キノコ狩り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/27 10:11 UTC 版)
同定会は、日本で主に秋のキノコ採集シーズンにおいて、各地域のキノコ愛好家団体によって開催されている。公設試験研究機関や大学のキノコ関連の研究室が開催している場合もある。同定会に参加すれば、判定するための試薬や顕微鏡といった資材が利用できる上、複数の経験者により的確な判断が得られることなど、安全さと正確さを確保することができる。また、自分で採集したキノコ以外を観察することもできるので、単なる食・毒の判断にとどまらずキノコ全般や現地の自然環境についての知識を養うことができる。 同定会の前に採集会がセットされているのが通例で、団体で行動することにより山中でのトラブルを避けることができる。山中のトラブルといえば転落事故や熊・イノシシなどによる被害をイメージしがちだが、他には、他人の私有地の中に踏み込み、そこでキノコを採取したことによる財産権の問題である。特に商品価値の高いマツタケが生育する場所では、マツタケの採取権と土地の所有権とが別に管理されている場合もあり、特に注意しなければならない。また、特に狭い地域に多人数が押し寄せてキノコを探しまわり踏み荒らすと発生環境が攪乱され、キノコの発生が減少するにとどまらず、そこの生態系に強い損害を与える危険性がある。 キノコを収穫するだけでなく菌糸体そのものに傷を付けたり好適な基物(切り株・落ち葉など)を破壊したりすると、来シーズンの収穫見込みが減るだけではなく、その区域の自然の多様性を損なうおそれがある。なんでもかんでも引っこ抜くというのは慎むべきである。逆に胞子をまいて食用キノコを増やそうとする行為も見受けられる。これは明確に有害とは言えないが、効果が疑問であり、自然のバランスを崩す行為である。また、人間にとって危険な毒キノコを除去するような行為は有益なようで実際は単なる自然破壊に過ぎない。 キノコによる中毒が疑われる状態になった場合には、食べたものを吐かせ、ただちに医師の診察を受けなければならない。その際には、食べたキノコの残りがあれば持っていったほうがよい。どのようなキノコによる中毒かがわかったほうが適切な治療がしやすいからである。調理したものの残りや吐いたものの中にも手がかりがある場合がある。キノコの種類によっては、摂取から発症までに数日を要するものもある。医師の診察を受ける際には「4日前に山で採集したキノコを食べた」と、より詳細を伝えることで救命率が改善される場合がある。 ベニテングタケの毒性はさほど強くない(近縁種には猛毒キノコがある)。昭和中期の資料では、日本国内でも採れる毒キノコであるベニテングタケを、猛毒あるいは致死性の高い毒キノコと表記しているものがあった。ベニテングタケは他の食用、毒キノコに比べて圧倒的に目立ちやすく、誤食した場合の症状が幻覚性であること、長野県のごく一部にて塩漬けにして食用とされる事例が存在する(詳細はベニテングタケを参照)ことを考慮し、あえて毒性を強調して書くことにより事故を予防したものと見られる。ただし、それによってキノコの色彩の派手さこそが毒性の強さの指標となるという誤った認識を助長し、地味な色彩の毒キノコへの警戒心を弱めてしまった側面は否めない。最近のキノコ類の図鑑や資料において、ベニテングタケについてこのような記述はなく、「毒キノコの中では比較的毒性が弱い」というような正確な記述に置き変っている。猛毒キノコには地味なものも派手なものもあるが、中毒者数から見た日本の代表的な毒キノコはツキヨタケであり、その色彩は地味である。 民族学的には、ベニテングタケをシャーマニズムの幻覚剤などとして用いた仮説が知られている。マジックマッシュルームと呼ばれる幻覚性のあるシロシビン含有キノコを摂取して楽しんだ時代もあったが、マジックマッシュルームでは日本のように法律で禁止された国も出てきた。法令上許可を得ていない者が所持していた場合は罰せられる。こうした文化は伝統的に健康上、精神医学上のデメリットを最小限にするような慎重な使用法の経験の蓄積の上に成り立っていることを忘れてはならない。 キノコ狩りで山間部へ立ち入る際には、キノコに夢中になるあまり、方向を見失って遭難する例は多い(山菜取りの項も参照)。これは日本に限ったことではなく、イタリアなど海外でも見られる事故である。
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