小切手 各地域における流通

小切手

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/04 00:38 UTC 版)

各地域における流通

欧米

欧米では広く支払手段として用いられている。アメリカイギリスイタリアなどのヨーロッパ諸国では、消費者の小売店などにおける支払手段としても広く活用されている。多額の現金を持ち歩くことは治安上危険であり、小切手のほうが安全という理由がある[14]。また、アメリカでは使用済の小切手は振出人の手元に戻るため決済後には事実上領収書として機能している[14]

小切手を受け取った場合は、裏面のendorse hereとあるところにサインをする。それを銀行もしくは銀行のATMにもっていくと換金することができる。

アメリカでは普通口座を開設すれば個人小切手は簡単に利用できる[14]。個人小切手には氏名、住所、電話番号が印刷されており、これを綴ったもの(小切手帳)はチェックブックと呼ばれている[14]。小切手に支払先の氏名と金額を書き込み振出人が署名すれば小切手として成立する[14]。買い物や保険金の支払いに利用される。公共料金の支払いも日本では口座自動振替が普及しているが、欧米では銀行の自らの口座から勝手に引き落とされることに抵抗があるといわれ、自宅に郵送される請求書の金額を確認したうえで小切手を郵送して支払うことが多い[14]。その他、学校や習い事での支払いや教会への献金などにも小切手が用いられる[14]賃金年金の支払いは銀行直接振込みが主流になったが紙の小切手(paycheck)も健在である。

デビットカードクレジットカード決済の普及により消費者による小切手の利用が急速に減っている国が多いが、それでも個人が小切手を扱う頻度は高い。

日本

日本の小切手は、小切手法に基づき、支払人として表示された銀行等[15]に対して、所持人(または名宛人。以下同じ)に対し作成者(振出人)の口座から券面に表示された金額の一覧支払いを委託する有価証券である。

また、供託金返還など国庫制度から現金で支払いを希望する場合は日本銀行が支払者となる「政府小切手」が、地方税などの還付には地方行政機関の指定金融機関が支払者となる「還付金小切手」があり、それぞれの行政機関を振出人として交付される。

郵便貯金簡易生命保険では2000年頃より貯金や保険返戻金の多額の現金払い出し時に「貯金小切手」を、2010年頃より預金取扱金融機関(特に信用金庫)も「銀行渡り自己宛小切手(預金小切手)」の振出しを積極的に奨めるようになった。元々は現金盗難のリスクを軽減するためであったが、親族の知人に成りすました第三者に現金を手渡しする手渡し詐欺(特殊詐欺)において現金の代わりに自己宛小切手を渡した場合、換金時の本人確認や入金口座などで被疑者の追跡が可能となることから、犯行の抑止や早期解決などを狙いにしたものである。金融機関によっては、窓口の担当者が現金払い出し時に事情を聴取し、特殊詐欺が疑われる場合は「振り込め詐欺等の防止対策」として無償で自己宛小切手を振り出し、警察への相談を促すように案内を行っている[11][12][13]

なお、日本では小切手・手形を紛失・盗難に遭った場合、手続きを踏んで簡易裁判所除権決定を受けることにより、紛失した小切手・手形の権利を失効させ、支払の権利を回復させることができる場合がある。

韓国

韓国では、最高額券種である5万ウォン紙幣の価値が実際の取引規模に比して小額(日本円換算で4000円程度)であることから、10万ウォンをはじめとする高額を表示した預金小切手(手票)が紙幣に準じて広く流通し、自動取引装置 (ATM) でも預け入れ、振り出しなどが取り扱われている。


  1. ^ a b c d e 豊島 正治『書き込み式で経理実務が身につく本 第5版』TAC出版、2007年、80頁
  2. ^ a b c d e f g h 手形・小切手の基礎知識1 全国銀行協会(2022年7月4日閲覧)
  3. ^ 預金(貯金)小切手、送金小切手、一覧払手形を含む
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 手形・小切手の利用方法 全国銀行協会(2022年7月4日閲覧)
  5. ^ a b c d e 高濱 和博「小切手の問題とペイメント・カードへの移行 フランスにおける事例」『経営研究』第54巻第3号、大阪市立大学経営学会、2003年11月、51-71頁。 
  6. ^ 但し、振出人と被振出人の間に「先日付まで取り立てない」旨の約束があれば信義則違反として振出人は被振出人に対して責任を追及できる可能性はある。
  7. ^ また、当該小切手が裏書譲渡されている場合には被譲渡人にその責任は問えない。
  8. ^ いわゆる「資金繰り」である
  9. ^ 自己宛小切手とは”. マネーフォワード クラウド会計. マネーフォワード (2020年6月9日). 2021年5月7日閲覧。
  10. ^ 【手形・小切手の基礎知識①】お金に代わる働きをする手形・小切手”. 全国銀行協会. 2021年5月7日閲覧。
  11. ^ a b 自己宛小切手のご利用のお勧めについて”. 中日信用金庫. 2021年5月7日閲覧。
  12. ^ a b 自己宛小切手を活用した金融犯罪防止対策(通称:預手プラン)について”. 香川銀行. 2021年5月7日閲覧。
  13. ^ a b 金融機関での被害防止対策”. 埼玉県警察本部 (2020年5月13日). 2021年5月7日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g 木村恵子『アメリカの心と暮らし』冨山房インターナショナル、2008年、187頁。 
  15. ^ 「銀行等」とは、銀行のほか、「小切手法ノ適用ニ付銀行ト同視スベキ人又ハ施設ヲ定ムルノ件」(昭和8年12月28日勅令第329号)に掲げられた金融機関を指す。詳しくは「小切手法」の項を参照のこと。






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