名二環の機能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 21:20 UTC 版)
「名古屋第二環状自動車道」の記事における「名二環の機能」の解説
名二環は環状道路の機能を発揮して都市部の交通機能を維持する役割を担うが、この点は東京外環自動車道と同様の役回りである。 人口が密集する都市部には共通する自動車交通の流れがあって、それは大まかに3タイプに分類される。1つ目は都市内を移動する交通で比較的短い移動距離の交通(短いトリップ)。2つ目は都心とその周辺を取り巻く地方都市間を行き来する交通で比較的長い距離の交通(長いトリップ)。これは郊外から都心へ通勤する車や都心の商業施設に荷物、衣類、食料品などを届ける交通などが該当する。3つ目は郊外から出発して別の郊外に向かう交通で、郊外同士を結ぶ道路が都心を貫通しているためにやむなく都心部を通過する交通で、これを「通過交通」と呼ぶ。この3タイプの交通が一つの道路に集中したとき、容量超過により渋滞が発生する。よって、3タイプの交通を混合させないことが都市部の渋滞回避につながることがわかる。 大都市の道路の特徴のひとつに、主要な道路は大都市部を起点として地方を結んでいることが挙げられる。名古屋市の場合、東西を貫通する国道1号や国道23号(名四国道)の例外はあっても、その他の道路は概ね名古屋市を起点としている。このことは地方から名古屋市に向けての交通網が整備されていることの裏返しとして、地方間の移動において名古屋市を通過する必要があることを示している。さらに都心への道路の集中は、都市部の交通混雑も招いた。先に市内相互間の短いトリップの交通と地方から名古屋市に流入してくる長いトリップの交通があることは記述したが、そこに名古屋市に全く用がない、地方間直結の通過交通が通ることで、都心部において無用な渋滞が発生する。 この通過交通の悪弊を際立たせる出来事として、東京における首都高速の事例がある。お盆における長期連休中や1989年(平成元年)2月の昭和天皇の大喪の礼の期間中、全交通量の約1割程度が減少したことで首都高速の慢性的な渋滞が解消したが、一割減少した交通とは通過交通と目されている。つまり、通過交通を排除することが都心の渋滞緩和に大きく資することが分かる。名古屋市の場合、流入する交通の4割は通過交通と言われ、ただでさえ多い都心部の渋滞をより深刻なものとしている。 名古屋市をはじめとした中部圏が東京、大阪と大きく異なるのは、移動における自動車への依存度が飛び抜けて高いことで、この状況が都市圏内の渋滞箇所の多発を招いている。このことから名古屋市では3タイプの交通を混合させない方策として、長いトリップの交通については名古屋高速を建設のうえ、そこへ誘導することで短いトリップの交通と分離することとした。一方、通過交通については、名古屋市外縁に環状道路を建設することで、環状道路経由の迂回によって都心部流入を遮断のうえ、そのまま郊外に出て行ってもらうこととした。これにより混合交通を回避できるとした。 この環状道路が名古屋環状2号線で、国道302号(一般部)と名二環(専用部)、伊勢湾岸自動車道の一部(名古屋南JCT - 飛島IC)によって構成されている。国道302号は各放射道路と平面街路で接続するが、高速道路である名二環は全線立体交差により信号待機による停止は不要で、環状道路の機能を高い効率で発揮できる。 環状道路の機能は図に挙げた通過交通の迂回機能のみならず、放射状の一つの道路で事故による不通が発生、あるいは渋滞である場合、名二環を利用することで別の放射道路へ効率的に迂回する「分散導入機能」や「非常時の迂回機能」もある。一例では、四日市方面から名古屋都心へ乗り入れる際に、名古屋高速5号万場線が通行止めである場合、名古屋西JCTから名二環を利用して清洲JCTあるいは楠JCTを経由して別の名古屋高速路線(6号清須線または1号楠線)で都心に乗り入れることが可能である。このように名二環は、一本の道路が渋滞、通行止めであれば別の道路に迂回させるという選択肢をドライバーに与えることで、名古屋市内の旅行速度の低下、渋滞ポイントの多発、沿道環境の悪化というマイナス要因を排除する機能がある。 大都市圏に敷設された環状道路には、東名、名神高速道路など他の道路にはない、こうした都市圏の渋滞回避にかかわる迂回の特性が備わっている。
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