イメージと個性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 05:47 UTC 版)
キャリアを通じ、ヴェレスがスクリーン上で演じ続けた激しい気性を持つ情熱的で奔放な女性像は、スクリーン外のヴェレス自身の個性と密接に結びついている。マスコミはしばしば彼女を「メキシコのスピットファイア」、「メキシコのイットガール(英語版)」、「メキシコの子猫」などと呼んだ。彼女は意識的に「お祭り騒ぎのルーペ」を売り込む選択をしたが、自身が自由奔放だという見解は否定した。1939年のインタビューで「…私が幸福な子犬のように感じていたら、幸福な子犬のようにくねくねします。頭に来ている時は叫びます。恋をしている時は歌います。愛し合っている時は恍惚状態で叫びます。これは自由奔放ですか? いいえ! これがルーペであるという事なんです!」と語っている。スクリーン外の行状もスクリーン上の人格と彼女自身の人格の境界を曖昧に見せる要因であった。彼女の死後ジャーナリストのボブ・トーマス(英語版)は、ヴェレスが派手な服を着て可能な限りの大騒ぎをして「ハリウッドシーンで活気のある存在」であった事を回想した。毎週金曜日の夜ボクシングの試合を観戦しにハリウッド・レギオン・スタジアムに出向き、リングサイドの客席の上に立ち、ボクサーに向かって叫んでいた。無防備で目立ちたがりなイメージが広まる要因となったエピソードは事欠かない。パーティーで踊っている時によくスカートを持ち上げ、しかも下着を着けていない事を人々に見せびらかしていたという証言がある。『Hot-Cha!』で共演したバート・ラーは、ヴェレスが衣裳が窮屈だと言って、裸でリハーサルを行なっていたと語った。Photoplay誌の記者ルース・ビアリーは女優の自宅を訪ねた時「鏡の前で誇示するヴェレスを目撃した。…小さな子供が仲間に見せつけるのと同じくらい公然と、無意識に自分に自分自身を見せていた」と後日書いた。文書に裏付けられた彼女の癇癪や嫉妬も『Mexican Spitfire』の人物像を永続させる要因となった。しばしば大荒れとなる恋愛模様もタブロイド紙のネタとなり、彼女の経歴に影を投げかけた。ヴェレスはこれらの話を差し止めようとは全くせず、自身の恋愛話を語って聞かせるために定期的にゴシップ欄記者に連絡を入れていた。悪名高い気性の記録として度々繰り返される逸話には、当時の恋人ゲイリー・クーパーを口論の度にナイフで追い回し、ある時は数針縫うほど切り付けたという物がある。彼らの関係が終わった後、クーパーが電車に乗り込む際、ヴェレスは彼を拳銃で撃とうとした。俳優ジョニー・ワイズミュラーとの結婚期間、彼らの暴力的な夫婦喧嘩は定期的に報道された。クーパーの時と同様に2人の戦いと「情熱的な愛の行為」の度、擦り傷、痣、キスマークをワイズミューラーに負わせたと報じられている。 ヴェレスの怒りと嫉妬はプロフェッショナルとして、あるいはその他の点でライバルと見なした仲間の女優にしばしば向けられ、これはヴォードビル時代に始まって映画界でも習慣的に続いた。ヴェレスのイメージは奔放で心の内を率直に話す、女に特化した存在で「淑女」とは言い難い。同じメキシコの女優ドロレス・デル・リオが官能的でありながら上品で控え目で時に貴族の出であるかのように自己演出していたのと対照的である。ヴェレスはデル・リオをお高くとまったマリンチスモ(外国偏愛思想)だと批判した。1930年の『モロッコ』撮影中にゲイリー・クーパーと関係を持ったのではないかと疑ったマレーネ・ディートリヒのことも嫌っていた。ジェッタ・グーダル、リリアン・タッシュマン、リビー・ホルマンといった芸達者のユダヤ人に対抗心を持っていた事も確認されている。報復として映画『ハリウッド・パーティー』で嫌っていた女性たちの容赦ないものまねを演じたが、逆にメキシコ人の人気女優にものまねをされた時には自分勝手なルーペは激怒をしている。
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