板寄せザラバ折衷法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/30 09:56 UTC 版)
立会場 板寄せ法と同様、高台は立会場の一端にあり、これと対峙しあるいはその正面を囲む位置に場電がある。高台と場電の間は板寄せ法より広いのが普通である。 市場代表者 板寄せ法では、高台に対して売りまたは買いの枚数を申し出るが、折衷法では、市場代表者は他社の市場代表者のなかから売買の相手を見いだして、その者と直接売買を行う。これを相対売買または相対商内という。この場合、売買した相手と枚数を記録するために「手合い取り」を行う(この記録帳を「手合い帳」という)補助員が必要となる。 会社からの売買注文が「成行注文」である場合は、単に「売ろう」または「買おう」と表示しながら相手を見つける。注文枚数に達するまで何回でも相手を見つけて売買を成立させる。 会社からの売買注文が「指値注文」である場合、たとえばその注文が8,750円で10枚売るときには、「5ヤリ」(50円売り)と発声しながら右手で「5ヤリ」の表示をして相手を探す。相手が見つかり10枚のうち3枚が売れたときは、さらに相手を探す。このとき、売れた3枚は40円になると注文の条件に合わなくなるので買い戻さなければならない。このため、「4カイ」(40円買い)の表示を左手で行う。すなわち、左手で「4カイ」、右手で「5ヤリ」の表示を同時に行い、しかも、「4カイ」は3枚であり、「5ヤリ」は7枚であるという計算を行っていなければならない。 上記2および3の売買注文が単独であればさして難しいことはないが、これらの注文が複数で、しかも、3)の指値注文の値段は数種類あるのが普通であり、市場代表者は複雑な計算を機敏に行うことを強いられるので、熟練するまでに相当な練習と年数が必要となる。 以下は取引所職員 撃析係 市場内の売買取引の状況を観察して、市場代表者が個々に表示している値段のうちから最も妥当であると思われる値段を表示する。この場合、売りの勢力が強いときには「何円ヤリ」と表示し、買いの勢力が強いときには「何円カイ」と表示する。 上記1において、場況の変化により、売りの勢力が一方的になった場合にはセリ下がり、買いの勢力が一方的になった場合にはセリ上がる。 上記1および2のセリが進行し、売りと買いの枚数が一致して、他に成行もしくはその値段以下の売り注文、および成行もしくはその値段以上の買い注文がなくなった場合、その値段をもって約定値段の成立を宣言する。このとき、成行注文はもちろん、その約定値段より高い指値の売り注文および安い値段の買い注文は、すべて成立することとなる。 上記1および2のセリの途中において、たとえば8,750円の売り注文と8,740円の買い注文だけが残り、「5ヤリ」と「4カイ」が対峙して、市場の売買が一時膠着状態となるときがある。この場合、撃析係は「4カイ・5ヤリ」と「極まり手」を宣言する。「極まり手」とは二者択一の状態をいい、その後の売買によって枚数の合致したほうの値段が約定値段となる。このため、極まり手のあとから出された注文は、たとえそれが40円以下の売りまたは50円以上の買いでその状態に適合する注文であっても、その全部が履行されない場合もある。極まり手の方法をとらないで、あくまでも売りと買いの枚数が一致した場合にのみ約定値段を成立させる方法(つぶれ商内)をとっている取引所もある。この方法によると、約定値段が成立する以前の注文はすべて履行される長所がある反面、立会時間が長びく欠点がある。 見張り係 立会中に売手と買手とで行った相対売買につき、それぞれの社名および売買枚数を帳付け係に通報する。 帳付け係 見張り係から通報された相対売買の売り・買い別の社名ならびにその枚数を場帳に記帳する。そして、立会終了後「読み合わせ」または「判取り」の方法によって各社が行った売買を照合(東京穀物商品取引所では「読み合わせ照合」)し、板寄せ法の副場帳と同様に各社別の売買の差引枚数を算出する。 以上のようにして売買が行われるわけであるが、折衷法は板寄せ法に比し、売買立会に活気がありかつ立会時間が短くて済むという長所がある。しかし、立会終了後の照合・整理に時間を要するという短所がある。 つまり、立会中に市場内の随所で同時に相対売買手合わせが行われるため、見張り係が相当熟練していても見落とす売買もあり、社名および枚数を誤認する場合もあるほか、帳付け係も取引輻輳時などにはその記帳に間違いを起こす場合もある。そのため、立会中に記帳されたすべての相対売買手合わせを立会終了後に読み上げ、これを市場代表者もしくは市場代表者補助員が「手合い帳」と照合確認しなければならないという煩雑さがある。 板寄せザラバ折衷法の問題点及び板寄せ法の長所・短所は次のとおり 板寄せザラバ折衷法板寄せ法短所市場代表者は熟練を要する 巧拙によって売買に著しい差が生じる 体力を消耗する 値動きが著しく間違いが多い 長所売買枚数を表示することになり、最も公正であるといえる 市場代表者は熟練を要しない 表示にともない売買枚数の変化、気配、仕手の動向がよくわかり、値動きが緩慢なため注文が出しやすい 売買枚数の一致により、完全一致の原則であるといえる。 短所 折衷法に比して余りにも活気に乏しい 相場としても妙味がうすい 飛び値を切られる懸念がある
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