売買一任勘定取引(※現在の取引一任勘定取引)
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「投資一任会社」の記事における「売買一任勘定取引(※現在の取引一任勘定取引)」の解説
投資一任業務は、証券会社の売買一任勘定取引から派生したものである。なお、売買一任勘定取引は、1988年5月の法改正(1988年法律75号)に伴う同年8月の省令改正(1988年大蔵省令36号)により「取引一任勘定取引」に改称された。 証券会社は戦前から、売買一任勘定取引を行っていたのであるが、1948年証券取引法とこれに基づく証券取引委員会規則により、自己計算取引や過当数量取引などと同列で制限されていたところ、トラブルが多発したため、1964年2月通達「有価証券の売買一任勘定取引の自粛について」(1964年蔵理926号)により、「顧客の強い要請により、…やむを得ず特別に行う」ものとして、重ねて制限された。なお、証券会社は、1965年改正法(1965年法律90号)により免許制とされた際、証券業専念義務が課されたが、1967年10月通達「証券会社の兼業について」(蔵証1879号)により、投資助言業務は兼業承認の対象とされた。もっとも、兼業承認を受けた証券会社は3社どまりで、いずれも間もなく投資顧問子会社に業務を移管した。証券会社でない投資顧問子会社は、顧客のために証券取引行為を行うことが許されないため、投資一任業務を行えなかった。 1989年末、複数の証券会社において、損失補てんが組織ぐるみで行われていることが明らかとなった。いわゆる財テクがブームとなる中、各社の法人営業が過熱し、法人顧客の取引が暗黙の了解の下に一任的に運用された結果、損失を補てんせざるを得なくなったのである。損失補てんが、特定の顧客に対して、いわゆる飛ばしという簿外負債化を伴う多額の処理の形で行われれば、顧客間での不平等となるだけでなく、市況下落時に証券会社の経営に重大な影響を及ぼす。 そこで、1989年12月通達「証券会社の営業姿勢の適正化及び証券事故の未然防止について」(1989年蔵証2150号)と「投資顧問業者の業務遂行上留意すべき事項について」(1989年蔵証2151号)が発出された。当時の法律では禁止行為とされていなかった「事後的な損失の補填や特別の利益提供」について、「厳にこれを慎むこと」とした一方で、いわゆる営業特金が一任的に運用されることを防ぐため、「特定金銭信託契約に基づく勘定を利用した取引については、原則として、顧客と投資顧問業者との間に投資顧問契約が締結されたものとすること」とした。ところが証券会社の営業姿勢は改まらず、1991年夏、大口法人顧客に対する損失補てん、暴力団関係者との不明朗な取引などが発覚し、証券会社の不祥事が社会問題となった。改めて、取引一任勘定取引は「いわゆる損失補填の温床となりがち」とされ、同年7月通達「有価証券の取引一任勘定取引について」(1991年蔵証1135号)により原則禁止された。なお、①海外取引注文、②売値の下限または買値の上限を指示した注文、③取引総額注文、④システム売買注文、は「限定的な裁量権の委任によるもの」「投資者の自己責任原則に反しない」とされ、社内管理体制の整備を条件として、引き続きその受託を許された。もっとも、行政指導では実効性に限度があったことから、1991年10月の法改正(1991年法律96号)により、取引一任勘定取引の禁止が法令に明文化された。同法の1992年1月施行により、前出の証券取引委員会規則は廃止され、省令に「適用除外行為」が列挙された。このとき、投資顧問子会社の関わる取引口座で損失補てんが行われていたことが明らかとなったが、親証券会社からの独立性の確保が十分でなかった点が背景にあったと判断された。そのため、1991年11月に施行規則が改正され、また、1992年1月通達「投資一任会社が顧客のために証券取引行為を行う場合の取扱いについて」(1992年蔵証1914号)が発出されて、投資一任会社を資本関係・人的関係により支配している親証券会社への発注が原則禁止された。 その後、1998年金融システム改革法の施行に伴う省令改正の際、適用除外行為に「親族注文」が追加された。また、2002年8月に発表された「証券市場の改革促進プログラム」において、「誰もが投資しやすい市場の整備~多様な投資家の幅広い市場参加の促進」の一環として、取引一任勘定取引の範囲を見直すこととなり、同年12月に内閣府令が改正され、適用除外行為が、①外国証券会社注文、②特定同意注文、③取引総額注文、④システム売買注文、⑤親族注文、と整理された。
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