ラヴィーナ:バラード
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ラヴィーナ:バラード | Ballade Op.44 | 出版年: 1859年 初版出版地/出版社: Meissonnier |
作品解説
BALLADE Morceau de Caractère
変ホ短調という調性を用い、暗い情熱をにぎらせるこのバラードは、平明で快活なピアニズムを特徴とするラヴィーナの作品中の異色作といえる。劇的かつ構造的な名作である。
1859年メイソニエール(Meissonnier)社刊。(執筆者不詳)
作曲家についての解説で、ラヴィーナの音楽を「光と生の力強さに満ち溢れている」と形容したが、この中期の大作《バラード》に限っては著しい例外で、半音階が多用され薄暗い雰囲気をまとっている。その意味で、この作品は、アポロン的な気質をもつラヴィーナらしからぬショパン的作品といえるが、彼特有の楽構築性と引き締まったピアニズムはこの曲にはっきりと見て取ることができる。冒頭がオクターヴのユニゾンで始まるのはショパンの一連の《バラード》に従っている。一方、低音を重視し、内声を和音連打によって埋めることで重厚でシンフォニックな音響を作り出す手法は同時期の他の作曲家の作品にもしばしば見られる特徴で、例えば序奏の後に現れる主題の伴奏づけなどは、アルカンが1857年に出版した《全短調による12の練習曲》作品39の第4番〈交響曲〉第1楽章とよく似ている。楽曲は大きく三部分に分けられる。
|| A (es-Ges-es) || B (Es) || 経過部 (E-Es, etc.) || A’ (es) || Coda ||
中間部Bでは冒頭の低音主題が高音域で同主長調によって提示されるが、この調性の劇的な対比は、それまでの暗闇から光がさすような印象を与える。調性、音量、書法の対比によって生み出されるこの種のドラマチックな語り口は、ラヴィーナならではの美点である。
ドビュッシー:バラード(スラヴ風バラード)
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ドビュッシー:バラード(スラヴ風バラード) | Ballade(Ballade slave) | 作曲年: 1890年 出版年: 1891年 初版出版地/出版社: Choudens |
作品解説
アンダンテ・コン・モートの4分の4拍子。5小節の序奏において、主要主題が歌われる。多声的な右手に、細かい音価の左手が伴う。ピウ・モッソの部分も、この主要主題に基づいて構成されている。但し、ここでは調が変えられている。このようにして、比較的長い間にわたって主要主題による音楽が展開された後、ポコ・ア・ポコ・アニマートで新たな音楽の素材が提示される。そして、主要主題が回帰された時には、終結部分にとりかかり始めており、コラールを基調とした終結部分により曲を閉じる。
バラード
フォーレ:バラード 嬰ヘ長調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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フォーレ:バラード 嬰ヘ長調 | Ballade Op.19 |
作品解説
アンダンティーノ・カンタービレの嬰ヘ長調、4分の4拍子で開始するこの作品は、1879年に作曲され、翌年出版された。この作品は、1881年にリストのすすめによるとされる管弦楽を伴うピアノの版も出版されている。また、3つの部分が有機的に関連付けながら主題の変容の過程を経る手法がとられていることからも、リストと結び付けられることがある。
作品の全体を通して、テンポを初めとした楽想表記の変化が目まぐるしい。そこには、変更を表わすメトロノーム記号に「rit.」等の変化を表わすものも加わっている。このようなテンポの変化を大きく捉えると、冒頭のアンダンティーノ・カンタービレ→アレグロ・モデラート→アンダンテ→アレグロ→アンダンテ→アレグロ・モデラートと緩急の変化がつけられていることがわかる。また、多声的な手法が特徴的である。メロディーはこの手法により巧妙に扱われ、声部の間を縫うように歌われることもあるため、これを浮き立たせるように響かせることが求められる。更に、左手が奏する低音は転調に際して重要な役割を果たす。
ちなみに、この作品はマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』に登場する架空の作曲家、ヴァントゥイユの作品のモデルとなったと言われている。
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