が総裁でも難しいかじ取りを迫られる局面だった可能性が高い」と評価する一方で「金融政策の効果の限界をしばしば率直に指摘したことも、金融緩和のアナウンスメント効果を弱め、円高を招いてしまった」と指摘している。 白川の「(デフレ脱却には)民間企業・金融機関・政府・日銀がそれぞれの役割に即して取り組みを続けることが重要である」という発言について、中野剛志は理解を示しており、「『消費税増税をしてデフレを悪化させておきながら、デフレ対策の責任をすべて日銀に押しつけられてはたまらない』という気持ちなのであろう」「デフレ脱却は金融政策だけではなく、あらゆる手段を総動員してレジーム・チェンジしなければ成し遂げられない。日銀だけが『インフレターゲット』政策を導入して金融緩和を行っても焼け石に水で終わる」と主張している。
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