焼成工程
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「白色ポルトランドセメント」の記事における「焼成工程」の解説
燃料については、石炭ではなく重油又は天然ガスを使用する。石炭中には粘土以上に鉄分が多く含まれ、これが原料中に混入して色がつくのを防ぐためである。 ロータリーキルンでの焼成には、通常のクリンカーに必要な1400~1500℃よりも高い、最高温度1450~1500℃が必要とされる。この温度を実現するためには、より多くの燃料(通常の20~50%増し)が必要であり、また同じサイズのキルンであればより少ない産出量(通常より20~50%減)しか期待できない。鉄分の含有量が少ないために、焼結の際に生じるクリンカー融液の量が少ないからである。キルン内でクリンカーが生成されるには溶媒としての融液が必要で、融液の量が少ない場合は変化が遅くなる。原料に石膏とフッ化物を、フッ化カルシウムや氷晶石、蛍石といった形で混ぜることで、これをいくらか補うことができ、また反応温度を引き下げることができる。 クリンカーのFe2O3含有量が0.2%以上の場合(大抵はそうである)、漂白と焼入れと呼ばれる二つの処理が行われる。白色ポルトランドセメントの白色度は、原料もさることながらこの漂白と焼入れに依存する部分が大きい。漂白では、キルンの出口付近でクリンカーに再び火を入れ、鉄の酸化数を3価(Fe2O3)から2価(FeO)に下げる。通常のセメントの焼成では、クリンカーへの悪影響を恐れてこのようなことは厳しく避けられるが、白色ポルトランドセメントのクリンカーには、もともと鉄分が少ないため問題とはならない。 続いて、鉄が再び酸化することを防ぐため、焼入れが行われる。焼入れとは、クリンカーがキルンから出てから数秒以内に、クリンカーの温度を1,200℃から600℃以下まで下げることを意味する。温度を下げるために通常、クリンカーを冷水につける。全体としてエネルギー効率の低い白色ポルトランドセメントの製造工程ではあるが、通常のセメント製造と違い、この時のクリンカーの熱は再利用される。
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焼成工程
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「ポルトランドセメント」の記事における「焼成工程」の解説
焼成工程では調合原料を焼成しクリンカーを製造する。石灰石、ケイ石、粘土および鉄原料の混合物は化学反応を起こし、水硬性を有するクリンカー鉱物に変化する。焼成工程では熱効率を高めつつ焼成反応を完結させる(クリンカー中のフリーライム量を少なくする)ことに注意が払われる。 原料の加熱方式には、サスペンションプレヒーター (SP) 方式またはニューサスペンションプレヒーター (NSP) 方式と呼ばれる2種類がある。前者では4段ないし5段のサイクロンを上下に連結し、ロータリーキルンのバーナーから供給される燃焼排ガスにより原料を予熱する。後者ではキルンのメインバーナーだけでなくSP最下段部にもか焼炉があり、ここで原料の加熱を積極的に行い石灰石の脱炭酸を促進する。現在、NSP方式は熱効率と生産性に最も優れた加熱方式である。燃料には微粉炭を使用するのが一般的である。 ストレージサイロに貯蔵された原料はプレヒーター上段より投入され、プレヒーター下段(上流側)からの熱風により予熱される。各ステージで熱交換してプレヒーター下段に到達すると1000℃前後で煆焼され、石灰石の脱炭酸が進行する。次にロータリーキルンの最高温部(焼成帯)で1450℃以上の温度で焼成され、ここで原料どうしの最終的な化学反応(クリンカー鉱物の生成反応)が進行する。このとき、焼成物の一部が融液となり造粒が進む結果、塊状のクリンカーとなる。クリンカーはバーナー下を通過するとクリンカークーラーに落ち、直ちに冷却される。 クリンカーの融液はクリンカー鉱物(特にエーライト)の生成反応を促進し、塊状物を形成するために有用である。焼成時の融液の割合は液相度LP(融液量、percentage Liquid Phase)で表現される。適切な液相度は15 - 25%とされている。 焼成後のクリンカーを急冷するのは、ビーライトの常温安定相への転移を防ぐためである。ビーライトにはいくつかの多形がある。高温で安定なα型、α'型、β型は水硬性を有するが、γ型は水硬性を持たない。また、高温型からγ型へ転移する際には「ダスティング」と呼ばれるクリンカーの粉化現象が生じ、クリンカーのハンドリングが困難となる。 クリンカー焼成反応を完結させるために理論的に必要なエネルギーは、原燃料およびクリンカー鉱物組成により異なるが、標準的には400 - 420Mcal/t-cli.と言われている。実際の国内セメント工場における熱量原単位は750Mcal/t-cli.前後となるので、燃焼系統の廃熱を原料工程での乾燥に用いるなど、エネルギー効率の向上が図られている。
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