タイ・カダイ語族とは? わかりやすく解説

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タイ・カダイ語族

(クラ・ダイ語族 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/16 09:42 UTC 版)

タイ・カダイ語族
話される地域 中国南部、海南島
インドシナ, 北東インド
言語系統 世界の基本となる語族の一つ。オーストロネシア語族やシナ・チベット語族との類似点が提唱されている。
下位言語
ISO 639-2 / 5 tai
タイ・カダイ語族の分布図

タイ・カダイ語族(タイ・カダイごぞく、Tai-Kadai languages)またはクラ・ダイ語族(クラ・ダイごぞく、Kra-Dai languages)は、東南アジアタイラオスベトナムミャンマー)、北東インドアッサム州アルナーチャル・プラデーシュ州)、中国西南部及び華南に分布する語族である[1][2]。国家の公用語となっているタイ語ラーオ語のほか、多数の少数民族言語(チワン語シャン語タイー語トン語ラギャ語リー語など)が含まれる。

基本的に単音節的孤立語声調言語であり、語順はSVO型で、修飾語は被修飾語のあとにつくのが普通である。これらの性質は中国から東南アジア大陸部の広い範囲の言語と共通するが、これは系統的な性質というより、地域特性(言語連合)と考えられる[3]

名称

クラ・ダイ語族

クラ・ダイ」(Kra-Dai)という名称は、タイの言語学者ウィーラ・オスタピラート(Weera Ostapirat)が提唱したものである[4]。オスタピラートは2000年の論文において、「クラ(Kra)」をクラ諸語における自称祖形としている[5]。一方、「ダイ(Dai)」は、タイ系民族の自称の祖形である[注 1]

クラ・ダイ語族は、クラ諸語タイ諸語の他にも、リー諸語オンベ諸語カム・スイ諸語英語版といった下位語群を含む。

それにもかかわらず、オスタピラートは「クラ・ダイ」を語族全体の名称として採用した。これはシナ・チベット語族モン・クメール語派といった他の言語群の命名法に倣ったものである[注 2]。タイ諸語は広西からアッサム州に及ぶ広大な地域に分布し、タイ語ラーオ語等の比較的メジャーな言語を含む。その話者であるタイ系民族は、有史以来、ラーンナーラーンサーンシップソーンパンナーアーホームといった政体を築いてきた。こうしたタイ諸語に次ぐ地理的規模を備えているのがクラ諸語であり、その使用地域は貴州省からベトナムソンラ省に及ぶ[7]。これに対し、リー諸語とオンベ諸語の地理的分布は海南省に限られている。なお、カム・スイ諸語も中国西南部及び華南の比較的広い地域で話されているが、系統的にはタイ諸語とかなり近縁であるという[7][注 3]。「クラ」が「ダイ」と並んで語族の名称に選ばれたのは、以上のような事情による。

オスタピラートの提案以降、東南アジア諸言語の専門家の間では、「クラ・ダイ」が「タイ・カダイ」に替わる呼称として広く用いられるようになった[8][9][10][11][12]

タイ・カダイ語族

エスノローグGlottologをはじめ、多くの文献では、「タイ・カダイ」(Tai–Kadai)という名称も依然として使用されている[6][13]。ただし、オスタピラートはこの呼称が問題含みであるとして、「クラ・ダイ」に置き換えるよう推奨している[4][14]

カダイ諸語」(Kadai)はもともと、海南省のリー語に加え、中国西南部広西及びベトナム北部のコーラオ語英語版プービャオ語英語版ラチ語英語版から成る語群として提唱された[15]。しかし、この区分は現在では受け入れられていない[13]

「カダイ」という名称にはその他にも、文献によって指す対象が異なる、タイ語の話者にとっては奇妙に聞こえるといった問題が存在する[6]

ベネディクトの「カダイ諸語」

アメリカの言語学者ポール・K・ベネディクトは、1942年の論文の中で、リー語(Li)と、後にオスタピラートがクラ諸語として分類したコーラオ語(Kelao)、プービャオ語(Laqua)、ラチ語(Lati)から成る言語群を「カダイ」と命名した。「カ(ka-)」はコーラオ語とプービャオ語でそれぞれ「人」を意味するkătsükădăŭに、「ダイ(dai)」はリー族の自称の一つに由来する[15]

さらにベネディクトは、「カダイ諸語」とタイ諸語(Thai)[注 4]及びインドネシア諸語(Indonesian)[注 5]の近縁性を指摘した[注 6][15]。ベネディクトによると、「カダイ諸語」の数詞は、今日で言うオーストロネシア語族の言語と類似している[21]

広東語、タイ語、「原インドネシア語」[21]、及び「カダイ諸語」[21]の数詞
数詞 広東語 タイ語 原インドネシア語 プービャオ リー(南) リー(北) コーラオ(南) コーラオ(北) ラチ
jat1 หนึ่ง (nʉ̀ng) *‘it'a‘ tiă ü tsi si tšăm
ji6 สอง (sɔ̌ɔng) *duwa' δe dau trau δü so fu
saam1 สาม (sǎam) *təlu‘ tău su su da si
sei3 สี่ (sìi) *‘ə(m)pat pe sau so pu bu pu
ng5 ห้า (hâa) *lima‘ ma pa mlěn mbu ng
luk6 หก (hòk) *‘ənam nam nom tom tšö nang
cat1 เจ็ด (jèt) *pitu‘ mö tău t‘u t‘au δi ši ti
baat3 แปด (bpɛ̀ɛt) *walu‘ mö dü du au šiă vleu be
gau2 เก้า (gâao) *t'iwa‘ δ pöü föü ku su lu
sap6 สิบ (sìp) *puluh păt p‘uot fuot tsü beu pa

1942年当時、タイ諸語は漢語と共にシナ・チベット語族に分類するのが一般的であった[13]。しかし現在では(例えば広東語タイ語の数詞に見られるような)漢語とタイ諸語の類似は、共通の祖語ではなく、言語接触に由来するものと考えられている[22]。一方、タイ諸語とリー語、プービャオ語、コーラオ語、ラチ語の近縁性に関しては、言語学者の間で広く受け入れられている。

もっとも、コーラオ語、プービャオ語、ラチ語とリー諸語が「カダイ諸語」という一つの言語群を成すとの主張は、オスタピラートの比較言語学的な研究によって棄却されている[23]

その他の問題点

「カダイ諸語」という名称は、ベネディクトの用法とは別に、クラ・ダイ語族全体に対して用いられる場合もある[24][25]。また、クラ諸語のみを指して「カダイ諸語」と呼ぶ場合もある[6]

なお、タイ語において、「タイ・カダイ」はไท–กะได /tʰaj˧ ka˨˩.daj˧/となる。オスタピラートによると、この術語は往々にしてタイ語話者の笑いを誘う[7]。というのも、「カダイ」は「はしご」を意味する単語[注 7]と同音になるためである。後置修飾を行うタイ語では、他のタイ系民族をTai khao白タイ英語版(タイ+白い)」、Tai dam黒タイ英語版(タイ+黒い)」のように呼称する。それゆえ、「タイ・カダイ」は「はしごタイ」のように聞こえてしまうという[26]。オスタピラートは、タイ語におけるこの語族の名称として、「クラ」と「タイ」の同根語から成るข้า–ไท /kʰaː˥˩ tʰaj˧/を推奨している[7]

カム・タイ(侗台)語族

中国出身の言語学者李方桂は、1942年から翌年にかけて貴州省スイ語英語版及びマク語英語版の調査を行い、カム・スイ諸語英語版(Kam-Sui)とタイ諸語の系統関係を比較言語学的に示した[27][13]

李が用いた「カム・タイ諸語(Kam-Tai)」という術語は、中国国内において、クラ・ダイ語族全体を指す名称として使用されている[13]。例えば、2012年に出版された中国言語地図集の第二版は、「カム・タイ語族(侗台語族)」を、「チワン・タイ語支(壯傣語支)」「リー語支(黎語支)」「カム・スイ語支(侗台語支)」「グーヤン語支(仡央語支)」の4つに大別している[28]オンベ諸語はタイ諸語と共に「チワン・タイ語支」の一部として、クラ諸語は「グーヤン語支」として分類されている。

ただし、中国国外(タイや欧米)の言語学者は、「カム・タイ」をクラ・ダイ語族の下位語群を指すのに用いている[29]。例えば、オスタピラートは、オンベ諸語、タイ諸語、カム・スイ諸語を含み、クラ諸語とリー諸語を含まない言語群を「カム・タイ」と称している[30]アメリカの言語学者ピーター・ノークエスト(Peter K. Norquest)は、クラ・ダイ語族からビャオ語英語版ラギャ語を除いた言語群の名称として「カム・タイ」を用いている[31]

その他の名称

クラ・ダイ語族に対するその他の名称としては、イギリスの言語学者ロジャー・ブレンチ英語版の用いているDaicがある[32]

中国語の文献においては、「カム・タイ諸語(侗台語系)」の他に、「チワン・トン諸語zh:壯侗語系)」という名称なども使用される[33]

分類

「歯」を意味する形式の変遷をもとにクラ・ダイ語族の分岐を描写した図。

タイ・カダイ(クラ・ダイ)語族に属する言語群としては、少なくとも、クラ諸語[注 8]タイ諸語[注 9]リー諸語[注 10]カム・スイ諸語英語版[注 11]オンベ諸語[注 12]の5つが挙げられる[35]。各語群に属する言語には、以下のようなものがある[36]

  • カム・スイ諸語英語版 (侗水語支、Kam-Sui)
    • トン語(侗語、Kam)
    • スイ語英語版 (水、Sui)
    • マオナン(毛南)語(Maonan)
    • ムーラオ(ムーラム・仫佬)語(Mulam)
    • 佯僙語 (Then)
    • 莫語(Mak)
    • 茶洞語(Chadong)
  • リー諸語 (黎語支、Hlai、Li) - (中国・海南島
    • 保定方言 (Baoding)
    • 通什方言 (Tongshi)
    • 元門方言 (Yuanmen)
    • 黒土方言 (Heitu)

ビャオ語英語版ラギャ語の系統的な位置については諸説ある[37]アメリカの言語学者ピーター・ノークエスト(Peter K. Norquest)は、語彙的改新を基に、以下のようなクラ・ダイ語族の系統樹を提唱している[2]

  • クラ・ダイ語族
    • ビャオ・ラギャ諸語(Biao-Lakkja)
    • カム・タイ諸語
      • カム・スイ諸語
      • クラ・タイ諸語(Kra-Tai)
        • クラ諸語
        • リー・タイ諸語(Hlai–Tai)
          • リー諸語
          • ベー・タイ諸語(Be-Tai)
            • オンベ諸語
            • タイ諸語

ノークエストによると、ビャオ語とラギャ語は、他のクラ・ダイ諸語から分かれ出た時期が最も早い。その次にカム・スイ諸語、クラ諸語、リー諸語が分岐し、残りの言語からオンベ諸語とタイ諸語が形成されたという。

話者数

言語名 話者数 備考
タイ語(泰語) 4600–5000万人 方言:北タイ語 600万人
ラーオ語(寮語) 約3180万人
チワン語(壮語) 1800万人
シャン語(撣語) 330万人
プイ語(布依語) 265万人
トン語(侗語) 150万人
タイー語(岱依語) 148万人
リー語(黎語) 70万人
黒タイ語またはタイ・ダム語(傣擔語)(en) 約70万人
タイ・ルー語(傣仂語)(en) 67万人
オンベ語(臨高語)(en) 60万人
タイ・ヌア語(傣哪語)(en) 36万人
スイ語(水語)(en) 34万6千人

他の語族との系統関係の仮説

タイ・カダイ語族の逆移住起源の仮説 (Blench英語版, 2018)[38]
オーストロ・タイ語族
複数の学者によってオーストロネシア語族との関連性が提示されている[39]。両語族の核となる語彙には、同根語がある。Ostapirat (2013)は両者は姉妹語であるとし[40]ロジャー・ブレンチ英語版 (2018) はオーストロネシア語族話者が台湾フィリピンから大陸に逆移住したことでタイ・カダイ語族が生じたとしている[38]
言語類型論的に、オーストロネシア語族の言語は概ね複音節的な非声調言語膠着語であり、VOS型ないしSVO型の語順である一方、タイ・カダイ語族は単音節的な声調言語の孤立語、語順はSVO型が基本である[41]。タイ・カダイ語族の類型論的な特徴は、漢語を含む東南アジア諸言語との接触を通して獲得された可能性が高い[41]
シナ・タイ語族
タイ・カダイ語族はかつて、語彙の多くが類似していることから、フモン・ミエン語族と共に、シナ・チベット語族の一員と考えられていた。しかし、それらに基礎語彙は含まれず、タイ・カダイ語族の全ての系統で見いだせるわけではないため、古い借用語と考えられている[42]
フモン・ミエン語族
Kosaka (2002)はタイ・カダイ語族とフモン・ミエン語族の関連性を論じている。加えて、オーストロネシア語族との関連性や、さらに古い祖先(東アジア祖語)についても論じている[43]
日本語族
Vovin (2014)は日本語族原郷を中国南部に想定した。Vovinは、日本祖語が単音節のSVO構文であり、タイ・カダイ語と同様の孤立語であった可能性を示す類型論的証拠を示した。ただし、これらの共通特徴は遺伝的関係ではなく、激しい言語接触によるものとしている[44]

関連項目

脚注

出典

  1. ^ *Diller, Anthony (2008). Anthony Diller; Jerry Edmondson; Yongxian Luo. eds. The Tai-Kadai Languages. p. 675 
  2. ^ a b c Norquest 2021.
  3. ^ Pittayaporn 2021, p. 434.
  4. ^ a b c d Ostapirat 2000, p. 18.
  5. ^ Ostapirat 2000, pp. 13–18.
  6. ^ a b c d Diller 2008, p. 6.
  7. ^ a b c d Ostapirat 2000, p. 19.
  8. ^ Norquest, Peter K. 2007. A Phonological Reconstruction of Proto-Hlai. Ph.D. dissertation, Department of Anthropology, University of Arizona.
  9. ^ Pittayaporn, Pittayawat. 2009. The phonology of Proto-Tai. Ph.D. Thesis, Cornell University
  10. ^ Peter Jenks and Pittayawat Pittayaporn. Kra-Dai Languages. Oxford Bibliographies in "Linguistics", Ed. Mark Aranoff. New York: Oxford University Press.
  11. ^ Baxter, William H.; Sagart, Laurent (2014), Old Chinese: A New Reconstruction, Oxford University Press, ISBN 978-0-19-994537-5. 
  12. ^ N. J. Enfield and B. Comrie, Eds. 2015. Languages of Mainland Southeast Asia: The State of the Art. Berlin, Mouton de Gruyter.
  13. ^ a b c d e Norquest 2021, p. 225.
  14. ^ Ostapirat 2000, p. 13.
  15. ^ a b c Benedict 1942, p. 576.
  16. ^ Benedict 1942, p. 578.
  17. ^ Meillet & Cohen 1924, p. 405.
  18. ^ Wulff 1942, pp. 115−138.
  19. ^ Meillet & Cohen 1924, p. 407.
  20. ^ Wulff 1942, p. 116.
  21. ^ a b c Benedict 1942, p. 582.
  22. ^ a b Chen 2018, p. 17.
  23. ^ Ostapirat 2000, p. 2.
  24. ^ Solnit, David B. 1988. "The position of Lakkia within Kadai." In Comparative Kadai: Linguistic studies beyond Tai, Jerold A. Edmondson and David B. Solnit (eds.). pages 219–238. Summer Institute of Linguistics Publications in Linguistics 86. Dallas: Summer Institute of Linguistics and the University of Texas at Arlington.
  25. ^ Edmondson, Jerold A. and David B. Solnit, editors. 1988. Comparative Kadai: Linguistic studies beyond Tai. Summer Institute of Linguistics and the University of Texas at Arlington Publications in Linguistics, 86. Dallas: Summer Institute of Linguistics and the University of Texas at Arlington. vii, 374 p.
  26. ^ Ostapirat 2000, p. 20.
  27. ^ Li 1965.
  28. ^ 中国社会科学院语言研究所、中国社会科学院民族学与人类学研究所、香港城市大学语言资讯科学研究中心 2012, p. 20.
  29. ^ Norquest 2021, p. 226.
  30. ^ Ostapirat 2000, p. 1.
  31. ^ Norquest 2021, p. 233.
  32. ^ Blench, Roger. 2008. The Prehistory of the Daic (Tai-Kadai) Speaking Peoples Archived 29 April 2019 at the Wayback Machine.. Presented at the 12th EURASEAA meeting Leiden, 1–5 September 2008. (PPT slides)
  33. ^ Norquest 2021, p. 232.
  34. ^ Norquest 2021, p. 227.
  35. ^ Ostapirat 2005, p. 109.
  36. ^ Diller 2008, p. 107.
  37. ^ Norquest 2021, pp. 227–228.
  38. ^ a b Blench, Roger (2018). Tai-Kadai and Austronesian are Related at Multiple Levels and their Archaeological Interpretation (draft). https://www.academia.edu/37593287/Tai-Kadai_and_Austronesian_are_related_at_multiple_levels_and_their_archaeological_interpretation. "The volume of cognates between Austronesian and Daic, notably in fundamental vocabulary, is such that they must be related. Borrowing can be excluded as an explanation" 
  39. ^ Sagart, Laurent (2004). “The higher phylogeny of Austronesian and the position of Tai–Kadai”. Oceanic Linguistics 43: 411–440. http://halshs.archives-ouvertes.fr/docs/00/09/09/06/PDF/THE_HIGHER_PHYLOGENY_OF_AUSTRONESIAN.pdf. 
  40. ^ Ostapirat, Weera (2013). Austro-Tai revisited. Paper presented at the 23rd Annual Meeting of the Southeast Asian Linguistics Society, 29-31 May 2013, Chulalongkorn University.
  41. ^ a b Pittayaporn 2021, pp. 433–434.
  42. ^ Ostapirat 2005.
  43. ^ Kosaka, Ryuichi. 2002. "On the affiliation of Miao-Yao and Kadai: Can we posit the Miao-Dai family." Mon-Khmer Studies 32:71-100.
  44. ^ Vovin, Alexander (2014). Out Of Southern China? --some linguistic and philological musings on the possible Urheimat of the Japonic language family-- XXVIIes Journées de Linguistique d'Asie Orientale 26-27 juin 2014.

注釈

  1. ^ タイ人(Thai)の自称であるไทย /tʰaj˧/は、「ダイ」の*d-が無声有気音に変化したものである(アステリスクは再構形を表す)。一方、シャン人タイー族の自称においては、*d-が無声無気音に変化している[4][6]
  2. ^ 「[クラ・ダイという]名称は、語族の中の大言語2つを列挙する慣行に従っている。そこで選ばれる2つは時として、語族全体を代表しているかのような印象を与えるほど言語的な距離も大きい。('The term follows the popular tradition of juxtaposing two big language members of the family, which sometimes are also linguistically distant enough from each other to give the feel of the whole family [...].')」[4]
  3. ^ ただし、2021年に発表されたピーター・ノークエスト(Peter K. Norquest)の仮説によると、カム・スイ諸語よりもむしろクラ諸語の方がタイ諸語との系統的距離が近い[2]
  4. ^ ベネディクトは狭義のタイ語を「シャム語(Siamese)」と呼称している[16]。ここでは無気音の'Tai'でなく、有気音の'Thai'が、シャム語、シャン語、カムティ語、アーホーム語等を含むタイ系言語の総称として用いられている。
  5. ^ ここでの'Indonesian'は、第二次世界大戦後に独立したインドネシア共和国国語であるインドネシア語を指すわけではない。1942年当時、「マレー・ポリネシア諸語」(=今日のオーストロネシア語族)は、「インドネシア諸語」「メラネシア諸語」「ミクロネシア諸語」「ポリネシア諸語」に大別するのが定説であった[17][18]。「インドネシア諸語」はジャワ語バリ語アチェ語マレー語など、当時のオランダ領東インドで話された言語のみならず、台湾諸語フィリピン諸語マダガスカルマラガシ語などを含んでいた[19][20]
  6. ^ クラ・ダイ語族とオーストロネシア語族の系統関係をめぐる議論については、#他の語族との系統関係の仮説を参照。
  7. ^ กระได /kra˨˩.daj˧/。現代のタイ語において、二重子音のkr-は単にk-とも発音される。
  8. ^ 中国のコーラオ族の言語を含む。
  9. ^ 中国のチワン族タイ族プイ族の言語を含む。
  10. ^ 中国のリー族の言語を含む。
  11. ^ 中国のトン族(カム族)、スイ族マオナン族ムーラオ族の言語を含む。広東省懐集県ビャオ語英語版や、広西・金秀ヤオ族自治県ラギャ語も、カム・スイ諸語に分類されることがある[34]
  12. ^ 中国政府の民族識別工作において、オンベ諸語の話者(臨高人)は「漢族」として分類されている[22]

参考文献

  • Chen, Yen-ling (2018). Proto-Ong-Be (Ph.D. dissertation). University of Hawaii at Manoa.
  • Diller, Anthony (2008). “Introduction”. In Anthony Diller; Jerry Edmondson; Yongxian Luo. The Tai-Kadai Languages. pp. 3-8 
  • Li, Fang-kuei (1965). “The Tai and the Kam-Sui languages”. Lingua 14: 148–179. 
  • Norquest, Peter (2021). “Classification of (Tai-)Kadai/Kra-Dai languages”. In Sidwell, Paul; Jenny, Mathias. The Languages and Linguistics of Mainland Southeast Asia.. De Gruyter. pp. 225-246. doi:10.1515/9783110558142. ISBN 978-3-11-055814-2 
  • Ostapirat, Weera (2005). “Kra-Dai and Austronesian: Notes on phonological correspondences and vocabulary distribution”. In Sagart, Laurent; Blench, Roger; Sanchez-Mazas, Alicia. The Peopling of East Asia: Putting Together Archaeology, Linguistics and Genetics. London: Routledge Curzon. pp. 107–131 
  • Pittayaporn, Pittayawat (2021). “Typological profile of Kra-Dai languages”. In Sidwell, Paul; Jenny, Mathias. The Languages and Linguistics of Mainland Southeast Asia.. De Gruyter. pp. 433-468. doi:10.1515/9783110558142. ISBN 978-3-11-055814-2 
  • Wulff, Kurt (1942). Über das Verhältnis des malayo-polynesischen zum indochinesischen. Kopenhagen: Ejnar Munksgaard 
  • 中国社会科学院语言研究所、中国社会科学院民族学与人类学研究所、香港城市大学语言资讯科学研究中心, ed (2012) (中国語). 中国语言地图集(第2版)少数民族语言卷. 商务印书馆 




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