神経伝達物質に関する研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 22:56 UTC 版)
「ギャンブル依存症」の記事における「神経伝達物質に関する研究」の解説
脳脊髄液中に含まれる神経伝達物質とその代謝物の量を測定すると、それらの物質が脳内でどのような働きをしているか推測することができるが、ギャンブル依存者について測定すると、その脳内ではドーパミンとノルアドレナリンが活発に生成・消費されていることが推測できる。一方、同じく神経伝達物質セロトニンの活性度を示す血小板のモノアミン酸化酵素が低下し、セロトニン受容体の感受性の指標とされるクロミプラミンを静脈注射した後のプロラクチン反応が鈍いというデータも得られる。これらを総合すると、ギャンブル依存者の脳内ではドーパミンとノルアドレナリンの働きが強まる一方、セロトニンの働きが低下するとみなすことができる。ここで3種の神経伝達物質の働きを単純化して考え、ドーパミンが行動の活性化、ノルアドレナリンが行動の維持、セロトニンが行動の抑制を司るとした場合、ギャンブル依存者はギャンブルに対して過度に興奮しその状態が持続する一方、興奮を抑えにくい状態にあると考えることができる。ドーパミンの分泌を抑制すればギャンブル依存症の症状を抑えることができるかといえば、そうとは限らない。そればかりかドーパミンの減少はパーキンソン病様の症状をもたらす危険もある。 ただしこの研究については、ギャンブル依存症を発症したからドーパミンとノルアドレナリンが働きを強めセロトニンの働きが低下するのではなく、もともとドーパミンとノルアドレナリンの働きが強くセロトニンの働きが弱い人間がギャンブル依存症を発症するのだとする見解もある。この見解に立ちつつ、ドーパミンが新奇性の追求、ノルアドレナリンが報酬に依存した(報酬があれば行動を続け、報酬がなければ行動をやめる)態度、セロトニンが危険回避を司るとした場合、新奇なものに敏感で報酬があれば行動を続け、損害を顧みない性格の持ち主はギャンブル依存症を発症しやすいという仮説を導くことができる。ほかに、ノルアドレナリントランスポーター密度、ドーパミンD1受容体密度と依存ポイントの関連、関連刺激によるドーパミン系の活性化と実際の報酬獲得時のドーパミン系の相対的鎮静化などが指摘されているが、いまだギャンブル依存を判断するバイオロジカルマーカーは特定されていない。
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