ロック鳥とは? わかりやすく解説

ロック鳥

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/15 09:39 UTC 版)

雛への餌にゾウとサイを運ぶロック鳥(画:Charles Maurice Detmold, 1883-1908)。
シンドバッドを壊すロック鳥。巨大なワシ[1]のような鳥がシンドバッドの船に岩を落としている。

ロック鳥(ロックちょう、アラビア語:رخ‎, rukhkh[2], ルッフ、現代ペルシア語: رخ, rokh[2], ロフ、英語: roc)は、中東・インド洋地域の伝説に登場する巨大な白い鳥。3頭のゾウサイを持ち去って巣の雛(ひな)に食べさせてしまうぐらい大きく力が強いとされる[1]ルフとも呼ばれる。

伝説

伝説の起源は不明だが、8世紀初期にアラブ人が書いたものによると実在する鳥類がもとになった可能性があり、マルコ・ポーロの口述とされる『東方見聞録』にはマダガスカルにいたと記述されることから、同島に17世紀ごろまで生息していたゾウのように巨大な地上性の鳥であったエピオルニスを始め、近世までに絶滅してしまった大型の鳥類などが誇張されたとも考えられる。また、ユーラシア大陸南西部やアフリカ大陸北部の山地に生息するヒゲワシがそのモデルであるともされる[1]

ロック鳥の伝説は、ヨーロッパでは『千夜一夜物語』(アラビアンナイト)の中のシンドバッドの話で有名であり、イスラム世界アジアでは広く伝わっていた。10世紀ペルシャの旅行家で『インドの驚異譚』を著したブズルク・ブン・シャフリヤール  (Al-Ramhormuziによれば、巨鳥の羽根の軸で作られた水差しがあり、筒型で大きいものは直径20cmはあったという。これは西南のマダガスカルから到来したものであった。現代ではその正体は同地産の竹筒であったと推測されている。マダガスカル語のヴル(volo)は「鳥の羽根」、「竹」双方の意味がある[3]

のちの時代、マルコ・ポーロの『東方見聞録』のマダガスカルに関する記述の中に、現地人がルク(ruc)と呼ぶ大きな鳥が登場する[4]。彼はこれをグリフォンであるとし[5][6][7][8]、その羽はハーンに届けられたという。また巨大な羽のかけらが中国から来た商人によってスペインにも持ち込まれている。その住処をマダガスカルで探そうとしたところ、ロック鳥の羽としてもたらされたものに形が非常によく似たラフィアヤシ: Raffia palm)の巨大な葉があったという。また、アラブの旅行家イブン=バットゥータ旅行記[9]にもその記述がある。

一番新しいものでは、16世紀インド洋を訪れたイギリス人旅行者が目撃したという報告もある。

ロック鳥は、アラブ人のいうフェニックスとほとんど同じものである。またペルシャの伝説に登場する巨鳥、シームルグとも近縁のものである。シームルグは、フェルドウスィーの叙事詩『王書[10]』の中では英雄ザールの養父であり、彼の子のロスタムを援助したりしている。

古代イランまでさかのぼると、万物の種を生むという神話上の木から熟した果実を振り落としたという不死鳥、アムルゼス(amrzs)の伝説を見つけることができる。インドには、鳥の王であり、ヴィシュヌ神が乗るガルダの伝説がある。パーレビ王朝時代のこのインドの伝説の翻訳では、ガルダがシームルグに置き換えられている。

脚注

  1. ^ a b c 斉藤ヒロコ「伝説の翼 #32ロック鳥 roc」『BIRDER』第28巻第8号、文一総合出版、2014年8月、65頁。 
  2. ^ a b Wiktionary - رخ”. 2025年1月15日閲覧。
  3. ^ 菊澤律子『マラガシ語--インド洋を渡った言語-怪鳥ロックのいた(?)島』国立民族学博物館、2006年
  4. ^ 『完訳 東方見聞録 2』(2000)、322頁
  5. ^  Marco Polo (フランス語), Le_Devisement_du_monde_(français_moderne)/Livre_3/Chapitre_40, ウィキソースより閲覧。  フランス語: Le Devisement du monde 3巻40章D’un très grand oiseau nommé ruc.
  6. ^  Marco Polo (フランス語), Le_Devisement_du_monde_-_Livre_3_-_33_à_42, ウィキソースより閲覧。  フランス語: Le Devisement du monde(français moderne) 3巻33章D’un grand oyseau, appellé Ruc.
  7. ^  Marco Polo (イタリア語), Milione/186, ウィキソースより閲覧。  イタリア語: Milione 86章DDell'isola di Madegascar
  8. ^  Marco Polo (英語), The_Travels_of_Marco_Polo/Book_3/Chapter_33, ウィキソースより閲覧。  英語: The Travels of Marco Polo 3巻33章Concerning the Island of Madeigascar
  9. ^  ابن بطوطة (アラビア語), تحفة النظار في غرائب الأمصار وعجائب الأسفار, ウィキソースより閲覧。 
  10. ^  آخر تغيير (アラビア語), شاهنامه, ウィキソースより閲覧。 

参考文献

  • マルコ・ポーロ 著、愛宕松男 訳『完訳 東方見聞録 2』平凡社〈平凡社ライブラリー〉、2000年。ISBN 978-4582763270 

関連項目

外部リンク


ロック鳥

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マギ (漫画)」の記事における「ロック鳥」の解説

本編及び外伝登場(名称は外伝より)。アルテミュラの象徴である巨小型のものは自家用大型のものは運送などに用いられ複数人間軽々乗せて飛ぶことができる。大地少ないアルテミュラにおいて人の移動と生活には欠かせず、大切に扱われている。肉が好物強靭な顎を持ち、肉に付いたダイヤモンドごと噛み砕いてしまう。

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「ロック鳥」を含む「マギ (漫画)」の記事については、「マギ (漫画)」の概要を参照ください。

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