ムラサキフトモモとは? わかりやすく解説

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ムラサキフトモモ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/18 07:30 UTC 版)

ムラサキフトモモ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : rosid II / Malvidae
: フトモモ目 Myrtales
: フトモモ科 Myrtaceae
: フトモモ属 Syzygium
: ムラサキフトモモ S. cumini
学名
Syzygium cumini
(L.) Skeels.[2]
シノニム

ムラサキフトモモ学名Syzygium cumini)は、フトモモ科の熱帯常緑樹である。英語では、Malabar plum[3]Java plum[3]black plumjamunjamanjambuljambolan[4][5]等とも呼ばれ、その果実木材が利用され、鑑賞的価値[5]もある。インド亜大陸及び東南アジアが原産である[4][2]。高さは30mに達し、100年以上生きる[4]。成長が早い植物で、世界の多くの地域で侵略的外来種と見なされている[5]

ムラサキフトモモは、太平洋インド洋の島国、オーストラリア香港シンガポールを含む地域に導入されている[6]

フロリダ州にも導入され、世界中の熱帯及び亜熱帯地域で一般的である[5]。果実は、様々な鳥やジャッカルシベットオオコウモリ等の小動物が食べる[5]

記載

熟すにつれてのムラサキフトモモの果実の色の変化

密集した葉が日陰を作り、観賞価値のためのみに栽培される。樹皮は基部の近くでは粗く暗灰色だが、上方では滑らかで明灰色になる。木材は、窯で乾燥した後は耐水性となり[4]、このため、鉄道の枕木井戸のモーターに用いられる。安価な家具や村の住居等が作られることがあるが、加工するのはい比較的難しい[4]。芳香のある葉は、若い時は桃色で、熟するに従って、黄色の中央脈を持つ皮のような輝く深緑色に変わる。葉は栄養価が高く、家畜の餌として用いられる[7]

花季は3月から4月で、花は芳香を持ち、直径約5mmと小さい。果実は5月から6月に発達し、大きなベリーに似た核果[8]、卵形をしている。未熟な果実は緑色で、熟すと桃色から輝くようなクリムゾンレッドを得て、最終的には黒色になる。白色の果実を作る品種もある。

果実には甘みとマイルドな酸味、収斂味があり、食べると舌が紫色に染まる[4]

ムラサキフトモモ果実(生)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 251 kJ (60 kcal)
16 g
0.23 g
0.7 g
ビタミン
チアミン (B1)
(1%)
0.006 mg
リボフラビン (B2)
(1%)
0.012 mg
ナイアシン (B3)
(2%)
0.26 mg
ビタミンB6
(3%)
0.038 mg
ビタミンC
(17%)
14 mg
ミネラル
ナトリウム
(1%)
14 mg
カリウム
(2%)
79 mg
カルシウム
(2%)
19 mg
マグネシウム
(4%)
15 mg
リン
(2%)
17 mg
鉄分
(2%)
0.2 mg
他の成分
水分 83 g

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

分布

インド亜大陸(アンダマン諸島バングラデシュネパールインド、東ヒマラヤ、パキスタンアッサム州ラッカディヴ諸島スリランカ)、中国(海南省中南、中国南東部)、インドネシアジャワ島モルッカ諸島スラウェシ島)、東南アジア(カンボジアラオスマレーシアタイ王国ベトナムミャンマー)、オーストラリアクイーンズランド州)等に自生する[2]

侵略的外来種

フロリダ州、南アフリカカリブ海地域の一部、オセアニアのいくつかの島、ハワイ州では、侵略的外来種と見なされている[5][6]

利用

果実はそのまま食べられるが、ソースジャムの材料にすることもできる。また、ジュースゼリーソルベシロップkala khatta等)[9]フルーツサラダ[4]等も作られる。

栄養

生の果実は83%の水分、16%の炭水化物、1%のタンパク質、痕跡量の脂質を含む。100g当たり60カロリーである。若干量の ビタミンCを含むが、他の微量栄養素はあまり含まれていない(右表参照)。

歴史

1889年の本The Useful Native Plants of Australiaは、この植物は、オーストラリア先住民に"durobbi"と呼ばれており、また「その果実はインドの現地人にずっとよく食べられている。外見はダムソンに似て、味は不快だが甘く、いくらか収斂味と酸味がある。鳥の餌となり、特にオオコウモリが好む。」と書いている[10]。この果実は、伝統医療にも用いられる[4][5]

インドでの文化的・宗教的重要性

中部』では、釈迦が子供の頃にムラサキフトモモ(パーリ語ではjambu)の作る涼しい木陰に座っていた時の経験を覚えていると記している。父が働いている間、彼は瞑想状態に入り、彼は後にそれが禅定の第一段階(初禅)であったことを理解した。『中部』では、これは原体験であり、後に彼が禅定を探求し、実践するように促し、正覚に繋がったと説く[11]

クリシュナは、右足に4つのムラサキフトモモの果実のシンボルを持っていると言われる。

マハーラーシュトラ州では、ムラサキフトモモの葉は結婚式のパンダルの飾りつけに用いられる。1977年の映画Jait Re Jait内の曲 Jambhul Piklya Zaadakhaliでは、この果実が歌われている。

アーンドラ・プラデーシュ州では牛車の車輪やその他の農業機械がムラサキフトモモ(テルグ語neredu)の木材から作られる。また、ドアや窓を作るのにも用いられる。

サンガム文学時代の詩人Avvaiyarとムラサキフトモモ(タミル語ではnaval pazhamと呼ばれる)の果実に関するタミル・ナードゥ州の伝説では、為すべきことを全て成し遂げたと信じられているAvvaiyarがムラサキフトモモの木の下でタミル文学からの引退を考えながら休んでいた時、タミル語の守護神の1人と考えられているスカンダと出会い、言い争ったとされる。そして変装していたスカンダは後に自らの正体を明かし、成し遂げるべきこと、学ぶべきことはまだ多くあることを彼女に気付かせたと伝えられる[12]

ギャラリー

出典

  1. ^ Botanic Gardens Conservation International (BGCI).; IUCN SSC Global Tree Specialist Group (2019). Syzygium cumini. IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T49487196A145821979. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T49487196A145821979.en. https://www.iucnredlist.org/species/49487196/145821979 2021年11月19日閲覧。. 
  2. ^ a b c Template:Cite POWO
  3. ^ a b Syzygium cumini. Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2017年10月22日閲覧.
  4. ^ a b c d e f g h Julia F Morton (1987年). “Jambolan, Syzygium cumini Skeels”. In: Fruits of Warm Climates, p. 375–378; NewCROP, New Crop Resource Online Program, Center for New Crops and Plant Products, Purdue University. 2020年7月3日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g Syzygium cumini (black plum)”. CABI (2019年11月21日). 2020年7月3日閲覧。
  6. ^ a b Syzygium cumini” (英語). Pacific Island Ecosystems at Risk (2011年12月30日). 2025年8月18日閲覧。
  7. ^ The encyclopedia of fruit & nuts, By Jules Janick, Robert E. Paull, p. 552
  8. ^ Chen, Jie & Craven, Lyn A., “Syzygium”, in Wu, Zhengyi, Flora of China (online), eFloras.org, http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=132166 2015年8月13日閲覧。 
  9. ^ What is Kala Khatta Syrup ? Glossary | Benefits, Uses, Recipes with Kala Khatta Syrup |
  10. ^ J. H. Maiden (1889). The useful native plants of Australia : Including Tasmania. Turner and Henderson, Sydney. https://primo-slnsw.hosted.exlibrisgroup.com/primo-explore/fulldisplay?docid=SLNSW_ALMA21105097830002626&context=L&vid=SLNSW&search_scope=EEA&tab=default_tab&lang=en_US 
  11. ^ Rhys-Davids, Pali-English Dictionary; Cone, Dictionary of Pali
  12. ^ Ramadevi, B. (2014年3月3日). “The saint of the masses”. The Hindu. オリジナルの2021年5月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210501172127/https://www.thehindu.com/features/friday-review/history-and-culture/the-saint-of-the-masses/article5746486.ece 

関連項目




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