ショパン:フーガ イ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ショパン:フーガ イ短調 | Fugue a-Moll KK.IVc/2 | 作曲年: 1841?年 出版年: 1898年 初版出版地/出版社: Leipzig |
作品解説
1827年ごろまたは1841年頃の作品とされている。出版は、ショパンの死後、1898年になされた。
ショパンがバッハを敬愛していたことはよく知られており、数多くの作品に対位法的な手法が見られる。しかし、2分の2拍子のイ短調で書かれ、2声によるこのフーガは、ショパンの諸作品の対位法的な箇所に比べ、比較的簡素な構造をもつことから、弟子の教育のために書かれた作品か、もしくは若いときの習作と考えられている。主題は、属音から主音へと完全4度上行する旋律で開始するため、作曲にあたっては、「変応」が要求される。また、主題の各小節に半音階的な動きが少なくとも1つ見られることは、バッハのフーガを思い返すと、興味深いことに感じられる。
バッハ:フーガ イ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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バッハ:フーガ イ短調 | Fuge a-Moll BWV 947 | 出版年: 1847年 初版出版地/出版社: Peters |
作品解説
19世紀の出版譜(ライプツィヒのペータース社によるバッハ鍵盤作品全集、グリーペンケルル校訂、1847年刊)より古い資料がいっさい失われているため、真贋が疑われる作品。初版となった校訂譜は、フォルケル所蔵の手稿譜に基づいて作られた。
資料状況からバッハの真作であることを証明するのはきわめて困難である。が、様式や書法が単純である、ということは偽作の決定的な証拠にはならない。「フーガ」というタイトルをはずしてみれば、《カプリッチョ》BWV993などと構造上の類似点が見出せるからである。また、八分音符の連打で上行する主題はオルガン用の《幻想曲》BWV571ときわめてよく似ており、曲の後半で平進行や伴奏風の和音が多用されるところも、共通している。
この曲には対比的な3種の動機が見出せる。主題の始まりを確実に知らせる八分音符の同音連打、回音を連ねて徐々に上行・下行する十六分音符、そしてダイナミックな分散和音である。分散和音は曲の終盤にようやく現れる。すると、それまで足踏みしながら少しずつ進んできた音楽が一挙に広がりを持って流れ出す。やがて伴奏も、それまでの楔のトゲのような前打音を吸収して、滑らかな四分音符の連結に昇華される。(このとき特に現代のピアノでは、和音が鋭く、あるいは重くならないよう注意しなければならない。)
フーガとしてみればこのような構成はあまりに単純に過ぎるのだが、闊達なリズムをよく生かした簡潔で愛らしい作品である。
バッハ:フーガ イ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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バッハ:フーガ イ短調 | Fuge a-Moll BWV 958 | 作曲年: 1710?年 |
作品解説
後代の資料のみによる伝承と、やや拙い音楽内容から、疑作とされている。
主題は同音反復とテンポの違う3つの動機を含む。こうした主題は、聴き手にとっては逃すことのない判りやすいもの、作曲家にとっては多声部との組み合わせが容易で扱いやすいものとして、古いフーガの教程が理想的主題と教える種類のものである。しかし、この作品全体の響きは古風と言うよりはむしろ、ヘンデルのような明るい柔軟性をも備えて、バッハよりやや後の時代の音楽を思わせる。また、声部書法が厳格に守られず、4つめの声部が処々に現れては消えてしまう。さらに、バッハの円熟期のフーガに必ず現れる中間の完全終止は、この曲では全体の5分の4を過ぎたところでようやく発生する。しかもG-Durという遠隔の調であるので、残り12小節で主調へとうまくまとめるには、やや展開を急がねばならなくなった。
バッハの他の作品と比べてみると、摸続進行や平進行、単純な反復が目立つ。真の作者は明らかでないが、おそらくそれはJ. S. バッハではない。とはいえ、ここにはバッハのあまりに精緻なフーガ作品にないのびやかさと、氾濫する常套句ゆえの安心感とがある。演奏技術をそれほど要求しないので、フーガの練習用としても親しみやすい作品である。
バッハ:フーガ イ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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バッハ:フーガ イ短調 | Fuge a-Moll BWV 959 | 作曲年: 1710?年 |
作品解説
これがバッハの作ではあり得ないことは音楽内容から明らかである。しかし、この作品を音楽的に「拙い」と断定するのは、必ずしも正しくない。〈フーガ〉としてみれば確かに対位法的展開はおろか、声部書法もままならないようであるし、ポリフォニーとは相容れないような三和音の連続や摸続進行などを多用する。そもそも、主題からして対位法的展開に向いているとは言い難い。
しかし、フーガ主題が率いる各セクションのまとまりは明確であり、結部で次の主題の入りを準備する。その和声進行や音域変化の緊張感はドラマティックですらある。この作品はフーガというよりはむしろ、フーガ風書法を用いた小品、というべきであろうし、そのようにみれば、各部であっさりと使い捨てされる音型は――展開が足りないのではなく――むしろ創造力に富んでいるということもできよう。
「フーガ イ短調」の例文・使い方・用例・文例
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