一般的症状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/22 01:06 UTC 版)
脊髄が傷つくと、そこから下にある神経がマヒするため、体が動かなくなり皮膚の感覚もなくなる。傷つく部分が脳から近ければ近いほどマヒする神経が多くなり、それだけ障害も重くなる。頸髄の場合、ほんの少し傷つくところが違うだけで、動くところや感じるところが大きく変わる。脊髄からはたくさんの神経がのび、頸髄からも頸神経とよばれる神経が7対のびている。この神経を通常は上からC1〜C7とよび、それぞれが身体の運動や知覚を少しずつ分担している。傷の程度によって、完全に神経が途切れて、まったく動かない場合を完全マヒ、部分的に途切れて、所々動かない場合を不全マヒと呼ぶ。ただし厳密には完全マヒと不全マヒに分かれるのではなく一人ひとりで症状が異なる。1つの障害名でくくってしまうのが無理に思えるほど症状に個人差が大きく、全く同じ状態の人は2人としていないといってもよいほどさまざまな症状がある。 運動機能 完全マヒでは、胸から下は動かすことができない。そのため立って歩くことができないので、車椅子が必要となる。腕は頸髄の傷ついた部分によって動かすことができたり、できなかったり、微妙に変わってくる。頸髄には呼吸するための神経もあるため傷ついた部分によっては自分で呼吸ができず、人工呼吸器が必要なことがある。またすわった状態で左右に手をつき、おしりを浮かす動作(プッシュアップ)ができる場合はベッドから車いすへの乗り移りなどが可能となるため、とても重要な動作となる。マヒした足などを触ったり移動したりすると、自分の意志とは関係なく動いたり、けいれんを起こすことがある。これを痙性(けいせい)といい、寒いときにはひどくなることがある。 知覚機能 マヒしている部分では、触った感覚が痛み、熱さ、冷たさなど温度の感覚がわからない。このため、ケガに気づくのが遅れたり、やけどをしやすい、褥創(じょくそう)(床ずれ)ができやすいなどということがある。褥創は、身体の同じ部位が長時間圧迫されることで血行が悪くなり、そこの皮膚や肉が死んでしまうことで、悪化すると感染症をおこし、死に至ることもある。褥創を予防するためには頻繁に姿勢を変える必要があり、睡眠中の体位交換やプッシュアップが重要な動作となる。 体幹機能 腹筋・背筋をはじめさまざまな筋肉がマヒしているため、座った姿勢を保つことが非常に困難となる。 自律神経 汗が出ないため体温調節が困難となる。暑さ・寒さに非常に弱く、エアコンが必需品となる。また、身体を起こすと血液が下に下がってしまい、貧血をおこしやすくなる(起立性低血圧)。ときに、膀胱(ぼうこう)に尿が一杯溜まった時や、排便する時に血圧が急上昇し頭痛、発汗、痙性がひどくなることがある(過反射)。放っておくと脳出血を起こすこともあり危険な状態となる。 排泄機能 排泄するときに使う筋肉がマヒしているため、通常通り行うことができなくなる。そのため、さまざまな工夫が必要となる。排便に関しては、排便日を決め下剤と座薬で排便を促す方法がよく使われる。排尿に関しては、次のような方法がある。
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一般的症状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 07:31 UTC 版)
損傷の度合いにより、「完全型」と「不完全型」に分かれる。「完全型」は脊髄が横断的に離断し、神経伝達機能が完全に絶たれた状態であり、「不完全型」の場合は脊髄の一部が損傷、圧迫などを受け、一部機能が残存するものを指す。 完全型の場合、損傷部位以下は上位中枢からの支配を失い、脳からの運動命令は届かず運動機能が失われる。また、上位中枢へ感覚情報を送ることもできなくなるため、感覚知覚機能も失われる。つまり「動かない、感じない」という状態に陥ることになる(麻痺)。しかし全く何も感じないわけではなく、受傷部位には疼痛が残ることが多い。また、実際には足が伸びているのに曲がっているように感じられるとか、痺れなどの異常知覚、あるいは肢体切断の場合と同様、麻痺野で本来感じないはずの痛み(幻肢痛、ファントムペイン)を感じることもある。 受傷後、時間が経過して慢性期に入ると、今度は動かせないはずの筋肉が本人の意思とは関係なく突然強張ったり、痙攣を起こすことがあり、これを痙性または痙縮と呼ぶ。 感覚、運動だけではなく自律神経系も同時に損なわれる。麻痺野においては代謝が不活発となるため、外傷などは治りにくくなる。また、汗をかく、鳥肌を立てる、血管を収縮/拡張させるといった自律神経系の調節も機能しなくなる為、体温調節が困難となる。 かつては脊髄損傷患者の寿命は健常者に対し、大幅に短縮されるというのが通説であったが、現在では医療技術の発展に伴い、およそ5%程度短いだけの平均寿命となっている。その分脊髄損傷患者の生活を改善する必要性が増していることになる。 重症度の指標として、国際的に最も使用されているのは、米国脊椎損傷協会(ASIA: American Spinal Injury Association)の機能障害スケール(Impairment Scale)で、略してAISと呼ばれている。最も重いAから正常のEの5段階に分けられている。 AISによる重症度分類 A(完全):仙髄領域(S4~S5)に知覚または運動機能が残存していない。 B(不全):仙髄領域(S4~S5)を含む神経学的損傷レベルより下位に知覚は残存しているが、運動機能は残存していない。 C(不全):神経学的損傷レベルより下位に運動機能は残存しているが、Key muscleの半数以上がMMT3未満である。 D(不全):神経学的損傷レベルより下位に運動機能は残存し、Key muscleの半数以上がMMT3以上である。 E(正常):知覚・運動機能は正常である。
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