原料工程
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「白色ポルトランドセメント」の記事における「原料工程」の解説
普通のポルトランドセメントに特徴的な、緑がかった灰色や茶色は、セメントの原料中の遷移元素が原因で生じる。着色効果の大きい順に、クロム、マンガン、鉄、銅、バナジウム、ニッケル、チタンが挙げられる。白色ポルトランドセメントを作るためには、セメントに含まれるこれらの量を可能な限り少なくせねばならない。クリンカーの段階において、Cr2O3は0.003%以下、Mn2O3は0.03%以下、Fe2O3は0.35%以下に留めることが必要である。これら以外の元素はそれほど問題にならない。 通常のセメント製造で使用される原料はクロムやマンガン、鉄を少なからず含んでいる。例えば、通常のセメント製造に使用される石灰石は0.3から1%ほどのFe2O3を含んでいるが、白色ポルトランドセメントの製造に必要とされるのは、含有量0.1%以下の石灰石である。通常のセメント製造に使用される典型的な粘土は5から15%ものFe2O3を含んでいるが、0.5%以下が望ましい。そのため、粘土の代わりにカオリンあるいは凝灰岩等が多く使用される。カオリンにはSiO2が少なく、そのため多量の砂が混ぜられる。 自然界において、鉄とマンガンは同じように存在していることが多く、鉄分の少ない原料を探せばマンガンの含有量も少ないことが期待できる。一方でクロムは、原料混合の過程でステンレス(クロムが含まれている)製粉砕機の磨耗によって混入する可能性がある。しかも原料に砂が多くなっている分、粉砕機の磨耗も促進されてしまう。砂は直径45μm以下に粉砕する必要があるが、この問題を解決するためにしばしばセラミックや陶器製の粉砕機を使って砂だけを別個に粉砕する方法が取られる。
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原料工程
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「ポルトランドセメント」の記事における「原料工程」の解説
クリンカーの主原料は、石灰石、粘土、珪石、鉄原料である。これらを乾燥し、焼成後に目的の化学成分のクリンカーが得られるよう混合・粉砕するのが原料工程である。 通常、乾燥が必要なのは粘土に限定され、他の原料はドライヤーを通過しない。ドライヤーの後段で粘土以外の原料が所定の割合で合流し、原料ミルに入る。原料ミル(ボールミル)で混合・粉砕された原料はブレンディングサイロに入る。ブレンディングサイロは複数あり、異なる時間帯に調合した原料を仮貯蔵する。最後に、これらの異なる時間帯に調合した原料どうしを再度混合して化学組成の最終的な調合を行い、ストレージサイロに貯蔵する。 主要原料はクリンカーの主要成分を高濃度で含有しているのに対し、クリンカーの主要成分の濃度は主要原料のそれよりも低い。つまり、セメント工業は原料を適度に混合し「純度を下げる」プロセスである。この点は、石油化学工業、金属製錬工業など多くの化学工業が「純度を上げる」プロセスであるのとは対照的である。 原料の化学成分の管理には、「モジュラス」と呼ばれる通常三つで1組の指標を使用する。製造しようとするセメントの品種(物性)および生産性を考慮して目標モジュラスを設定し、これを維持するよう原料の化学成分を管理する。モジュラスはセメントメーカーによっては「(化学)係数値」、「諸率」などとも呼ばれる。モジュラスが3つで1組となって運用されているのは、主要原料が4つであるからである。モジュラスの3つの条件と「焼成後の質量が合計で1トンとなる」ことを条件とすれば、四元連立方程式の解として原料原単位を決定できる。日本のセメント工場では水硬率 (Hydraulic Module、HM=CaO/(SiO2+Al2O3+Fe2O3)、単位はmass%(以下同じ))、ケイ酸率 (Silica Module、SM=SiO2/(Al2O3+Fe2O3)) および鉄率 (Iron Module、IM=Al2O3/Fe2O3) が主に用いられている。 水硬率HMはモジュラスの中で最も重視される指標である。HMが大きいほどクリンカー中の酸化カルシウム量およびエーライト量が多くなる。そのため強度の発現性は高まるが、一方で焼成反応性が低下する。クリンカーの焼成反応性が低下すると燃料原単位が増大し、製造コストの増大につながる。また、クリンカー中にはフリーライムが未反応のまま残存するようになる。現在の日本国内の普通セメントのクリンカーのHMは2.0 - 2.2である。 ケイ酸率SMが大きいと焼成を円滑に進めるために必要なクリンカー融液(焼成工程の項で詳述する)の量が少なくなり、焼成温度は高くなりがちである。その結果、焼成設備を損傷し易くなる。しかし、クリンカー中の二酸化ケイ素量が増しビーライトに富むクリンカーとなるので、低発熱性で長期材齢での強さに優れたセメントが製造できる。一方、SMが小さすぎると融液量が多くなるので、キルン内壁のコーティング量の増加による原料の閉塞(コーティングトラブル)の懸念がある。現在の国内の普通セメントクリンカーのSMは2.4 - 2.8である。 鉄率IMが大きいと酸化アルミニウム量が増えてアルミネート量が増加するため、初期材齢での強さの発現性が高まるが、化学抵抗性の低いセメントとなる。現在の国内の普通セメントクリンカーのIMは1.9 - 2.1である。 石灰飽和度 (Lime Saturation Degree または Lime Saturation Factor、LSD=100CaO/(2.80SiO2+1.18Al2O3+0.65Fe2O3)) はHMの代わりに用いることがある。二酸化ケイ素・酸化アルミニウム・酸化鉄と結合できる最大の酸化カルシウム量を1.0とする指標である。日本国内の普通セメントクリンカーでの標準的な値は0.92 - 0.96である。LSDが1.0を超える場合、焼成温度を高くしても焼成時間を長くしてもフリーライムが残る。また、品位の低い石灰石を使用するセメント工場では、酸化マグネシウム量も考慮して石灰飽和度を管理することがある。 活動係数 (Activity Index、AI=SiO2/Al2O3) はSMと同様の指標である。現在の日本国内の普通セメントクリンカーでの標準的な値は3.8 - 4.2である。 LSD以外の指標は、R.H.Bogueによる鉱物組成のポテンシャル計算が考案される以前からセメントの製造に用いられており、現在に至っている。
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