神経伝達とは? わかりやすく解説

神経伝達

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/09 10:45 UTC 版)

前シナプス神経細胞(上)は神経伝達物質を放出する。この神経伝達物質は、近くの後シナプス細胞(下)の受容体を活性化する。
リガンド依存性イオンチャネルにおける伝達物質(Tr)の結合と膜電位(Vm)の変化。

神経伝達(しんけいでんたつ、Neurotransmission)は、神経伝達物質と呼ばれるシグナル伝達分子が、ある神経細胞シナプス前細胞)の軸索末端から放出され、ごく短い距離にある別の神経細胞(シナプス後細胞)の樹状突起上の受容体に結合し、反応する過程である。この過程における化学的および電気的活動には、Ca2+, Na+, K+といったイオンの濃度変化が関連している[1][2]

神経伝達は、さまざまな要因によって調節されている。例えば、神経伝達物質の可用性と合成速度、放出、シナプス後細胞のベースライン活動、神経伝達物質が結合できるシナプス後受容体の数、そしてその後の酵素による神経伝達物質の除去または不活性化、あるいはシナプス前再取り込みである[3][4]

閾値に達した活動電位または段階的な電位に応答して、神経伝達物質がシナプス前終末で放出される。放出された神経伝達物質はシナプス間隙を横切って移動し、シナプス後ニューロン(神経細胞)の受容体によって検出され結合する。神経伝達物質の結合は、シナプス後ニューロンに対して抑制性または興奮性のいずれかの様式で影響を及ぼしうる。シナプス後ニューロンの受容体への神経伝達物質の結合は、シナプス後電位と呼ばれる膜電位の変化のような短期的な変化、あるいはシグナル伝達カスケードの活性化による長期的な変化のいずれかを引き起こしうる。

神経細胞は、神経インパルス(活動電位)が伝達される複雑な生物学的ニューラルネットワークを形成している。神経細胞は(ギャップ結合を介した電気シナプスの場合を除き)互いに接触しておらず、代わりにシナプスと呼ばれる近接部位を介して相互作用する。活動電位がシナプスに到達すると、神経伝達物質の放出を引き起こし、それが別の(シナプス後)神経細胞に影響を与える。シナプス後ニューロンは、他の多くのニューロンから興奮性と抑制性の両方の入力を受け取ることができ、これらの影響は総和され、正味の効果が抑制性であればそのニューロンは活動電位を発生しにくくなり、正味の効果が興奮性であればしやすくなる。活動電位は「全か無かの法則」に基づいた現象であり、膜が閾値に達していないニューロンは発火せず、達したニューロンは必ず発火する。活動電位がいったん(伝統的に軸索小丘で)開始されると、それは軸索に沿って伝播し、前シナプスでの神経伝達物質の放出を引き起こし、さらに別の隣接するニューロンへと情報を伝達する。

脚注

  1. ^ Brini, Marisa; Calì, Tito; Ottolini, Denis; Carafoli, Ernesto (August 2014). “Neuronal calcium signaling: function and dysfunction” (英語). Cellular and Molecular Life Sciences 71 (15): 2787–2814. doi:10.1007/s00018-013-1550-7. ISSN 1420-682X. PMC 11113927. PMID 24442513. http://link.springer.com/10.1007/s00018-013-1550-7. 
  2. ^ Hodgkin, A. L.; Huxley, A. F. (1952-08-28). “A quantitative description of membrane current and its application to conduction and excitation in nerve” (英語). The Journal of Physiology 117 (4): 500–544. doi:10.1113/jphysiol.1952.sp004764. ISSN 0022-3751. PMC 1392413. PMID 12991237. https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/jphysiol.1952.sp004764. 
  3. ^ Nagatsu, T. (December 2000). “[Molecular mechanisms of neurotransmission]”. Rinsho Shinkeigaku = Clinical Neurology 40 (12): 1185–1188. ISSN 0009-918X. PMID 11464453. 
  4. ^ Andreae, Laura C.; Burrone, Juan (March 2018). “The role of spontaneous neurotransmission in synapse and circuit development”. Journal of Neuroscience Research 96 (3): 354–359. doi:10.1002/jnr.24154. ISSN 0360-4012. PMC 5813191. PMID 29034487. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5813191/. 

神経伝達

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/21 10:09 UTC 版)

ヒトの脳」の記事における「神経伝達」の解説

活動神経細胞同士繋がり合う相互連絡により可能となる。神経細胞細胞体軸索樹状突起からなる樹状突起細胞体から周囲広範に伸ばし、他の神経細胞軸索終末からシグナルの形で情報受け取る。受け取シグナル神経細胞活動電位瞬間的な電位変化)を生じさせ、それは軸索伝わって軸索終末届き次の神経細胞樹状突起もしくは細胞体シグナルを渡す。活動電位特殊な蛋白質複合物を持つ軸索起始部で始まり軸索終末達するとシナプス間隙神経伝達物質放出され次の神経細胞作用するシグナル伝達される。これらの化学的な神経伝達物質には、ドーパミンセロトニンGABAグルタメートアセチルコリンといったものがある。GABAは脳における主な抑制伝達物質であり、グルタメート主な興奮性伝達物質である。ニューロン同士シナプスを介して接続し神経経路神経回路形成しひいてはセイリアンス・ネットワークやデフォルト・モード・ネットワークといった精緻な大規模ネットワーク作り出し、それらの間のやりとりは神経伝達(英語版)のプロセスによって実現している。

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「神経伝達」を含む「ヒトの脳」の記事については、「ヒトの脳」の概要を参照ください。

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