事故詳細と原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 07:06 UTC 版)
「ナイジェリア航空2120便墜落事故」の記事における「事故詳細と原因」の解説
事故原因は左主脚の圧力不足のタイヤが滑走中に破裂したことに起因する。事故4日前の7月7日に左主脚の2番と4番のタイヤが圧力不足であることが判明し、主任整備士が整備しようとしたがタイヤに充填する窒素を手配できず、出発の遅れを嫌がった運航管理者がタイヤ交換も拒否して出発を許可した。この2人は2120便に搭乗した。 DC-8の片側の主脚は2本の車軸と4本のタイヤで構成されている。2本の車軸は前後に並び、1番と2番のタイヤは同じ車軸の左右に配置され、3番と4番はもう一つの車軸の左右についている。乗客と荷物を満載して離陸滑走を開始した結果、空気圧不足の2番タイヤと同軸の1番タイヤにまず負荷が掛かり、過荷重と圧縮熱で破裂。このため今度は2番タイヤも過荷重となり即座に破裂した。さらに噛み込みにより2番タイヤの回転が止まり、ホイールや主脚が滑走路と擦れて高温の摩擦熱が発生。それによりタイヤに残っていたゴム片が発火した。 乗員は異音と振動からタイヤの異変に気付いたが、そのまま滑走を続けた。やがて離陸して主脚を格納した結果、格納された主脚が火種となり、主脚格納部を取り巻く油圧系統や電気系統に延焼。火災はタイヤのゴム片や油圧系の作動油に加えてマグネシウム合金や、燃料(これは恐らく中央燃料タンクが焼損して漏れ出したもの)にまで燃え広がり、格納部の上方に位置する客室の床を焼き抜くと共に非常ブレーキを含む操縦系統も焼損した。 客室乗務員がコックピットに入り、煙を報告した頃には、火災のためCVRとFDRの記録が途絶えている。やがて管制官は誤りに気付き、事故機を正しく把握して針路誘導を開始した。 客室内装の一部は主脚格納部に落ち込んだ。滑走路まで11マイル (18 km)付近で緊急着陸のため主脚を出した頃、シートベルトが焼き切れた最初の乗客が機外に放り出された。これは主脚を出した開口部から大量の空気が流れ込んだ結果、一気に火勢が増して客室床の被害が拡大したためと見られている。続けて多数の乗客が座席ごと機外に放り出された。。 機長は滑走路まで10マイル (16 km)の時点で3度目の緊急事態を宣言したが、燃料の火勢で機体構造が強度を失い、目撃談によれば機首を突如70°下げて滑走路手前9,433フィート (2,875 m)地点に墜落し爆発炎上した。現場検証によると、墜落直前に空中分解し機首を下げ右にバンクした姿勢で落ちたと見られる。 この事故の主な原因は、整備をおざなりにしたネーションエアと出発を強行した運行管理者にあった。事故直前に整備主任がタイヤに充填する窒素を探したり、タイヤ交換をしたりといったことを試みようとした矢先に、運航管理者が出発の遅れを嫌がってタイヤ整備を拒否してしまった。整備主任はそれに逆らえないまま、その運航管理者と共に2120便に搭乗して2人とも死亡した。事故の原因に関して、サウジ当局とNTSBの見解には若干相違があり、前者が乗員や管制官に非は無かったとしているのに対し、NTSBは滑走中にタイヤ異常を察知した時点で離陸中止する機会もあったはずであり、また交信記録において管制官に混乱を生じさせたことなどからクルー・リソース・マネジメント(CRM)に問題があった可能性を指摘している。 しかし、この事故の根本的な原因が機体の整備不良にあった上、さらに事故現場からは、ネーションエアの整備員がタイヤの空気圧の数値を改竄した書類の一部が見つかったことから、安全性よりも利益を優先したネーションエアの安全軽視がこの大惨事を招いたという結論は双方とも一致している。 事故機はナイジェリア航空が運航していたものの、乗員ごとネーションエアからリースされており、安全上の責任は後者が負っていた。ネーションエアは当時エア・カナダ、カナディアン航空に次ぐカナダ第3位の航空会社だったが、この事故の発生によってツアーオペレーターからの信頼を失ってしまい、以降一度もフライトを行うことなく1993年5月に倒産した。
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