アダルトチルドレンの癒し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 09:19 UTC 版)
「アダルトチルドレン」の記事における「アダルトチルドレンの癒し」の解説
医師の竹村道夫は、アダルトチルドレンの治療は、一般的な個人療法のほか教育的治療、認知行動療法、家族療法、集団療法、治療ネットワークや自助グループの利用などを組み合わせることが重要であり、虐待を受けている、または解離症状があるような中等度ないし重症例では、自助グループだけでなく専門家の治療を受ける方が安全であると述べている。 しかし、アダルトチルドレンは定義上病気ではないため、医療の対象となる何らかの疾患に当てはまらない場合は医療の枠組みで扱われず、非医療的なアプローチをとらざるを得ない。生きづらさを抱え、アダルトチルドレンや嗜癖という概念を知った人は、本を読んだり、ネットの情報や掲示板を見たり書き込んだり、こうした見方に詳しいという医師やカウンセラーを訪れたり、自助グループやイベントに参加したりする。このようにアダルトチルドレンや嗜癖のサブカルチャー世界が成立しているといえ、カウンセリング・セラピー文化の中でその存在感は非常に大きい。 アダルトチルドレン・嗜癖の運動にはグループ体験があり、大まかに次の3つである。 自助グループによる「言いっぱなし、聞きっぱなしミーティング」 クリニックやセラピストが主催するアダルトチルドレン・嗜癖のためのイベント、ワークショップ、ツアーなど 一部の私立の精神科開業医院で行われているデイケア、デイナイトケア 「言いっぱなし、聞きっぱなしミーティング」では、参加者が集まって、互いに批評したり質問したりせず、自分の問題を話す。これは、低い自尊心を持っているかもしれない参加者が安全に語るためのルールであり、基本的に直接の「対話」は起こらないが、間接的なゆるやかな交流はあり得る。ミーティングの最後では平安の祈りが唱えられることが多い。 神さま私にお与え下さい自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを変えられるものは変えていく勇気をそしてその二つのものを見分ける賢さを また、自助グループでは、アルコール依存症者の自助グループのアルコホーリクス・アノニマス(AA)の12ステップのプログラムを翻案したプログラムも用いられている。12ステップのプログラムは、アルコールに対する「無力」の認識と「神=ハイヤー・パワー」への「無力」の認識を核とし、生き方の間違いの修正を「神=ハイヤー・パワー」に委ね、他者と「神=ハイヤー・パワー」への謙虚さを求めるもので、アルコール依存症以外の嗜虐からの回復を目指す自助グループで応用されている。 アダルトチルドレンや嗜癖をテーマにしたイベントでは、「サバイバー(生き残った人)」と名乗る人たちが自らの生き残りのストーリーを語ったり、専門家や作家の講演や対談が行われたりする。小規模のグループ・ワークショップ、精神科医やセラピストが診断や助言を下すオープン・カウンセリング、瞑想や心理劇の体験のある海外ツアーなどもある。思考場療法などのニューエイジ系セラピーも、ワークショップではよく行われている。 斎藤学は自らの医院で行う「デイナイトケア・プログラム」で、アダルトチルドレンの癒しは次のようなプロセスを踏むべきであると説明している。 アダルトチルドレンは「親教」のマインドコントロールを受けている。斎藤は、「親教」とは子ども時代に取り込み内面化した「インナーマザー(内なる母)」であり、心の成長を阻むものとしている。親その人自身ではない。 癒されることは魂の問題であり、霊的成長をしなければならない。 家系図を作り、家族・親族の病を再検討する。 心理劇、催眠療法、交流分析などを利用して、トラウマの記憶に直面する。 最後にエンパワメント(力の賦活)をする。それは「過去において『犠牲者』であった自分の悲惨な物語を、それでも何とか生き延びてきた『英雄』の冒険物語に書き換えること」である。 斎藤は、安全な場所でカタルシスを得ることで霊的に成長し、人間関係の再構築を図ると述べている。ただし、斎藤のように「霊的」「霊性」という言葉をアダルトチルドレン言説で使う人は、日本ではあまり多くない。アダルトチルドレンの言説では、虐待された私も、虐待する私も、いったんありのまま受け入れて楽になるというストーリーがよく見られるが、こうした一般社会とは異なる価値観が見られるのは、セラピー的なグループが、安全な語りのために外界の規範や決まりを一時的に横に置いておく「モラルの真空地帯」として機能するためである。そのため、共同体や社会に戻る際に困難が生じる場合もある。
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