フレスコ壁画の環境保全
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/19 14:46 UTC 版)
「システィーナ礼拝堂壁画修復」の記事における「フレスコ壁画の環境保全」の解説
修復作業でフレスコ壁画の表面を覆っていたロウ、ワニス、動物性膠が除去された結果、修復チームが予想していなかった問題が起こった。システィーナ礼拝堂フレスコ壁画の状態を悪化させる大きな要因に、屋外から流入する自動車の排気ガスと、礼拝堂を訪れる多くの観光客たちによる室温上昇、さらには観光客が礼拝堂に持ち込む湿気、ほこり、微生物がある。修復後に綺麗になった漆喰層は、修復以前の黒ずんだロウやワニスに覆われていたときよりも、外的影響に対してはるかに脆弱だったのである。 過去にはシスティーナ礼拝堂の換気は壁面上部の窓だけがその役割を果たしていた。2013年現在では排気ガスや汚染物質の流入を防ぐために窓は常に閉じられ、かわりに空調設備が設置されている。この空調設備はユナイテッド・テクノロジーズ社とローマ教皇庁の技術担当部局が共同で開発したもので、設備の導入はユナイテッド・テクノロジーズ社が担当した。この空調設備はシスティーナ礼拝堂特有といえる問題の解決を前提とした設計がなされている。とくに一日で最初に入場客を迎える朝と、午後に最後の入場客が退出するときの急激な温度と湿度の変化へ対応するように設計されている。季節ごとの気温と湿度の変化にも対応しており、徐々に空気の状態を調整する機能を備えている。天井近辺の温度は比較的暖かで、建物下部の気温は涼しく空気の循環速度も高められている。これは微細なほこりなどを上方へ巻き上げることなく床面に留める効果を狙ってのものである。また、微生物や化学汚染物質はフィルタで除去されている。 システィーナ礼拝堂に導入されているエア・コンディショナの仕様は以下となっている。 エアフィルタ:0.1 マイクロメートルのほこりの除去 室温:夏季 20 ℃、冬季 25 ℃ 相対湿度:天井近辺で 55% ±5% センサ:92箇所、そのうちおよそ半分はバックアップとして使用 総配線長:26 km
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