システィーナ礼拝堂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/09 13:06 UTC 版)
内部装飾
システィーナ礼拝堂の内部壁面は三層に大別できる。下層は金銀の布が描かれたフレスコ画である。中層には互いを補完しあう「モーセの生涯の物語」と「キリストの生涯の物語」のフレスコ画がある。これらのフレスコ画は1480年にローマ教皇シクストゥス4世が依頼したもので、ギルランダイオ、ボッティチェッリ、ペルジーノ、ロッセッリらが、それぞれが率いていた工房の弟子たちとともに制作に当たった。おそらく当時すでにローマにあって、システィーナ礼拝堂内部装飾の責任者になっていたと考えられているペルジーノのもとに集められた当時のフィレンツェを代表する画家たちは、1480年10月27日にフィレンツェを発ってローマへと向かい、1481年の初春から壁画制作を開始している。フィレンツェの画家たちがシスティーナ礼拝堂の内部装飾に任命された背景には、当時シクストゥス4世と仲違いしていた、フィレンツェの支配者ロレンツォ・デ・メディチとの関係修復という意味合いもあった。上層はさらに上下に二分割できる。下部には歴代ローマ教皇の肖像が等身大で描かれている。上部のルネットにはミケランジェロの天井画の一部として、キリストの祖先とされる歴史上の人物たちが描かれている。
ミケランジェロがローマ教皇ユリウス2世の命でシスティーナ礼拝堂天井画を描いたのは1508年から1512年にかけてである。この天井画には『創世記』のエピソードから『天地創造』、『アダムとイヴ』、『原罪と楽園追放』など9点のフレスコ画が描かれている。円天井を支える三角形のペンデンティヴには、神が救世主キリストを遣わすことを預言した『旧約聖書』の7人の預言者と古代の巫女(シビュラ)が描かれている。
1515年に、ローマ教皇レオ10世の命で、ラファエロが礼拝堂壁面最下層を飾る10点のタペストリをデザインした[14]。当時のラファエロは25歳にしてフィレンツェではすでに多くの富裕なパトロンを持つ有力な芸術家だった。そしてラファエロは野心ある若者であり、ローマ教皇をパトロンに持つという栄誉を希求していた[15]。ローマ教皇に気に入られ、活気溢れるローマに魅せられたラファエロは、その後の生涯をローマで送ることになる。
ラファエロはこのシスティーナ礼拝堂のタペストリ制作依頼を、自身の作品とミケランジェロの作品とを比較する絶好の機会だと見なしていた。またラファエロにタペストリ制作を命じたレオ10世にも、前任のローマ教皇ユリウス2世がミケランジェロに描かせた天井画への対抗心があったと考えられている[16]。ミケランジェロがタペストリのモチーフとしたのは『使徒行伝』で、1515年半ばからデザインの制作が開始された。織り上げるためにブリュッセルに送られたタペストリのデザインは非常に大規模なもので、ピーテル・ファン・アールストの工房で4年間をかけて完成している[17]。
- ^ a b c d Ekelund, Hébert & Tollison 2006, p. 313
- ^ “Vatican City”. Whc.unesco.org. 2011年8月9日閲覧。
- ^ Monfasani, John (1983), “A Description of the Sistine Chapel under Pope Sixtus IV”, Artibus et Historiae (IRSA s.c.) 4 (7): 9–18, doi:10.2307/1483178, ISSN 0391-9064, JSTOR 1483178 .
- ^ a b Pietrangeli 1986, p. 28
- ^ Pietrangeli 1986, p. 24
- ^ a b c d John Shearman, "The Chapel of Sixtus IV". In Pietrangeli 1986
- ^ Stevens, Abel & Floy, James. "Allegri's Miserere". The National Magazine, Carlton & Phillip, 1854. 531.
- ^ Saunders, Fr. William P. "The Path to the Papacy". Arlington Catholic Herald, 17 March 2005. Retrieved on 2 June 2008.
- ^ Chambers, D. S. (1978), “Papal Conclaves and Prophetic Mystery in the Sistine Chapel”, Journal of the Warburg and Courtauld Institutes (The Warburg Institute) 41: 322–326, doi:10.2307/750878, JSTOR 750878 .
- ^ Domus Sanctae Marthae & The New Urns Used in the Election of the Pope from EWTN
- ^ Campbell, Ian (1981), “The New St Peter's: Basilica or Temple?”, Oxford Art Journal 4 (1): 3–8, doi:10.1093/oxartj/4.1.3, ISSN 0142-6540 検索された 2014-06-06
- ^ Hersey 1993, p. 180
- ^ Cheney, Iris. Review of "Raphael's Cartoons in the Collection of Her Majesty The Queen and the Tapestries for the Sistine Chapel" by John Shearman". The Art Bulletin, Volume 56, No. 4, December 1974. 607–609.
- ^ Talvacchia 2007, p. 150
- ^ Talvacchia 2007, p. 80
- ^ Hall, Marcia B. Rome: Artistic Centers of the Italian Renaissance. London: Cambridge University Press 18 April 2005. 138.
- ^ Talvacchia 2007, p. 152
- ^ Michelangelo – The Sistine Chapel Ceiling, "Seven Common Questions About the Frescoes"
- ^ Graham-Dixon 2008, p. 2
- ^ Graham-Dixon 2008, p. 1
- ^ Giacometti, Massimo (1986). The Sistine Chapel.
- ^ Graham-Dixon 2008, p. xii
- ^ 池上英洋 (2013年7月30日). 神のごときミケランジェロ. 新潮社
- ^ Paoletti and Radke pp. 402 - 403
- ^ See en:Poor Man's Bible
- ^ 池上英洋『神のごときミケランジェロ』新潮社、2013年、69頁。ISBN 978-4-10-602247-0。
- ^ Stollhans, Cynthia (1988), “Michelangelo's Nude Saint Catherine of Alexandria”, Woman's Art Journal (Woman's Art, Inc.) 19 (1): 26–30, doi:10.2307/1358651, ISSN 02707993, JSTOR 1358651 .
- ^ Vasari 1987, p. 379
- ^ Reported by Lodovico Domenichi in Historia di detti et fatti notabili di diversi Principi & huommi privati moderni (1556), p. 668
- ^ Simons, Marlise (19 June 1991), “Vatican Restorers Are Ready for 'Last Judgment”, New York Times 2009年3月7日閲覧。
- ^ a b Carlo Pietrangeli, Foreword to The Sistine Chapel, ed. Massimo Giacometti. (1986) Harmony Books, ISBN 0-517-56274-X
- ^ “Homily preached by the Holy Father John Paul II at the mass of to celebrate the unveiling of the restorations of Michelangelo's frescoes in the Sistine Chapel”. Vatican Publishing House (1994年4月8日). 2007年9月28日閲覧。
- ^ a b Pietrangeli 1994
- ^ Beck (1995)
- ^ バチカン、システィーナ礼拝堂の入場制限を検討
- システィーナ礼拝堂のページへのリンク