VHSの需要低下と終焉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 04:53 UTC 版)
長らくテレビ録画媒体の代表であったVHSであったが、21世紀に入るとDVDやハードディスクレコーダ、パソコンの普及、高精細テレビ放送やBlu-ray Discの登場、多くの国でのデジタルテレビ放送の開始といった「デジタル時代」「ハイビジョン時代」の中で、それに対応できないVHSカセットやVHS単体機は次第に売れなくなっていった。デジタルレコーダーとの複合機も、過去のライブラリーをデジタル化することに重点が移り、テレビ番組の録画ができないタイプのものが増えた。 アナログ磁気テープはデジタルメディアに対して音・画質共に悪いうえに劣化が著しく、頭出しや巻き戻しも面倒で、再生装置も巨大になる。VHSの場合水平解像度が240本とアナログテレビ放送の330本より低い。画質面は、1987年にS-VHS(高画質版VHS)、1999年にはD-VHS(デジタル録画対応VHS)が発売されるもデッキが高価であった。D-VHSはこれまで蓄えてきたVHSの資産を無駄にせず今後のデジタルに対応した製品だったが、同年にパイオニア(ホームAV機器事業部。現・オンキヨーホームエンターテイメント)がDVDレコーダーを発表したこともありそれほど普及しなかった。また、DVDの普及に一役買ったのが、かつてのライバル・ソニー(SCE(現・SIE))の家庭用ビデオゲーム機であるPlayStation 2であった。 こうした状況も重なり、日本ビクターは2007年(平成19年)5月30日、経営不振による事業再建策として、VHSビデオ事業からの撤退・清算を発表した。2008年(平成20年)1月15日にS-VHS単体機を全機種生産終了したと発表し、同年10月27日にはVHS方式単体機の生産を終了した。 ビクターの撤退により、日本国内メーカーのVHSビデオ単体機の製造は船井電機(以下、フナイ)のみとなったが、やがてフナイも完全撤退した。以降はDVD、HDDなどの複合機として展開されていたが、大幅に縮小された。 各社はテレビの完全デジタル化を睨み、販売の主力をHDD併用のブルーレイレコーダーに移しており、商品ラインナップは縮小の一途をたどった。これにあわせ録画用ビデオテープから撤退する事業者も相次いでおり、現在はほぼ市場から消滅している。S-VHS用テープは既に販売終了となっており、2014年12月末で日立マクセル(現・マクセル)も生産終了。2015年2月にはTDK(←イメーション〈現・グラスブリッジ・エンタープライゼス〉のTDK Life on Recordブランド)も生産終了となり、2015年6月には録画用テープの在庫切れが目立ってきた。 2010年代に入っても、VHS一体型のDVDレコーダーないしBDレコーダーが製造されていたが、各社とも2011年末までに生産完了となった。2011年末までVHS一体型のDVDレコーダーを発売していたのは、フナイと当時の子会社DXアンテナ以外ではパナソニックのDIGA「DMR-XP25V」(パナソニック自社生産)と東芝「D-VDR9K」(フナイのOEM)であった。2012年2月10日、パナソニックが「VHSデッキの日本国内向け生産を2011年限りで完全終了した」旨を公式発表した。 その後もビデオ判定など一部で使われていたが、2012年5月19日には横浜スタジアムで開催された横浜DeNAベイスターズ対千葉ロッテマリーンズでは、アレックス・ラミレスの本塁打性の飛球の判定に家庭用VHSデッキが使用され、映像では本塁打であることが分からなかったためにファウルと判定されたケースがあり物議を醸した。 2016年4月時点で新品として流通していたVHSデッキ(録画再生機・再生専用機)は以下の通りで、全機種がフナイのOEM。一定のニーズがあり価格競争も起こらないので販売を続ければ利益も出る状況にはあったが、同年7月末には部品の調達が困難となったために生産継続を断念せざるを得なくなったことで全機種の生産終了を余儀なくされ、これをもってVHSの命脈は遂に完全に絶たれた。 DXR170V(VHS一体型DVDレコーダー) 2014年7月1日にDXアンテナ(DX BROADTEC)から発売された。 2012年5月に「お客様のご要望にお応えして新発売!」と発売された「DXR160V」の後継。 RVP-100(再生専用VHSプレーヤー) 2013年12月中旬にドウシシャ(SANSUIブランド)から発売された。 4ヘッドHi-Fi音声対応でデジタルトラッキングを搭載した「再生専用」のVHS機であり、家庭に眠るVHS資産のDVD化やBD化、データ化に寄与する目的で商品化された。
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