大蔵省の対応
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昭和59年頃の特金フィーバーといわれた時期から、特金の運用には損失保証が付き物といわれており、昭和61年10月末には大蔵省が証券会社2社の幹部を呼び、損失補填のような法に触れる行為が目立ってきたとして厳重注意している。このように、証券不祥事が社会問題化する以前から大蔵省は損失補填等について認識を持っていたと考えられる(事前約束のない事後の補填については明文が存在しなかったが、事前の損失保証については当時でも違法であった)。また、一任勘定取引については、従前より通達による自粛の行政指導が行われていたが(「有価証券の売買一任勘定取引の自粛について」昭和39年2月7日蔵理926号)、法律上これを禁止するものはなかった。 大蔵省は平成元年12月26日に大蔵省証券局通達「証券会社の営業姿勢の適正化及び証券事故の未然防止について」(平成元年12月26日蔵証2150号)を発した。その中で、違法行為である損失保証や特別の利益提供による勧誘は自粛すること、損失保証の温床となっていた一任勘定取引については投資顧問付とする(一任勘定を止める)こと、利回り保証・損失保証については破棄すること、さらに「事後的な損失の補填や特別の利益提供も厳にこれを慎む」ことを証券会社に対して求めた。法に明文の規定のなかった事後の損失補填についてもその自粛を強く促したことの意味は大きい。当時は損失保証の私法上の効力は有効と解されており(後述3.1)、このような中でもし株価が下落すれば、証券会社にとって極めて危険である(巨額の損失保証を履行する必要がある)との認識によるものであろう。通達と同じ内容は、日本証券業協会の「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」8条(日本証券業協会公正慣習規則)ともなった。 大蔵省証券局通達 法令上の禁止行為である損失保証による勧誘、証券取引法第50条第1項第3号や特別の利益提供による勧誘、証券会社の健全性の準則等に関する省令第1条2号はもちろんのこと、事後的な損失の補填や特別の利益提供も厳にこれを慎むこと。 公募株について(省略) 特定金銭信託契約に基づく勘定を利用した取引については、原則として、顧客と投資顧問会社との間に投資顧問契約が締結されたものとすること。 同通達と同時に出された大蔵省証券局業務課長から日本証券業協会専務理事、各財務(支)局理財部長宛ての事務連絡(「証券会社の営業姿勢の適正化及び証券事故の未然防止について」通達の徹底について)の中では特金勘定取引の整理について具体的な方法を示している。各証券会社は本年12月末現在における特金勘定取引の業態別口座数、残高及びその管理体制について調査を行い実情を把握すること、同取引については口座開設基準を設けること、同取引においては投資顧問会社と投資顧問契約を締結すること、同取引に対する具体的な対応については平成2年末までに措置を講ずること、などである。
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