ガッゲラ丘とマロフォロスの聖域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/12 00:44 UTC 版)
「セリヌス」の記事における「ガッゲラ丘とマロフォロスの聖域」の解説
アクロポリスからモディーネ川に沿って西の丘(ガッゲラ丘)に向かう道がある。 ガッゲラ丘の上には、1874年から1915年にかけて発掘された、豊穣の女神デメテールに捧げられた非常に古い聖域があり、現在でも上空からのでその痕跡がはっきりと確認できる。この複合体の保存状態は様々であるが、紀元前6世紀に丘の斜面に建造されており、おそらくはマニカルンガのネクロポリスが作られる以前には葬儀場所として用いられていたと思われる。当初、この場所には建物はなく、宗教儀式の祭壇として使用された広場であった。その後神殿が建てられ、周囲を高い壁で囲って、聖域(テメノス)に転換された。テメノスは60 x 50メートルの長方形の壁で囲われた領域で、東側にイン・アンティス形式の長方形のプロピュライア(紀元前5世紀に建築)があり、そこから内部に入るようになっていた。プロピュライアの北側、壁の外側には壁に沿って巡礼者のための椅子がある長い屋根付きポルチコ(ストア)があった。テメノス内部には、中央に大きな祭壇(16.3 x 3.15メートル)があり、その上には生贄の骨等の灰が高く積みあがっていた。テメノスの奥側(西側)にはメガロン形式(20.4 x 9.52メートル)のデメテール神殿があり、クレピドーマ(en、階段状の基壇)や円柱は無いものの、プロナオス、ナオス、後部に壁龕を持つアディトンを有する。プロナオスの北側には長方形のサービスルームが取り付けられている。神殿の南側には、用途不明の正方形および長方形の構造物がある。祭壇と神殿の間には、近くの泉から聖域に水を供給るための、岩を彫った用水路が北側から流れている。用水路と祭壇の間に正方形の窪みがある。壁の北側には、後世に建てられた、テメノスの外側と内側が開放された二つの部屋を持つ建造物があり、これが第二の入り口として機能していた。南西方向に拡張部があり、その端には前アルカイック期の祭壇の残存が認められる。南側の壁は斜面の地盤沈下に対応するために何度も補修されている。プロピュライアの南側、即ちテメノスの南東部にはそれと隣接してヘカテー女神専用のテメノスがあった。このテメノスは正方形で、入り口近くの東の角に神殿があり、南西の角には目的不明の舗装された正方形のスペースがある。 北側15メートルには、ゼウス・メリキオス(シケリアの地方信仰で、優しいゼウスという意味)およびパシクラテイア(ペルセポネー)に捧げられた別の正方形(17 x 17メートル)のテメノスがあり、かなりの遺物が残っているが、紀元前4世紀末に建てられた建造物を正確に推定するのは困難である。周囲を囲む壁と、様々な種類の支柱が両側にあり、小規模(5.22 x 3.02メートル)のイン・アンティス形式のプロスタイルを持った神殿が後方にある。この神殿の支柱はドーリア式であるが、エンタブラチュアはイオニア式である。 テメノスの外部、西側には、上部に二人の神(一人は男神、もう一人は女神)が薄く彫られた小さな石碑が多くある。それらに沿って、灰や奉納物が発見されているが、これはギリシアの宗教であるクトニオス(en、冥界)とカルタゴの宗教が融合していた証拠である。 マロフォロスの聖域からは非常に多くの遺物が発見されているが、それらには神話のシーンが彫刻されたレリーフ、紀元前7世紀から5世紀にかけての約12,000点のテラコッタ製の奉納用の人形、デメテールとおそらくタニトを描く大きな胸像型の香炉、大量のコリント式陶器、聖域のの入り口にあるペルセポネーの略奪を描いたレリーフ、等があり全てパレルモの博物館に保管されている。キリスト教関連の遺物、特にXPのモノグラム(コンスタンティヌス1世が使い始めたもので、ギリシア語でキリストの最初の2文字)が描かれたランプは、この聖域跡に3世紀から5世紀のにキリスト教の宗教コミュニティが存在していたことを証明している。 ガッゲラ丘をもう少し登ると、マロフォロスの聖域に水を供給していた泉がある。その50メートル下流には、一時は神殿と思われていた(神殿Mと呼ばれていた)建物があり、実際には大きな噴水であった。長方形(長さ26.8メートル、幅10.85メートル、高さ8メートル)の建物で、正方形のブロックで建築され、内部には貯水槽があり、支柱のあるポルチコが地上から4段高くなった吐水部分を覆っており、前方には大きな舗装部分があった。発見された建築用テラコッタから、建物は紀元前6世紀半ばのドーリア式のものでると思われる。アマゾーン戦争を描いたメトープの破片が付近で発見されているが、これはこの建物のものではない。この建物のメトープはもっと小さく、フラットである。聖域から数百メートル離れた所に別のメガロンが、最近発掘されている。
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