ASTRO-G
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/03 22:06 UTC 版)
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ASTROとは、Astronomyの略語であり、宇宙航空研究開発機構への改組前の組織であった宇宙科学研究所内の開発コードネームである。宇宙空間利用を行い、そこで天体観測などを行うプロジェクトの名称をASTROと呼び、太陽系内天体である惑星探査などのプロジェクトはPLANETと呼ぶ。なお、月探査計画は、内部審議によってSELENEと決まったため、SELENE計画と呼ぶ。最初のプロジェクトは、アルファベット順に決まり、軌道投入後に愛称が決定される。以前は、内部提案やプロジェクトマネージャーなどによって愛称が決定されてきたが、規模の大きなプロジェクトは公募によって愛称を定めるため、この衛星の愛称は決まっていない。
以前の「はるか」は、「はるか彼方の宇宙からの贈り物」の最初の文字を取って、「はるか」に決定された。地上で観測できる電波天文学観測限界(これは、ドーズ限界と呼ばれており、口径によって決まる)を超えた分解能を実現できる電波観測口径を実現できるためである。
目的
VSOP-2は、宇宙VLBI計画である「VSOP」の後継計画である。VSOPで用いられた宇宙電波望遠鏡である「はるか」は宇宙VLBIが可能であることを実証するための工学実験衛星であったが、実際に観測を行い大きな成果をあげた。そのためVSOPの後継プロジェクトは世界中の電波天文学者から早期の実施を望まれていた。
VLBIとは、複数の電波望遠鏡を協調して働かせることで、巨大な一つの望遠鏡で観測したのと同じ精度を得る技術である。宇宙VLBIとは、電波望遠鏡の一つを宇宙に置くことで、地球の直径の何倍もの大きさの望遠鏡を設置したのと同じ精度で天体観測を行う技術である。
VSOP-2では、ASTRO-G衛星を使って直径3万kmの望遠鏡を構築し、より高い周波数を使うことでVSOPの10倍の精度で観測を行うことを目標とした。この精度で銀河核やブラックホールなどを観測し、その構造や物理現象の解明に資することを目的とした。
主な観測目標は
- ジェットの構造と生成・加速領域
- 活動銀河核のブラックホールの降着円盤
- 星形成領域
- マイクロクェーサー
- 超新星
- 重力レンズ天体
など。
目標
当初は2012年夏頃に打ち上げ、軌道管制によって予定軌道へ投入、2012年冬頃にファーストライト、その後5年から7年程度の運用を予定していた。投入軌道は、近地点800km、遠地点30,000kmの「はるか」と同じ楕円軌道になる予定であった。理由としては、「はるか」用に開発したスペースVLBI用軌道計算シミュレーションソフト等をそのまま活用することや、スペースVLBI計画における連続性を重視しているためである。
衛星
観測機器
当機の主鏡は軌道上展開式の9m口径電波反射鏡である。観測波長がミリメートルオーダーであるため、反射鏡は金メッキされたメッシュで構成される。7個の小さなモジュールが組み合わさって大きな反射鏡を構成する構造になっており、これにはきく8号(ETS-VIII)の技術が使われる。ただし個々のモジュールはきく8号ではモリブデン線であったが、鏡面精度を上げるためこれをタングステン線に替え、表面を金メッキする。
性能
「はるか」では観測周波数は主に5GHz、最大22GHzであったが、当機では最大43GHzでの観測に対応する。これにより38マイクロ秒角の空間分解能を実現する。また「はるか」では不可能だった左右両偏波観測に対応する。
その他
「はるか」ではM-Vロケットによる打ち上げだったために比較的小型の衛星であったが、ASTRO-GはH-IIシリーズロケットで打ち上げるために衛星搭載機器を増すことができた。その分電力等で余裕を持った設計となり、「はるか」では地球の影による観測停止等で観測の難しかった期間がなくなるため、24時間連続運用が可能になる見込みであった。
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- ^ ASTRO-G事前評価結果(文部科学省宇宙開発委員会)
- ^ “探査、JSPEC、宇宙理学委員会、日本惑星科学会、そして探査、探査、探査!:松浦晋也のL/D” (2010年6月18日). 2010年6月26日閲覧。
- ^ a b “電波天文衛星(ASTRO-G)の状況について”. JAXA (2011年8月24日). 2011年8月24日閲覧。
- ^ “vsop-2プロジェクトサイト”. JAXA (2011年12月19日). 2012年4月4日閲覧。
- 1 ASTRO-Gとは
- 2 ASTRO-Gの概要
- 3 計画の推移
- 4 関連項目
固有名詞の分類
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