ブルトマン以後とは? わかりやすく解説

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ブルトマン以後

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/07 00:45 UTC 版)

ナザレのイエス」の記事における「ブルトマン以後」の解説

1910年代末葉から1920年代初頭にかけて、すでに編集され福音書というかたちで示される個々イエス言葉物語についてそれぞれの編集過程歴史的な位置付け明らかにようとする様式史研究(Formgeschichte)」の試みが、マルティン・ディベリウスMartin Dibelius)や上述ルドルフ・カール・ブルトマンらの神学者によって始められた。この研究方法においてはイエス伝承形成としての原始教団は、固有の文体」、「様式」、「文学類型」を生み出した想定し個々伝承どのようにして生まれどのように個々福音書の現在みられるような位置編集される至ったか、その歴史経緯明らかにすることを目的としている。したがって物語のなかのどの言葉編集のために福音記者補った言葉編集句)であるか特定することで伝承洗い出す作業がなされ、「論争」、「奇跡行為」、「伝説」などの教団の「生活の座Sitz im Leben)」のどこにその伝承が位置づけられるかを明らかにすることで、イエス歴史的実像に関する伝承成文化以前の歴史価値決定しようとしたのであるブルトマン師事した上述エルンスト・ケーゼマンもまた師同様、「宣教キリスト」から出発した。ケーゼマンはしかしパウロが「宣教キリスト」のなかに「書簡」という文学スタイル神学的内容盛りこんでいったのに対し福音記者たちはどうして、同じ「宣教キリスト」に「福音書」という文学スタイル通して史的構成試みたのかという問題提起をおこなっている。それに対するケーゼマン自身答えは以下のようなものであったヨハネ場合例外属するが、福音記者マタイマルコルカは、すでにイエス語録伝承担い手となった人びと信仰のなかにみられる霊的熱狂主義」と対決するために「福音書」という文学形式採用した。つまり、霊的熱狂主義者たちは、天に召されたキリストとしてのイエスとかれら自身とを「霊的に同一境地達しよう専心して歴史超越ないしは歴史性捨象するという傾き強かったのに対し福音記者たちは、十字架刑極限達したイエスの生」を描いていくことで、イエス歴史性確保しようとした。それに対しパウロ霊的熱狂主義者との書簡交換において、熱狂主義者掲げる「栄光キリスト」に対峙するため、「十字架キリストとしての宣教キリスト」を自らの立場として提示した。 ケーゼマンに似た立場から、ブルトマン学派のなかでいちはやくナザレのイエス」を公表したのがギュンター・ボルンカムGünther Bornkammであった。ボルンカム著『ナザレのイエス』の初版1956年ドイツシュトゥットガルト公刊されている。 その後、ディベリウスやブルトマンによってはじめられた「様式史研究」をさらに発展させた新たな試みが、1960年ハンス・コンツェルマンHans Conzelmann)らによって始められた。この研究を「編集史研究(Redaktionsgeschichte)」と呼びそれぞれの福音書どのように編集されたか(編集句)を想定することで、それぞれの福音記者思想的傾向文書成立の歴史背景による文書特性、および編集方法特異性明らかになる主張し、それらの福音書ごとの特性傍証として、歴史的なイエス実像に迫る足がかりにしようとする日本においても、同様の研究荒井献田川建三らによって進められている。 一方1980年代以降福音書原資料として想定されるQ資料仮説」にもとづき終末論イエス思想とは考えずイエスキュニコス派犬儒学派)的な知恵教師とみなすバートン・L・マックなどの研究者あらわれ一定の支持集めている。 これらの議論の経緯からもわかるとおり、「史的イエス」研究は、基本史料たる福音書そのもの歴史的な価値をどう評価するかに大きく左右されている。また同じ研究手法採用しても、個々語句歴史的評価研究者によって異なるため、研究者ごとに結論大きく異な場合が多い。さらに日本における編集史研究においてはQ資料存在による「二資料仮説」を前提とした議論主流であるのとは対照的に欧米においては、『マルコ福音書』の先行性を否定したり、Q資料存在そのもの強く反対する「史的イエス」研究根強く存在していることには、特に注意要する

※この「ブルトマン以後」の解説は、「ナザレのイエス」の解説の一部です。
「ブルトマン以後」を含む「ナザレのイエス」の記事については、「ナザレのイエス」の概要を参照ください。

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