VHSと比較した特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 03:46 UTC 版)
「ベータマックス」の記事における「VHSと比較した特徴」の解説
VHS規格と比較した特徴として、下記のような特徴を持っている。 カセットが小さい。ソニーの社員手帳(文庫本)サイズ。 テープとヘッドの相対速度が大きく、画質面で有利(VHSの5.8m/sに対し、βI:6.973 m/s、βII:6.993 m/s)。 初期の機種でも特殊再生が行えた。 テープがデッキに挿入されている間は常にメカにローディングされている「フルローディング」が基本である。このため早送り・巻き戻し動作と再生動作の切替が俊敏であり、操作性に優れていた。また、テープの情報が常にヘッドから読み取れるため、テープカウンターを秒単位で時間表示する「リニアタイムカウンター」も搭載できた。これに対してVHSは、再生時だけテープをローディングする「パートタイムローディング」が基本であった。 常用の標準画質録画(βIIモード)において、L-830テープで200分録画できた。VHSの最長テープは長年T-160(標準モードで160分)だったため、β最末期に至るまで残された数少ないアドバンテージのひとつだった。ソニーのベータ撤退から更に下り、VHS自身も終焉の見え始めた頃になってT-210が発売され、ようやく覆された。 長時間録画モード(βIII)の録画時間ではVHS(3倍モード)の方に分があったが、画質ではβIIIの方が遥かに優れていた。VHSの3倍モードの画質は1987年のS-VHS導入を皮切りとして90年代に様々な技術的改良が行われて実用に耐えるレベルとなっていったが、その頃にはすでにベータは市場から事実上撤退していた。 テープのリーダー(先端・終端)部分はアルミテープになっており、センシングコイルにより先端と終端を検出、自動停止するためセンサーの耐久性に優れ、巻き戻しや早送り時にテープ自体を傷めない構造となっている。なおVHSビデオ規格はリーダー部分が透明になっており、光検出により自動停止する。この光検出手法はテープの作成が安価になる反面、フォトトランジスタの耐久性の問題、カセットハーフの構造自体を変えにくい(ハーフの色や確認窓を変えられない)ためデザイン面で制約が出るなどの欠点があった。ベータテープには当初からグレーや白、藍色などのハーフが存在したが、VHSテープが1990年頃まで黒しか発売されなかったのはこのためである(しかし、後にカラーカセットでも不透明ならば光検出に問題ないことが判明している)。 性能的には優れたものだったが、VHSより部品点数が多く調整箇所も高い精度を要求される構造により、家電メーカーにとって家庭用ビデオの普及期に廉価機の投入が難しかったという欠点も持ち合わせていた。東芝や三洋電機からは思い切って機能を省いた廉価機も初期から発売されていた。とは言え規格主幹のソニーが性能重視の姿勢で、廉価機の開発が出遅れたこともあってシェアを伸ばせなかった。それゆえに「性能が優れているものが普及するとは限らない例」として、初期のレコードの例とともによく引き合いに出される。 しかし、ベータ方式を基に策定された放送用規格「ベータカム」は、20年以上に渡り世界の放送業界のデファクトスタンダードとなり、デジタルベータカムやHDCAMなど、再生互換性を持つ製品バリエーションを増やしながら2016年3月末まで販売されていた。また、ベータ方式の録画用ビデオテープもソニーマーケティングが運営するソニーストアで注文可能だったが、この録画用ビデオテープも2016年3月をもって出荷終了することがアナウンスされた。 2009年、「VHS方式VTRとの技術競争を通じて、世界の記録技術の進歩に大きく貢献した機種として重要である。」として、家庭用ベータ方式VTR1号機「SL-6300」が国立科学博物館の定めた重要科学技術史資料(未来技術遺産)として登録された。
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