神経伝達物質の放出における役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/18 17:06 UTC 版)
「SNAREタンパク質」の記事における「神経伝達物質の放出における役割」の解説
神経伝達物質は、シナプス前終末内に限定された小胞の即時放出可能プールに貯蔵されている。神経分泌(英語版)・エキソサイトーシスの過程を通じて、SNAREは小胞のドッキング、プライミング、融合、シナプス間隙への神経伝達物質の放出の同期に重要な役割を果たす。 シナプス小胞の融合の最初の段階はテザリング(tethering)であり、小胞は貯蔵プールから移動し膜と物理的に接触する。膜側では、Munc18がまずシンタキシン1Aの閉じた構造に結合する。複合体からMunc18が解離することで、シンタキシン1Aはv-SNAREタンパク質と結合できるようになると想定されている。次の段階は小胞のドッキング(docking)であり、v-SNAREとt-SNAREタンパク質はカルシウム非依存的に一過的に結合する。その後はプライミング(priming)であり、SNAREモチーフが小胞と膜の間で安定な相互作用を形成する。コンプレキシン(英語版)はプライミングされたSNARE複合体を安定化し、小胞を迅速なエンドサイトーシスが準備された状態とする。 プライミングされた小胞とSNAREタンパク質を高濃度で含むシナプス前膜の範囲は、アクティブゾーン(英語版)と呼ばれる。電位依存性カルシウムチャネルはアクティブゾーンの周辺に高度に濃縮しており、シナプスの膜の脱分極に応答してチャネルが開く。カルシウムの流入はシナプトタグミン1によって検知され、シナプトタグミンはコンプレキシンを取り除き、神経伝達物質の放出のために小胞がシナプス前膜と融合できるようにする。また、電位依存性カルシウムチャネルは、t-SNAREであるシンタキシン1AとSNAP25、そしてシナプトタグミン1とも直接相互作用することが示されている。これらの相互作用はカルシウムチャネル活性を阻害するとともに、放出部位の周辺に分子を緊密に凝集させる。 SNAREの遺伝子と神経疾患との関連は多くの臨床例で報告されている。SNAP25のmRNAの欠乏が一部の統合失調症患者の海馬組織で観察されており、SNAP25の一塩基多型は自閉症スペクトラムと、SNAP25Bの過剰発現は双極性障害の早期の発症と関連している。
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