収穫後のロスの原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/09/17 20:31 UTC 版)
「収穫後損失 (青果)」の記事における「収穫後のロスの原因」の解説
果実や野菜は植物の生きた一部分であり、65から95%が水である。栄養分や貯蔵した水が尽きると、生産物は死んで腐敗する。栄養分や水の消費速度を増加させるような要因が働くと、ロスの可能性は高まる。高温、大気中の湿度の低下、物理的な損傷はすべて作物の正常な生理的な変化を促進しうる。損傷は不注意な取り扱いからよく起こり、内部の傷みや割れ、皮の損傷を引き起こし、水分の喪失を促進する。 細胞呼吸は植物内で常に起きているプロセスであり、植物や生産物へのダメージなしには止めることができない。呼吸は蓄積したでんぷんや糖を消費し、それらが使い果たされると止まる。呼吸には通気の良さが必要である。通気が悪いと、呼吸の代わりに発酵が起き、二酸化炭素の蓄積にもつながる。二酸化炭素濃度が上がると、生産物は速やかに悪くなる。 新鮮な生産物は収穫後は水を失い続ける。水の喪失は萎れと重量の減少を引き起こす。水の失われる速度は、生産物の種類に依存する。葉物は表皮が薄く気孔が多いため、水を失うのが速い。一方イモは、皮が分厚く気孔が少ない。しかし生産物が何であれ、保存可能期間を延ばすためには水の喪失は最小限に抑えられなければならない。最も重要な要因は、果物や野菜の重量に対する表面積の割合である。その割合が大きいほど、水の喪失は速くなる。水の喪失速度は生産物内部と大気の水の蒸気圧の差と相関があるため、生産物は湿度の高いところに保存しなければならない 。 菌類や細菌による病害は収穫後損失の原因になるが、栽培時にはよく見られるウイルス病はそれほど問題にならない。腐敗が深くまで浸透するとその生産物は売れなくなる。これは収穫前の畑における感染の結果起こることが多い。病害が表面のみにとどまると、品質ロスが起きる。果皮の傷みは価格を下げるが、生産物が食べられなくなるわけではない。菌類や細菌類による病害は、大気や土壌、腐敗した植物体などに存在する微小な胞子や芽胞によって拡散する。収穫後の感染はいつでも起こり得るが、それは通常、収穫時やその後の取り扱いが原因である。 果実は成熟の最後に完熟する。完熟した後の果実は老化し、崩壊する。「果実」という分類はナス、ピーマン、トマトなどの生産物も含む。非クリマクテリック型果実は親植物についているときにしか成熟が進まない。収穫すると糖や酸の量がそれ以上増えなくなるため、完熟前に収穫してしまうと食味が低下する。例としては柑橘類、ブドウやパイナップルが挙げられる。早期の収穫はしばしば輸送中のロスを最小限にするために行われるが、その結果風味は犠牲になる。クリマクテリック型果実とは熟した後、完熟前に収穫できるものである。バナナやメロン、パパイヤ、トマトなどが含まれる。商業的な果実の取引では成熟の度合いは人工的に調節されるため、輸送と流通を入念に計画することが可能である。エチレンガスはほとんどの植物細胞で生産され、熟成の開始に重要な役割を持つ。エチレンは商業的にクリマクテリック型果実の追熟に用いることができる。しかし、果実が生産する天然のエチレンは貯蔵中のロスにつながることがある。たとえば、エチレンは植物の緑色を退色させるため、葉物野菜は追熟途中の果実と一緒に保管するとダメージを受ける恐れがある。エチレン生産は果実が傷ついたり腐敗し始めたりすると増加し、それによって輸送中の果実の熟成が促進されてしまうことがある 。
※この「収穫後のロスの原因」の解説は、「収穫後損失 (青果)」の解説の一部です。
「収穫後のロスの原因」を含む「収穫後損失 (青果)」の記事については、「収穫後損失 (青果)」の概要を参照ください。
- 収穫後のロスの原因のページへのリンク