JR貨物EH500形電気機関車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/30 03:54 UTC 版)
現況・動向
2021年12月時点で、仙台総合鉄道部に901・1-44・51-64・74-81の67両、門司機関区に45-50・65-73の15両が所属している[6]。全82両が東芝製。
製造実績は2006年度が10両、2007年度[7] は9両、2008年度[8] は3両、2009年度[9] は4両、2010年度[10] は6両である。2010年度の6両は山陽・鹿児島線への追加投入用とされ、関門トンネル区間で従前から使用されてきたEF81形を順次置き換えた。
主送風機 (MMBM) ・発電ブレーキの抵抗送風機から発生する風切り音はかなり大きく、走行音だけで本形式は容易に判別できるほどで、以後製造されたEH200形などに低騒音形の送風機を採用する契機となった。
最近では各車にヘッドマークステー(取付け台)を設置していたが、2009年10月以降から撤去されている。
3電源対応の機関車であるが、日本海縦貫線は秋田以北のみの運用である。
2017年12月5日には、30号機がJR各社発足30周年記念ツアーにて、上野駅→東仙台信号場間を寝台特急「カシオペア」用のE26系客車を牽引する運用に就いた[11][12]。
- 仙台総合鉄道部
首都圏 - 北海道連絡の高速貨物列車を主体に運用されており、主な直通運用は隅田川駅・新鶴見信号場 - 青森信号場間と越谷貨物ターミナル駅 - 青森信号場間である。このほか、隅田川駅・新鶴見信号場駅 - 仙台貨物ターミナル駅間の首都圏 - 東北間の中距離直通運用がある。
一時期は運用区間の長さゆえ走行距離毎の点検頻度が増え、稼働率低下の主因となっていた。そのうえ故障が多発して稼動車が不足し、一度運用を外れたED75形を整備の上で復帰させて稼動車を充足した時期もあった。その後は走行距離を抑え最小限の車両数で運用するために、本形式の運用を東北本線黒磯駅以北の交流区間のみに限定させ、黒磯駅以南の直流区間は東海道・山陽本線系統のEF210形などの直流電気機関車が継走する運行形態が多かった。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は本形式の運用に著しい影響を及ぼした。仙台所属の試作機901号機が罹災[13] したほか、東北本線の不通に伴い被災地への物資迂回輸送対応として設定された石油輸送臨時列車(根岸駅 - 盛岡貨物ターミナル駅間、上越線・信越本線・羽越本線・奥羽本線経由)では、同年3月18日の運転開始時から一部区間で牽引に充当された。同年4月末からは、一部車両の側面に復興メッセージをデザインした大型ステッカーを貼付している[14]。
2013年3月16日ダイヤ改正ではJR東日本田端運転所所属のEF510形500番台を置き換える形で、常磐線貨物の間合い運用が設定された。
2014年頃からATS-Psの搭載が順次行われている。
2016年3月の改正で北海道新幹線新函館北斗駅延伸により青函トンネル区間が新幹線対応の交流25,000Vに昇圧されることや保安装置の関係から、この区間の運用はEH800形に全て変更され、EH500形運用の北限は青森まで縮小となった。それに伴い運用に余裕ができたので、秋田貨物駅や東海道線の相模貨物駅への乗り入れを開始した。
- 門司機関区
2007年から本形式が配置され、関門トンネル区間(幡生操車場 - 北九州貨物ターミナル駅間)での運用を開始した。2011年には北九州貨物ターミナル駅 - 福岡貨物ターミナル駅間の輸送力増強事業が完了したことに伴い、幡生操車場 - 福岡貨物ターミナル駅間へと運用範囲も拡大されている。本形式の本格運用、およびターミナル駅の改良や鹿児島本線内の待避線増強とあわせて2011年より東京貨物ターミナル駅 - 福岡貨物ターミナル駅間で従来不可能だった 1,300 t 貨物列車の直通運行が可能となった。なお、門司機関区所属の本形式は九州内および関門トンネル区間の運用にのみ充当されており、幡生操車場以東はEF210形などが継走する形態を取る。
配置にあたっては、本格運用前に2004年4月に25号機が、6月に27号機が運用試験に供されている。これは、同区間における 1,300 t 貨物列車の運行開始と、EF81形電気機関車(300・400番台)の置換えを念頭に実施されたものであった。本来、本形式は3電源対応(直流・交流 50 Hz / 60 Hz)として設計されており広汎な運用が可能であるが、東北 - 北海道連絡系統以外で本格的に運用されたのは門司機関区配置車が初めてである。
仙台総合鉄道部車と異なり、当初は保安装置はATS-SFのみ搭載していたが、2015年頃からATS-DFを追加搭載するようになった。
2019年4月8日には仙台総合鉄道部所属の65号機が門司機関区に転属し、2日後の10日には遠賀川 - 幡生操車場間にて試運転を行い運用入りしている。65号機が転属してきたことにより門司機関区のEH500は13機体制となった[15]。
注釈
- ^ 鉄道趣味誌では、2車体H型機とした理由に第二種鉄道事業者として線路保有会社に支払う線路使用料を軽減するため、という説を挙げている[4]。設計当時のスキームでは線路使用料は機関車の台数分支払うことになっていた[要出典]ため、D形機による重連運用の場合は2両分支払うところをH形機とすれば支払いは1両分で済むことになる。しかし、当事者から契約書、規定等の公開はなされていないため、本当にH形機関車1両がD形機関車2両よりも線路使用料を安く済ませられるかは不明である。なお、先述の「鉄道ジャーナル」2018年10月号によると、JR北海道・JR東日本・JR西日本・JR九州はH形機を1両の機関車として扱っているとされている。
出典
- ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2000年6月号「2000年春の新型車両ECO-POWER金太郎EH500形量産車が登場」pp.86 - 87。
- ^ a b c d e f g h 『鉄道ファン』2000年7月号、交友社、2000年、p.116
- ^ 『鉄道ファン』1998年6月号、交友社、1998年、p.73
- ^ 「鉄道ジャーナル」 2018年10月号(No.624) p.61
- ^ a b c 山本城二、櫻井公男、長瀬光範「近代的な物流を支える機関車及び貨物電車システム」 (PDF) 東芝レビューVOL.61(2006-09)
- ^ JR貨物時刻表 p.259,p.262
- ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「平成19年度の車両等の設備投資について」 (PDF)
- ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「平成20年度の車両等の設備投資について」 (PDF)
- ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「平成21年度の車両等の設備投資について」 (PDF)
- ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「平成22年度の機関車の新製について」 (PDF)
- ^ JR発足30周年記念「JR7社共同企画 スペシャルツアー」の発売についてJR貨物プレスリリース(2017年10月17日)
- ^ EH500-30がE26系をけん引して営業運転 - 鉄道ファン「鉄道ニュース」2017年12月5日、2017年12月23日閲覧
- ^ 編集部「NEWS PACK 2011年4月」『Rail Magazine』第28巻第9号 (No.334)、2011年7月、pp.150 - 151。
- ^ JR貨物Webサイト ニュースリリース「ラッピング機関車の運行を開始」 (PDF)
- ^ EH500-65が九州へ鉄道ファンrailf.jp(2019年4月9日掲載)
固有名詞の分類
国鉄・JRの車両形式 |
JR東海キヤ97系気動車 国鉄デハ33400形電車 JR貨物EH500形電気機関車 国鉄5650形蒸気機関車 国鉄ケ97形蒸気機関車 |
日本貨物鉄道の電気機関車 |
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