ヨーロッパの地理的表示の保護制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 19:44 UTC 版)
「原産地名称保護制度」の記事における「ヨーロッパの地理的表示の保護制度」の解説
例えば北米などでは地理的表示にはあまり関心をもたれない。シャンパンについているAOCラベルやスコッチウィスキーやアイリッシュウィスキーのGI'sマークは製品を特徴づけることにはならず、地理的表示は商標が持つブランドイメージほどに意味を持たない。それに対し、ヨーロッパでは土地の土壌や気候や伝統的手法というものは製品の質に決定的な影響を与えると多くの人が考えている。そのため原産地がどこであるかという表示に敏感である。 ヨーロッパのいくつかの国では昔から地域の特産物を保護し、市場へのアピールを強めるために地理的な名称の使用を管理する決まりを整備していた。フランスはその分野での第一人者であり、地理的表示の保護制度は、今をさかのぼること16世紀にロックフォール・チーズのためにその名称を保護したことに始まる。 1883年にはパリ条約で false indicationsの条項で地理的表示保護が規定されていた。1891年のマドリッド協定でもやはり地理的表示保護に触れている。20世紀に入って1958年のリスボン協定、1994年の TRIPS協定でも地理的表示の保護が規定されている。 1992年には欧州連合理事会が農産物および食品のための原産地呼称および地理的表示の保護に関する理事会規則No2081/92を制定した。この規則では原産地呼称保護 (PDO: the protected designation of origin) と地理的表示保護 (PGI: the protected geographical indication) の枠組みを定めている。同じ年に、伝統的特産品保護に関する理事会規則 No 2082/92が制定された。この認証の枠組みは欧州委員会規則No 1848/93の時点から伝統的特産品保護 (TSG:the traditional specialty guaranteed) と呼ばれている。その後この二つの理事会規則は、欧州規則No1151/2012に置き換えられて、2014年現在この規則が地理的表示の保護に関する現行の規則である。その他にもワインや蒸留酒の地理的表示の保護に関する法律や、その際の細則があり、主なものは以下の表のとおりである。 地理的表示の保護に関するEUの主な法律成立年名称備考1989年 蒸留酒の定義、説明および表示に関する一般規則を定める1989年5月29日の欧州理事会規則No 1576/89 欧州規則No110/2008に置き換えられた。 1990年 ワイン及び原料のブドウの説明および表示のための細則を定める1990年10日及び16日の欧州委員会規則No3201/90 欧州規則No753/2002に置き換えられた。 1991年 アロマタイズド・ワインとアロマタイズド・ワインを原料とした飲料、アロマタイズドワイン・のカクテル製品の定義、説明および表示に関する一般規則を定めた1991年6月10日の欧州理事会規則No1601/91 欧州規則No251/2014 に置き換えられた。 1992年 農産物および食品のための地理的表示および原産地呼称の保護に関する1992年7月14日の欧州理事会規則No2081/92 欧州規則No510/2006に置き換えられた。 農産物および食品のための特性の証明に関する1992年7月14日の欧州理事会規則No2082/92 欧州規則No509/2006に置き換えられた。 1999年 ワイン市場の共通組織に関する1999年5月17日の欧州理事会規則No1493/1999 欧州理事会規則479/2008に置き換えられた。 1993年 農産物および食品のための特性の証明に関する欧州理事会規則No2082/92の適用に関する細則を定める欧州委員会規則No1848/93 欧州委員会規則No1216/2007に置き換えられた。 1994年 蒸留酒の定義、説明および表示に関する一般規則を定める欧州規則No1576/89およびアロマタイズド・ワインとアロマタイズド・ワインを原料とした飲料、アロマタイズドワイン・のカクテル製品の定義、説明、および表示に関する一般規則を定めた欧州規則1601/91に対する、多国間通商交渉のウルグアイ・ラウンドを踏まえた補足となる欧州規則No3378/94 欧州規則No 251/2014に置き換えられた。 2002年 ワイン分野の製品の一部の説明、名称、表示と保護に関して、欧州理事会規則1493/1999の適用のための規則を定める2002年4月29日の欧州委員会規則No753/2002 欧州委員会規則No607/2009に置き換えられた。 2006年 伝統的特産品としての農産物および食品に関する2006年3月20日の欧州理事会規則No509/2006 TGSの規定。欧州規則No1151/2012に置き換えられた。 農産物および食品のための地理的表示および原産地呼称の保護に関する2006年3月20日の欧州理事会規則No510/2006 PDOとPGIの規定。欧州規則No1151/2012に置き換えられた。 農産物および食品のための地理的表示および原産地呼称の保護に関す欧州理事会規則No510/2006の実施の細則を定める2006年12月4日の委員会規則No1898/2006 委員会規則No.664/2014に置き換えられた。 2007年 保障された伝統的特産品としての農産物および食品に関する欧州理事会規則No509/2006導入の細則を定める2007年10月18日の欧州委員会規則No1216/2007 委員会規則No.664/2014に置き換えられた。 2008年 欧州理事会規則No1576/89を廃止し、蒸留酒の定義、説明、表示及び地理的表示保護に関する2008年1かつ15日の欧州議会および理事会の欧州規則No110/2008 2021年に欧州規則2019/787に置き換えられる。 2009年 ワイン分野の製品の原産地呼称保護、地理的表示保護、伝統用語、ラベル付けおよ表示に関して、欧州理事会規則No479/2008の実施の細則を定める2009年7月14日の欧州委員会規則No607/2009 2012年 農産物および食品の品質制度に関する欧州議会および欧州理事会の2012年11月21日の欧州規則No1151/2012 2014年 原産地呼称保護、地理的表示保護および伝統的特産品保護の統一シンボルを確立することに関することと、原料の調達、手続き上の規則および移行の規則に関して、欧州規則1151/2012に対する補足となる、欧州議会および欧州理事会の2013年12月18日の欧州委員会規則664/2014 アロマタイズド・ワイン製品の定義、説明、表示、ラベル付けおよび地理的表示の保護と、欧州理事会規則No1601/91の廃止に関する、欧州議会および欧州理事会の2014年2月26日の欧州会規則No 251/2014 2019年 ワイン分野における原産地呼称、地理的表示、伝統用語の保護の申請、異議申し立て手続き、使用の制限、製品仕様書の追加、保護の取り消し、ラベル付けと表示に関して、欧州議会および欧州理事会の、欧州規則No1308/2013の補足となる2018年10月17日の欧州委員会規則2019/33 蒸留酒の定義、説明、表示およびラベル付け、他の食品の表示やラベル付けにおける蒸留酒の名前の使用、蒸留酒に対する地理的表示の保護、アルコール飲料における農業生産物由来のエチルアルコールおよび蒸留物の使用、および欧州規則110/2008の廃止に関する欧州議会および欧州理事会の2019年4月17日の欧州規則2019/787 2021年から施行 欧州規則No1151/2012の言う「品質制度」とは原産地呼称、地理的表示、伝統的特産品また「山の産品」というような任意品質用語 (OQT: Optional Quality Terms) の保護の制度を指す。
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