コンパス座とは? わかりやすく解説

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コンパス座

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/14 01:43 UTC 版)

コンパス座
Circinus
属格 Circini
略符 Cir
発音 英語発音: [ˈsɜrsɨnəs] Círcinus, 属格:/ˈsɜrsɨnaɪ/
象徴 製図用のコンパス[1]
概略位置:赤経  13h 38m 43.2s -  15h 30m 21.5s[1]
概略位置:赤緯 -55.44° - -70.62°[1]
広さ 93平方度[2]85位
バイエル符号/
フラムスティード番号
を持つ恒星数
9
3.0等より明るい恒星数 0
最輝星 α Cir(3.19[3]
メシエ天体 0
隣接する星座 ケンタウルス座
はえ座
ふうちょう座
みなみのさんかく座
じょうぎ座
おおかみ座
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コンパス座(コンパスざ、Circinus)は、現代の88星座の1つ。18世紀半ばに考案された新しい星座である。この星座のモチーフは、製図用具のコンパス(両脚規)であり、方位磁針ではない[1][4]。日本では、星座の全域を見ることができない。全天で4番目に小さな星座で、明るい恒星もない。

主な天体

恒星

2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) が認証した固有名を持つ恒星は1つもない[5]

星団・星雲・銀河

ハッブル宇宙望遠鏡が撮像したコンパス座銀河。

由来と歴史

コンパス座は、18世紀中頃にフランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユによって考案された。ラカイユが考案し現在も使用されている14の星座の中では最も小さい[4]

1756年に刊行された『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載されたラカイユの星図の中で、フランス語で「le Compas」という名称が描かれたのが初出である[4][13][14]。ラカイユの死後1763年に刊行された著書『Coelum australe stelliferum』に掲載された第2版の星図では、ラテン語化された「Circinus」と呼称が変更されている[4][15]。ラカイユは、みなみのさんかく座を測量機器に見立て、じょうぎ座と共に製図用具が並ぶように星図を描いたとされる[4]

1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Circinus、略称は Cir と正式に定められた[16]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。

呼称と方言

日本では当初「両脚規」という訳語が充てられていた。これは、1910年(明治43年)2月に刊行された日本天文学会の会誌『天文月報』の第2巻11号に掲載された、星座の訳名が改訂されたことを伝える「星座名」という記事で確認できる[17]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも引き継がれ、「両脚規(りゃうきゃくき)」として掲載された[18]

これに対して、天文同好会[注 1]山本一清らは独自の訳名を用いた。天文同好会の編集により1928年(昭和3年)4月に刊行された『天文年鑑』第1号では、Circinus に「コンパス」という訳が充てられ[19]、以降の号でもこの訳名が継続して用いられた[20]

1944年(昭和19年)に天文学用語が見直された際も引き続き「両脚規」が使われることとなった[21]が、戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会は「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[22]とし、このとき Circinus の日本語の学名は「コンパス」と改められた[23]。これ以降は「コンパス」という学名が継続して用いられている。

脚注

注釈

  1. ^ 現在の東亜天文学会

出典

  1. ^ a b c d The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年1月9日閲覧。
  2. ^ 星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
  3. ^ a b c “alf Cir”. SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年1月9日閲覧.
  4. ^ a b c d e Ridpath, Ian. “Circinus”. Star Tales. 2025年8月13日閲覧。
  5. ^ IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2023年1月9日閲覧。
  6. ^ “bet Cir”. SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月10日閲覧.
  7. ^ Smith, L. C.; Lucas, P. W. et al. (2015-10-30). “Discovery of a brown dwarf companion to the A3V star β Circini”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (Oxford University Press (OUP)) 454 (4): 4476-4483. arXiv:1509.09226. Bibcode2015MNRAS.454.4476S. doi:10.1093/mnras/stv2290. ISSN 0035-8711. 
  8. ^ “gam Cir A”. SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月11日閲覧.
  9. ^ “gam Cir B”. SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月11日閲覧.
  10. ^ “gam Cir”. SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月11日閲覧.
  11. ^ “Circinus Galaxy”. SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月11日閲覧.
  12. ^ 超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く』(プレスリリース)2018年11月20日https://alma-telescope.jp/news/press/agn-2018112023年1月11日閲覧 
  13. ^ Ridpath, Ian. “Lacaille’s southern planisphere of 1756”. Star Tales. 2023年1月7日閲覧。
  14. ^ Histoire de l'Académie royale des sciences” (フランス語). Gallica. 2023年1月7日閲覧。
  15. ^ Coelum australe stelliferum / N. L. de Lacaille”. e-rara. 2023年1月7日閲覧。
  16. ^ Ridpath, Ian. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. Star Tales. 2023年1月5日閲覧。
  17. ^ 星座名」『天文月報』第2巻第11号、1910年2月、11頁、 ISSN 0374-2466 
  18. ^ 東京天文台 編『理科年表 第1冊丸善、1925年、61-64頁https://dl.ndl.go.jp/pid/977669/1/39 
  19. ^ 天文同好会 編『天文年鑑』1号、新光社、1928年4月28日、3-6頁。doi:10.11501/1138361https://dl.ndl.go.jp/pid/1138361/1/7 
  20. ^ 天文同好会 編『天文年鑑』10号、恒星社、1937年3月22日、4-9頁。doi:10.11501/1114748https://dl.ndl.go.jp/pid/1114748/1/12 
  21. ^ 学術研究会議 編「星座名」『天文術語集』1944年1月、10頁。doi:10.11501/1124236https://dl.ndl.go.jp/pid/1124236/1/9 
  22. ^ 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。 ISBN 4-8181-9404-2 
  23. ^ 星座名」『天文月報』第45巻第10号、1952年10月、13頁、 ISSN 0374-2466 


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