『結婚』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 07:28 UTC 版)
「マルティアヌス・ミンネウス・フェリクス・カペッラ」の記事における「『結婚』」の解説
『フィロロギアとメルクリウスの結婚について』は『七つの学科』(羅:De septem disciplinis)あるいは『サテュリコン』(羅:Satyricon)と呼ばれることもある百科事典的な作品で、散文と精緻な引喩を含む韻文とを混合した文体で書かれた趣向を凝らした教訓的なアレゴリーである。言い換えれば、マルクス・テレンティウス・ウァロのメニッポス風風刺と同じ文体で書かれたプロシメトルム(英語: Prosimetrum)である、とも言える。また、本書の文体は、言葉数が多く、隠喩や一般的でない表現に満ちている、といったものである。本書は、5世紀のキリスト教化されて以降のローマ帝国から12世紀ルネサンスまでの公的機関での教育の表準的な形式が決まるうえで重要な役割を果たした。ここでいう形式には中世に知識を表現する手段としてアレゴリー(特に擬人化)が好んで使われたことが含まれ、自由七科を通じてそれは涵養された。 本書はその梗概にマルティアヌス・カペッラの生前のより狭くなった古典文化を包含しており、彼の息子に捧げられた。初めの二巻に含まれる枠物語は乙女フィロロギア(学問の擬人化、字義的には「言葉への愛」の意)に対するメルクリウス(知性あるいは利益の追求)の求婚と結婚を取り扱っている。物語の中でメルクリウスは「知恵」、「占い」、「魂」に反論され、フィロロギアは神々、ムーサイ、七美徳、カリスの庇護のもと不死となる。本書のタイトルは知的な利益の追求(メルクリウス)と言葉を通じた学問(フィロロギア)との寓話的な結合を指している。 結婚式の引き出物の中にはフィロロギアに奉仕することになる七人のメイドがいた。彼女らは自由七科、つまり、文法学(子供の文法的な誤りを切り取るナイフを持った老女)、弁証術、修辞学(詞藻で飾られたドレスを着て論敵を攻撃する方法で武装した背の高い女性)、幾何学、算術、天文学、音楽を象徴している。これらの象徴は記憶術の象徴のやり方によく合致しているとフランセス・イェイツは指摘している。自由七科の各科を紹介するとともに、彼女は自分の考える学問の原理を持ち出し、それによって自由七科の総括を行う。他の二つの技芸、つまり建築学と医学は饗宴で登場するが、これらは地上の物事を扱う学問なので、天上の神的な存在の集会では沈黙を保つことになっていた。 本書の各巻はより古い著述家の作品の梗概もしくは抜粋となっている。主題の論じ方はウァロの『原理』、さらにはウァロの行った建築学と医学に対する言及にまで遡る伝統に則ったものになっている。マルティアヌス・カペッラの時代にはこの論じ方は知能が高い奴隷たちが技術的な物事に対して使うものであって、身分の高い物たちが使う論じ方ではなかった。古典時代のローマのカリキュラムは―主にマルティアヌス・カペッラの著書を通じて―中世にも存続しており、キリスト教によって多少は修正されたものの大きな変更がなされることはなかった。詩の部分は全体として正しく、古典的に構成されており、ウァロのものの焼き直しであった。 第八巻では修正天動説について述べられている。その説では地球は宇宙の中心で静止しておりその周囲を月、太陽、三つの惑星と恒星が地球の周囲を回り、水星と金星が太陽の周囲を回っている。この説はコペルニクスが『天球の回転について』で敬意をもって紹介している。
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