先行的恩寵とは? わかりやすく解説

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先行的恩寵

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/29 15:05 UTC 版)

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先行的恩寵(せんこうてきおんちょう、Prevenient Grace)とは、救いの恵みに先立って(先行的に)与えられる諸々の恩寵を指す。

4世紀神学者アウグスティヌスなどによれば、キリストの救いはの一方的な恵み・恩寵によるものとされる。しかし、人が救いの体験を持つ以前の期間にも、神の恵みは、すべての人・神に背いている罪人にも等しくそれが注がれているとされる。そもそも「死ぬべし」と宣告された罪ある者が、この地上でのいのちを与えられて生きていること自体が恵みゆえなのである。更に、地上のいのちを支えるすべてのことども、いのちを支えるになくてはならない衣食住、社会の秩序、それを維持し保護する政治、犯罪を防ぐ法律や警察といった手段、これらもすべて「先行的恩寵」の中に数えられる。

人を救いの経験へと導くに至る様々な摂理的な要因は「先行的恩寵」の中でも最たるものであるが、その働きを強調するのが、ウエスレアン・アルミニアン神学の特徴とされる。それに対して、改革派神学では、恩寵の概念を「一般恩寵」と「選びの恩寵」とに二分して、「選びの恩寵」に与る者は、神によって救いに選ばれた特定の人のみであって、「一般恩寵」に浴していても、神に選ばれていない者は、「救いの恩寵」に与ることはないとする。改革派神学の基準となるドルト信仰基準の中の「限定贖罪説」を参照のこと。

関連項目

参考文献

  • リチャード・テイラー監修、1993、「ウエスレアン神学事典」、福音文書刊行会、p.380.
  • 藤本満、1990、『ウエスレーの神学』、福音文書刊行会、p.125ff.

先行的恩寵

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 06:55 UTC 版)

アウグスティヌス」の記事における「先行的恩寵」の解説

前者の先行的恩寵に基づく解釈プロテスタンティズム神学述べられることが多い。A・E・マクグラスアウグスティヌス自由意志論次のように2段階に分けて整理する自然的な人間の自由は肯定される。人間物事為すのは自由意志よる。 人間自由意志は罪によって破壊排除もされていないが、罪によってゆがめられているために、その回復には神の恵み必要不可欠である。 アウグスティヌスによれば人間自由意志はいわば悪の分銅によって傾けられ天秤のようなもので、悪へと向かう深刻な偏り存するのである宮谷宣史は以下のように整理する生きとし生ける者誰でもキリスト恩恵なしには罪の裁き免れることは出来ない神の恩恵は、人間的な功績によって与えられることはない。 恩恵全ての人に与えられるわけではない恩恵は神の一方的な憐れみにより与えられる恩恵与えられないのは神の裁きよる。 善であれ悪であれ、自分行為に対して報いがある。 主への信仰人間自由意志よる。 宮谷アウグスティヌス自由意志論パウロ影響認めつつ、アウグスティヌスは罪を「無知」あるいは「無力」として捉え人間には自由意志があっても善悪判断する知識あるいは能力がないために救い根拠は「人間の」自由意志ではなく、「神の」自由な選び予定である。 クラウス・リーゼンフーバーによればアウグスティヌスにおいて、自由とは歴史形成する能力であるが、原罪孕んだ結果人間の自由は悪へと傾斜することとなり、中立的な自由を失った。しかし神の恩寵により自由な神の国」において、人間は自らの自由を取り戻すことが出来るが、その段階においても意志弱さは残る。その時人間が神への愛に貫かれ生きるなら、つまり愛への意志によって恩寵により完成されるならば、もはや罪を犯すことのない自由を得ることが出来る。そして個人はこの救い過程通して歴史進展寄与するとした。リーゼンフーバーによればアウグスティヌスは、人間本性アダム以来継受される原罪によって損なわれそれゆえ神と掟の遵守へと向かうためには、先行する無償恩寵が必要であると考え」た。 ほかに福田歓一も、アウグスティヌスペラギウス自由意志を巡る論争で、自由意志認めつつも、人間性は「無知」と「無力」のゆえに自由意志によって救いに至ることができない述べたとして、同じ立場に立つ。金子晴勇宗教改革精神』では、アウグスティヌス自由意志否定したではなく、その価値認めて自由意志許容したが、人間はその原罪のゆえに自由意志制限されており、信仰なくしては救いに至ることができないのである説いたのだといい、これも前者に近い。前者のような理解のもとにアウグスティヌス発展させて明確に自由意志否定したのがルターである。

※この「先行的恩寵」の解説は、「アウグスティヌス」の解説の一部です。
「先行的恩寵」を含む「アウグスティヌス」の記事については、「アウグスティヌス」の概要を参照ください。

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