取引内容と取引所
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 18:36 UTC 版)
日本では大阪取引所、東京商品取引所、堂島取引所で商品先物取引が行われている。 取引形態は、東京では株式市場と同様の「板合わせザラバ折衷法」(個別競争売買)、大阪では1日数回の取引節ごとに注文を突き合わせる「板寄せ方式」(競売買による単一約定値段により行う売買約定方法)と分かれている。かつては「板寄せザラバ折衷法」も行われていた(競売買による単一約定値段により行う売買約定方法で、板寄せの方式にザラバの方式を織り込んだものであり、前述の板合わせザラ場折衷法とは、異なる取引仕法である)。 注文処理はコンピュータシステムによるシステム取引で行われているが、2007年8月31日までは中部大阪商品取引所大阪取引センターにおいて伝統的なハンドサインによる手振り板寄せ売買が行われていた(これが日本における手振りによる最後の取引である)。 板寄せ方式は、競売買(オークション)方式でかつ、ザラバ方式と異なり、会員別の手口が立会中でも場電又は情報ベンダーにより把握でき、取引参加者別の総取組高表および取引高表の公開、自己玉の取組高表も公開されている。この結果、ある程度、取引参加者が解る。 ザラバ方式には匿名性を利用する外資系委託者の見せ板問題などがある。証券取引ではザラバ方式が多い。 板寄せ方式は価格構成に不正な方法(後述の価格形成に影響を与えない向かい玉問題とは別次元の話である)が入りにくい。 また、板寄せ方式は、ザラバ方式と異なり時間優先の原則が存在しないため発注時間の有利、不利が存在しない。さらに、証券取引所の競売買(オークション)方式である板寄せとは異なり、売り手と買い手の注文枚数が完全一致したところで約定値段となる。これは、世界中の取引所取引の中で最も価格の透明性が高い(ガラス張り)取引だと言える。よって、日本独自の取引方法で世界に誇れる[独自研究?]取引方法だと言える。 最近では、世界各国も、商品取引の規制強化を求めており、証券監督者国際機構(IOSCO)が投機を抑制するために取引の透明化についての指針を出す方針を打ち出している。一方、東京工業品取引所は国際化と称して、反対意見があるにもかかわらず、取引参加者別の手口や取組高の情報の非公開化した。この東京工業品取引所の動きは、今日の情勢を考慮すると時期の差はあるにせよ結果的には国際情勢に逆行したといえよう。 その他、期近など流動性の低い取引をするときには、特定の時間に注文が集まる「板寄せ方式」のほうが「ザラバ方式」より約定させやすい特性がある(単一約定値段のためスプレッドコストが発生せずに、ザラバ方式より板寄せのほうがスリッページ(委託者の注文により仮約定値段が動くことも含む)が発生しにくい)。このため、さや取りはザラバ方式よりも板寄せ方式がやりやすい。また、常時、価格を見られないサラリーマンや当業者で相場専門の部署を設けていない等においては、ザラバと異なり板寄せは節ごとに値段の確認や参加をするだけで済むため、本業の合間に相場に参加が出来る当業者や一般投資家には参加しやすいという意見[要出典]もある。 板寄せ方式においては、市場で売買が成立した後、一定時間内の間、取引員が当該値段で売り買い同枚数の取引が成立したとして、後から取引所に報告することが認められている。(中部商品取引所を除く) これを「バイカイ付け出し」(または、「バイカイを振る」ともいう)という。 また、値幅制限時のときでも市場に出ている全注文玉が約定することは、「出来ストップ」という。 通常、出来ストップ時以外の値幅制限時の抽選や抽選なしのときには、約定しにくい状況が起きる。この状況の時、取引員が顧客の委託玉に相当するものを取引員が自己玉を使って対当させ(相対取引)、バイカイを振って玉を建てたり落としたりして、そして、何ら問題なく約定するケースがある。しかも、、板の薄い市場においても委託者の注文により仮約定値段(セリ中の気配値段のこと)が動かない。 この「バイカイ付け出し」(または、「バイカイを振る」ともいう)は、投資家の中には特殊サービスとして歓迎する向きもあるが、不正の温床であるとして問題視する意見[要出典]もある。 また、取引所と取引員は、日々値洗いに応じて、「場勘」とよばれる金銭のやりとりをしなければならず、この場勘定等を翌営業日正午までに決済(T+1)を行わなければならない。もし、それをしないと違約となり、取引停止となるので、取引員は場勘のやり取りを嫌う傾向が強い。 (かつては、場勘は2営業日のちの正午が決済期限(T+2)であったが、違約リスク軽減のため、平成15年6月6日に場勘定等の決済期限が短縮化(T+1)された。また、過去の場勘は取引員が取引所ごとに個別に清算していた。平成17年5月2日以降の場勘の取引は、清算参加者を委託者の代理人として委託者と日本商品清算機構が清算している。そのため、清算参加者と日本商品清算機構の間ではネッティング(相殺)により決済資金の負担が必要最低限度で済むことになった。また、取引証拠金の預託先も、日本商品清算機構が一手に担うこととなるため、複数取引所において取引を行う清算参加者にあっては、取引証拠金の一元的な預託が可能となり、事務及び資金の効率化が向上した)。 このため、取引員は取引所に対し中立のポジションをとる傾向があり、当然一般の顧客とは反対のポジションをとる傾向となる。これを「向かい玉」という。これは、顧客に対する出金遅延の原因となりやすい。 この「向かい玉」については、市場を全く通さない場合は「呑み玉」という不正行為になる。(刑法第185条 、同法第186条を参照) また、この「向かい玉」は運用方法に問題がある場合が多い。最高裁は平成21年7月16日と平成21年12月18日、利益相反取引について、この向かい玉がその可能性があることを受託する前にきちんと説明しなければならない、もし自己玉を建てたのちにきちんと事後通知をしないと、商品取引員は委託者に対して賠償責任を負う、と判示し、平成4年2月18日には、「客殺し商法」として、詐欺罪が適用出来ると判示している。 なお、ザラバにおいても、注文を貯めたり、指値注文や成行注文をうまく運用することにより、東京工業品取引所の旧システム(NTTデータ製)売買下においても、値段の完全一致はできないが、委託玉と自己玉のそれぞれの同じ値段か値段の近いところで約定させる類似した取引が行われていた。また、指値ではなく成行注文の場合、値段の完全一致が出来る寄付の板合わせ(証券取引所における板寄せ取引と同じ仕組み)に取引を誘導することも行われていた。よって、この問題の本質は、ザラバがよく、板寄せが悪いのではなく、取引員の営業姿勢によるものである。 「バイカイ」については、法律上有効説と無効説が議論されたことがあり、大審院判例においても、無効と判示としたことがあったが、後に、物議を招き有効と判示してる。(無効説=大審院大正3年(オ)第664号第二民事部同5年6月26日判決。有効説=大審院大正5年(オ)第420号第一民事部同5年11月14日判決、大審院大正5年(オ)第197号民事総合部同6年4月9日判決)
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